キミのおこした奇跡side S


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世紀末の魔術師


親戚


「会長、エッグをお持ちしました」
「ああ、ご苦労さん。テーブルに置いてくれたまえ」
「はい」
「…さぁ、みなさんどうぞ」


西野さんが持ってきた箱にキッド(他にもいたが)が狙うインペリアル・イースター・エッグが収まっているらしい。
51個目の金のタマゴ。
ありがたく拝ませてもらおうじゃねぇか。


「見た目は大したもんじゃないよ?子供の頃私が知らないでおもちゃにしてたくらいだから」


おもちゃって、オメー…。
さすが鈴木財閥のお嬢さま。
おもちゃの額が桁外れだ。
そうこしているうちに鈴木会長が箱の蓋を開け、エッグが顔の覗かせた。


「…これが、インペリアル・イースター・エッグ?」


感嘆の声とともに出てきた緑のエッグ。
外面の装飾は資料で見たものと同じような草食を施されていた。
確か資料によると、


「これ開くんでしょ?」
「そうなんだよ!よくわかったね」


その多くが「サプライズ」と呼ばれる独創的な仕掛けが施されており、その「サプライズ」の完成度で値段が決まるって話だった。


「中はニコライ皇帝一家の模型でね。全部金で出来ているんだ」


純金の模型…。
こりゃ確かに8億しても不思議じゃねぇな…。


「このエッグには面白い仕掛けがあってね」


そう言いながら鈴木会長が持っていたネジをエッグに差し込み回すと、ニコライ皇帝一家がせり上がってきた。
へぇ…!


「ファベルジェの古い資料の中に、このエッグの中身のデザイン画が残っていてね。これによって本物のエッグ、と、認めれたんだよ」
「…メモリーズエッグ、というのは、ロシア語を英語にした題名なんですか?」
「ああ、そうだよ。ロシア語ではボスポミナーニエ。日本語に直すと思い出だそうだ」
「ねぇ。なんで本を捲ってるのが思い出なの?」
「バーカ!皇帝が子供達を集めて本を呼んで聞かせるのが、思い出なんだよ!」


…そんな理由でコレを「メモリーズエッグ」って名前にするかぁ?
なぁんかイマイチ、ピンと来ねぇなぁ…。


「エッグの蓋の裏で光ってるのは宝石ですか?」
「あぁ、そりゃただのガラスなんだ」
「え?」
「皇帝から皇后の贈り物なのに?なんか引っかからない?」
「うーん…。ただ51個目を作る頃はロシアも財政難に陥っていたようだがね」


模型は純金なのに、か?
どうもこっちもピンと来ねぇなぁ…。


「引っかかる言うたら、キッドの予告状。光る天の楼閣。…なんで大阪城が光るんや?」
「アホ。大阪城建てた太閤さんは、大阪の礎築いて発展させはった、大阪の光みたいなもんや」
「その通り!キッドが現れるのは大阪城の天守閣。それは間違いない!だが…」
「秒針のない針が12番目の文字を刻む時。この意味がどうしてもわからんのだ!」


そう言いながら会長室に入ってきた茶木警視と中森警部。


「ソレって、あいうえおの12番目の文字とちゃうん?」
「あいうえおの12番目の文字、って…し?」
「じゃあ4時ってこと!?」
「いや!キッドの暗号にしては単純すぎる!」
「…わかりましたよ、警視!あいうえおではなく、アルファベットで数えるんです!」
「アルファベット?」
アルファベットの12番目の文字はL!つまり」
「3時か!!」
「さすが名探偵!お見事ですな!」
「あーはっはっは!!!」


アルファベットのL…。
さっきのエッグといい、どうもまだすっきりしない…。
ぴたりと嵌るはずのパズルのピースが、完全に嵌っていないような、そんな感覚。


「待ってろよ!怪盗キッド!今度こそお縄にしてやる!!」


そう言い茶木警視と中森警部は犯行時刻までの準備を、と、部屋から出て行った。


「じゃあさ!暗号も解けたみたいだし、私達大阪観光しに行こうよ!」
「そうだね。本場のたこ焼き食べたいし!」
「あ!その前にここから近いし、難波布袋神社行かへん?」
「「神社?」」
「せや!ほら、前にあおいちゃんに言うたやん!めっちゃ当たるて噂のおみくじがあんねん!」
「…あぁ、そう言えばそんなようなこと聞いたような聞いてないような?」
「…あおいどうかした?」
「え?」
「さっきから黙ってるし、今も上の空みたいだし…、具合悪いの?」
「え!?あ、違う違う!ち、ちょっと親戚の人のところに行かなきゃいけなくて、」
「「「え?」」」


あおいが少し、困ったような顔をしながら言った。
あおいから「親戚」の話を聞くのは初めてで。
でもそれは蘭も、園子も、そして和葉も同様だったようで、一様に驚いた顔をしていた。


「ほ、ほら。園子の家にバイクも取りに行かなきゃだし、あんまりゆっくりしてられないんだ…」
「親戚、って、後見人の人?」
「んー、違うけど…、遠い親戚の人」
「こっちの人なの?」
「ううん、…江古田の人だよ。で、でも神社くらいは一緒に行けるから、みんなで行こうよ!」


そう言って会長室から出て行こうとするあおい。
…江古田の親戚?
そう言われて頭に過ぎったのは過去2度ほど見かけた学ラン男、江古田のクロバの顔だった。
いや、飛躍しすぎか…。
でも、江古田に呼び出されるほどの繋がりがある親戚がいるなら、住んだことなくてもクロバの存在を知っていたことも、納得できる。
だが米花町に来てからそんな連絡取ってた親戚なんかいる気配なかった気がすんだけどな…。


「気になるんやったらあとで電話したったらえぇやん」
「…言われなくともそーするさ」


おみくじだなんだと騒ぐ蘭、園子、和葉に続き俺たちも会長室を出た。

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