キミのおこした奇跡side S


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世紀末の魔術師


狙われたインペリアル・イースター・エッグ


黄昏の獅子から暁の乙女へ
秒針のない時計が12番目の文字を刻む時
光る天の楼閣から
メモリーズ・エッグをいただきに参上する
世紀末の魔術師 怪盗キッド


「え?あおい姉ちゃん園子姉ちゃんとバイクで行ったの?」
「うん。園子が乗せてほしい、って言ったから2人で行ったよ」
「…それ大丈夫なの?」


沖縄、大阪旅行から帰宅後、服部の言う通り警視庁からオッチャンに捜査協力の打診があった。
時同じく、蘭に園子からオッチャンの手を貸してもらえないかと打診があった。
園子というより、鈴木財閥現会長鈴木史郎氏のたっての希望ということもあり、2つ返事でOKを出し、現在オッチャンと蘭と3人で新幹線で大阪に向かってる。


「コナンくん、あおいのバイク乗ったことないんだっけ?」
「蘭姉ちゃんはあるの?」
「うん、1度だけね。空手の試合に間に合わなくて走ってたらちょうどバイクに乗ったあおいと会って会場まで送ってくれたことあったから。あおい、運転上手いんだよ!」
「へぇ…」


未だ「あの」あおいがバイク乗り回してるのが想像つかねぇ…。
あおいが大阪に行く日の朝(って言っても昨日だけど)事故って死ぬなってメールしたらたった一言「工藤くんだけは乗せません」て返信がきた。
あんニャロォ、人が心配してやってんのに…!


「インペリアル・イースター・エッグって、ロマノフ王朝時代の工芸品なんでしょ?どんなのかなぁ!コナンくん見たことある?」
「写真でならあるよ。…ロシアの皇帝がイースターのときに皇后に送るために作らせた工芸品で、今まで50個発見されていて、鈴木財閥の蔵から見つかったのは51個目の貴重な文化遺産なんだよ。…本物なら、ね」
「ほんとコナンくんていろいろ詳しいよねぇ!」
「えっ!?…って、新一兄ちゃんが言ってたんだ!」
「…あの探偵ボウズは余計なことばっか知ってやがるな!」


余計なことばっかで悪かったな…。


「でも私たちはお父さんたちの邪魔になるから、園子やあおいと合流して大阪観光しようね?」


いや、きっとあの色黒がでしゃばってくるはずだから、観光どころじゃねぇだろ。
とりあえず本場のたこ焼きが食べたい!と言う蘭に苦笑いで返した。


「らーん!」
「ここだよ、ここー!」
「園子!あおい!」
「コナンくんもおじさんもお疲れ様!」
「おぅあおい!またこの世で会えたな!あっはっは!」
「…おじさんも絶対乗せません!」


到着早々のオッチャンの嫌味にちっ!と舌打ちしたあおい。
いやでも、無事ついてたようで何よりだ、マジで。


「ほーう、リムジンか!さすが鈴木財閥!」
「だって今日は特別なんですもの!」


鈴木財閥所有のリムジンで駅から現場へと向かう。
あおいのバイクは鈴木家の大阪別宅に置いてきたんだとか。
…それが無難だ。
んで、園子は相変わらずミーハーにも憧れの「キッド様」に会いたいんだとか。
…好きにしてくれ。
チラッとあおいを見たら苦笑いしてた。
コイツも結構ミーハーなところあるけど、「キッド」の話は、あんま聞かねぇんだよな…。
まぁ…俺が探偵だし?
怪盗には(てゆうか犯罪者には)興味ねぇのかも、とか思った。


「あ、そうそう!運転してくれてるのはパパの秘書の西野さんよ」
「よろしく」
「彼はずーっと海外のあちこち旅してまわって、英語、フランス語、ドイツ語がぺらぺらなんだよ!」
「へぇ、すごーい!」


