■横須賀到着。そして城内へ
翌24日。
無事東京湾に到着。
所用があるとかで園子と鈴木会長、そして西野さんとここで別れ、車2台で横須賀の城に向かう。
博士から防弾レンズも出きたと連絡ももらったし、とりあえずは順調に来ている。
「毛利さん、寒川さんの指輪、本当にマリアのものだったんでしょうか?」
車内でそう、セルゲイさんが尋ねてきた。
「一応、目暮警部が預かって、鑑定に出すって言ってましたが…」
「…マリアと言うのは、4人姉妹の中でも、一番優しい子で、大きな灰色の瞳をしていたそうです」
…灰色の瞳?
夏美さんや青蘭さんと同じだ…。
「ロシア革命の後で、皇帝一家が全員銃殺されたのは、ご存知かと思いますが…。マリアと皇太子のご遺体だけは、確認されてないんだそうです」
「そうなんですか…」
「ふーん…」
じゃあ極論だが、逃げ延びた可能性、ってのもあるわけか…。
その後は、特に誰かが喋るわけでもなく。
香坂家の城へ向けて車はひた走った。
…しばらくして俺たちの前に現れたその姿は、ここが日本である事を忘れさせるに十分な景色だった。
「わぁ!ホントに綺麗なお城!」
「ドイツのノイシュヴァン・シュタイン城に似てますね。シンデレラ城のモデルになったと言われてる」
…あれ?
そう言えば、どうしてドイツ風の城なんだ?
夏美さんのひいおばあさんは、ロシア人なのに…。
俺がそう疑問に感じたその時、1台の車とその後ろからバイクが近づいてきた。
「ゲッ!?」
な、なんであおいと元太たちが一緒なんだ!?
「博士!あおいも、どうしてここへ?」
「いや、コナンくんから電話をもらってな、ドライブがてら来てみたんじゃよ…」
「私はこのコたちに誘われて」
「…もう用は済んだの?」
「うん!大丈夫!」
蘭に笑顔を向けるあおい。
その俺のところに小声で博士が話しかけてきた。
「ほれ、君に言われた通り、バージョン・アップしといたぞ!」
「サンキュ!…でも、何でアイツら連れて来たんだよ?しかもあおいまで!」
「それが、知らん内に車に潜り込んでおってなぁ…。あおいくんに至っては、尾行されていることすら気づかなかったんじゃ…」
…ったく。
灰原がいるのに、頼むぜほんと。
「まるでおとぎの国みたい!!」
「この中に宝が隠されているんですね!?」
「うな重何杯食えっかな?」
うな重ってオメー…。
他に考えることねぇのかよ…。
チラッとあおいに目をやる。
別に何か落ち込んでるような感じはしない。
−あおい…、どこかに行っちゃうのかな…−
気にしすぎ、か…。
「いいか、お前達!中には絶対入っちゃいかんぞ!!」
「「「は〜〜い!」」」
…おいおい、やけに素直じゃねーか。
「そう言えば、乾さん…、遅いですね…」
「ええ。何か寄る所があると言ってましたけど…」
セルゲイさんと白鳥警部補が話している時、ちょうど乾さんが到着した。
「やー、悪い悪い!準備に手間取ってな」
大きなリュックを肩にかけ、乾さんは車から降りた。
「何です?その荷物。探検にでも行くつもりですか?」
「…なぁに、備えあれば憂いなしって奴ですよ!」
備えあれば、ねぇ…。
「用心する事ね。スコーピオンは意外と身近に居るかもよ?」
「ああ、分かってる」
灰原の言う通り、スコーピオンはあの船の中にいた人物。
そして間違いなく、ここにまた現れるだろう。
「え?あおいはいいの?」
「う、うん!この子達と来たし、この子達と一緒にいるよ」
「そう…」
蘭があおいも一緒にどうかと誘ったが、断ったようだ。
それが懸命だ。
プロの殺し屋がどこに潜んでんのかわからねぇのに、運動神経切れてるあおいが一緒に城に入ろうものならエッグやスコーピオンどころじゃなくなるだろうし。
コイツがバカなことしねぇか気になって事件捜査どころじゃなくなるから、元太たちといてくれると本当に助かる。
ただ、
−はーい!−
あのやけに素直な返事が気になる…。
なんもなきゃいーけど。
まぁ…、灰原も博士もいるから大丈夫か。
手を振るあおいたちと別れ、城内に足を踏み入れた。
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