キミのおこした奇跡side S


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世紀末の魔術師


ВОЛШЕБНИК КОНЦА ВЕКА


城内に入り、騎士の間、貴婦人の間、皇帝の間と次々に案内される。
外見から想像できたが、中も随分と手のかかっている城だ。


「なあ、ちょっとトイレに行きたいんだが」
「トイレなら、廊下を出て右の奥です」


皇帝の間に来たところで、乾さんがトイレに向かった。
その後も沢部さんの案内は続く。
その時


「うぁぁぁぁぁぁぁ!!」


廊下を行った先で悲鳴が聞こえた。
白鳥刑事を先頭に貴婦人の間に向かう。
そこには金庫泥棒に入ったものの金庫の中の手錠に捕まり逃げたくても逃げられない状態で天井から剣が降ってきて慌てふためいている乾さんがいた。
あの荷物見た時から思ってたけど…ったく、しょうがねぇオッサンだな…。


「80年前、喜市様が作られた防犯装置です。この城にはまだ他にも幾つか仕掛けがありますから、ご注意下さい」
「…つまり、抜け駆けは禁止って事ですよ、乾さん。道具は懐中電灯だけあれば、充分でしょう」


そう言いながら、白鳥刑事は乾さんに懐中電灯を投げ渡した。
…本当にからくりが好きなんだなぁ、喜市さんは…。
…となると、


「ねえ、このお城に地下室は?」
「ありませんが…」
「じゃあ、一階にひいおじいさんの部屋は?」
「それでしたら、執務室がございます」


その言葉のもと、貴婦人の間を出て、1階の執務室へと向かう。


「どうぞ…。ここが、喜市様の執務室です。こちらには、喜市様のお写真と、当時の日常的な情景を撮影された物が展示してあります」


部屋中に飾られた写真。
…ん?


「ねえ、夏美さん。ひいおばあさんの写真は?」
「それがね、一枚も無いの。だから私、曾祖母の顔は知らないんだ…」


…妙だな。
喜市さんの写真は沢山残っているのに…。


「おい!この男、ラスプーチンじゃねーか?」
「むっ…、ええ、彼に間違いありません。ゲー・ラスプーチンとサインもありますからね」


…ゲー・ラスプーチン…?
あれ…?
今何かが引っかかって…。


「お父さん、ラスプーチンって?」
「い、いや、俺も世紀の大悪党だったと言う事位しか…」
「奴はな、怪僧ラスプーチンと言われ、皇帝一家に取り入って、ロマノフ王朝滅亡の原因を作った男だ…。一時権勢を欲しいままにしたが、最後は皇帝の親戚筋に当たるユスポフ公爵に殺害されたんだ。川から発見された遺体は、頭蓋骨が陥没し、片方の目が、潰れていたそうだぜ?」


片方の目が?
今回の犯人と言い…何か関係があるのか?


「こんな広い家の中から、どうやって探しゃ良いんだ?」


エッグ探しに話を戻した白鳥刑事に、オッチャンがぼやく。
その時、オッチャンのタバコの煙が揺らめいた。


「おじさん!ちょっと貸して!!」
「こ、こらっ!」
「下から風が来ている!この下に秘密の地下室があるんだよ!!」
「何っ!?」
「…とすると…。からくり好きの喜市さんの事だから…。きっと何処かにスイッチがある筈……」


さらに床を注視すると、…見つけた!


「なんだそりゃ!?」
「それは! ロシア語のアルファベット!!」
「それで、秘密の地下室へのドアが開くのか!?」
「パスワードがあると思うよ?セルゲンさん!ロシア語で押してみて?」
「あ、ああ…」
「思い出!ボスポミナーニエに違いない!!」
「…ВОСПОМИНАНИЕ」
「…あ、あれ?」


思い出じゃない…。
とすると…、


「ばるしぇ、にく、かったべか…」
「え?」
「夏美さんの言ってたあの言葉、ロシア語かもしれないよ?」
「ばるしぇ、にく、かったべか…?」
「もしかしたら、切るところが違うのかも」
「ばるーしぇにく、かったーべか…うーん…」
「それって…ヴァルシェーブニック・カンツァー・ベカじゃないかしら?」
「そうか!ヴァルシェーブニック・カンツァー・ベカだ!」
「それってどういう意味!?」
「英語だとThe Last Wizard Of The Century。えぇーっと、日本語では、」
「世紀末の魔術師」


…何!?


「キッドの予告状よ!」
「こりゃとんだ偶然だな!」


偶然?
…ほんとにそうなのか?


「とにかく押してみましょう。ВОЛШЕБНИК КОНЦА ВЕКА…」
「…な、なんだこの音!?」


建物自体に大掛かりな仕掛けが施されていて、パスワードを入力すると扉が開く仕組みになっていた。
…恐らく、2つ目のエッグがある場所へと導く扉が!


「でかしたぞ、ボウズ!」


さぁ、拝ませてもらおうじゃねけか、2つ目のエッグを…!


「…私が先頭で行きます」


そういう白鳥刑事を先頭に、この通路の先に眠っているエッグへと足を踏み出した。

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bkm

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