…さすが鈴木財閥お抱え秘書。
英語だけじゃなく、フランス語、ドイツ語も堪能とはね。
まぁあれだけでけぇ財閥の会長秘書なら当然か。
その後は他愛もない話を車内で繰り広げていた。
蘭と園子はたこ焼きだなんだと言っていたが、俺やあおい、そしてオッチャンもこの間食い倒れツアーしたばかりだから反応は薄かった。
そうこうしてるうちに現場となる鈴木近代美術館に到着。
…したはいいが、


「す、すごい警戒だね…」
「まさに蟻の這い出る隙もねぇって感じだ」
「あったり前よ!相手はあの怪盗キッド様!なんたって彼は」
「神出鬼没で変幻自在の怪盗紳士。堅い警備もごっつい金庫もその奇術まがいの早業でぶち破り、おまけに顔どころか声から性格まで完璧に模写してしまう変装の名人ときとる。…ほんまに、めんどくさいヤツを敵に回してしもたのぉ、工藤?」


出たな、色黒。
まぁ当然と言えば当然だけどな。


「もー!なんで服部くんコナンくんのこと工藤、って呼ぶの?」
「あはは!すまんすまん!コイツの目のつけどころが工藤によぉ似とるんでな!ついそない呼んでしまうんや」


…無理あるだろ、ソレ。


「ほーんま、アホみたい!今日も朝早よから工藤が来る、工藤が来る言うていっぺん病院で見てもろた方がいいんとちゃうのぉ!?」


そう言いたくなる和葉の気持ちすげぇわかる…。
事情を知らない第3者が聞いたらオメー立派な「工藤病」の烙印押されるぞ…。
賑やかに口論する服部と和葉を置いて、鈴木会長の待つ会長室に向かった。


「おお、毛利さん!これは遠いところをよくおいでくださいました!」
「やぁ、どうも」
「蘭さんとコナンくんも良く来てくれたね。えぇっと、園子。そちらの2人は?」
「服部平次くんと、遠山和葉さんよ、パパ!平次くんは西の高校生探偵って呼ばれてて関西じゃ有名だってさ!」
「それはそれは。頼りにしてますよ」
「おぅ!任せといて、オッチャン!」


オ、オッチャン…。
仮にも「あの」鈴木財閥現会長を「オッチャン」…。
寝てりゃ事件が解決するそこのオヤジとはわけが違うんだぞ、オイ!
チラッと鈴木会長を見たらにこにこにこにこしていて。
この人が温厚な人でほんと良かったよ…。


「紹介しましょう。こちらロシア大使館の一等書記官、セルゲイ・オフチンニコフさんです」
「よろしく」
「お隣が早くも商談でいらした美術商の乾将一さん。彼女はロマノフ王朝研究家の浦思青蘭さん」
「ニーハオ」
「そしてこちらがエッグの取材撮影を申し込んでこられたフリーの映像作家寒川竜さん」
「よろしく」
「しかし商談てどのくらいの値を?」
「8億だよ」
「は、8億ぅぅ!!?」


まぁ…、発見されたエッグが本物なら、妥当な数字だな。


「会長さん!インペリアル・イースターエッグは元々ロシアのものです!こんな得体のしれないブローカーに売るくらいなら是非我がロシアの美術館に寄贈してください!」
「得体の知れないだと!?」
「いいよ、いいよ!こりゃエッグ取るより人間撮る方がおもしろいかもしれないな」


そうだろうなぁ…。
欲にまみれた人間ほど、見ていて滑稽なものはない。


「あんたもロマノフ王朝の研究家なら喉から手が出るほどほしいんじゃないのか?」
「はい…。でも私には8億なんてとても…」
「だよな。俺もかき集めても2億がやっとだ」


おいおい…。
キッドだけじゃなく、みんな狙ってんじゃねぇか、エッグを!


「とにかくエッグの話は後日改めて、ということで」


会長のその一言で4人は帰っていった。
その時、西野さんが会長室にやってきた。
…なんだ?今の寒川さんの反応…。
去っていく4人の後姿を少しの違和感を持って見送った。

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bkm

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