キミのおこした奇跡side S


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甲子園の奇跡


白き罪人からの挑戦状


「お?ボウズ、どこ行くんや?」
「僕ちょっとトイレ」


かち割り食ったらトイレに行きたくなって席を立つと、大滝さんがどこに行くのかと尋ねてきた。


「ほな平次ついて行ったり!」
「…はぁ!?なんで俺が!」
「コナンくん1人やと心配やん!」
「あんなぁ、ガキじゃあるまいしどこが心配なんやて」
「コナンくん思いっきり子供やねんけど…」


和葉のその言葉に「お前この良いところで席立つてどういうこっちゃ!?」光線を服部から向けられる。
いやだから、終盤にかかる前にトイレ行っておこうか、って思って立ったんじゃねぇか。
別にオメーついて来なくていいし。


「せやな。平ちゃん、いっくらしっかりしてるボウズでも心配やし、ついて行ったって」
「大滝さんまで!…ったく、しゃーないのぉ」
「お、じゃあついでに冷てぇ飲み物買ってきてくれ!こう暑くちゃ水分取らねぇとな!」
「あ!じゃあ私爽健美茶頼むわ!あおいちゃんは?」
「え、私?うーん、じゃあおーいお茶、で」
「…お前ら何ちゃっかり茶頼んでんねん。誰が買うて来たる言うたんや?」
「服部くん!」
「なんや?」
「濃い味の方ね!」
「…」


あおいの留めの言葉に、明らかに機嫌が斜めになった服部とトイレに向かう。


「おかしやろ?おかしいやんな?」
「何が?」
「あの姉ちゃん俺の言葉聞いてへんやろ!?」


まぁ…、最もな意見だな。


「まぁまぁ、いつものころじゃねぇか」
「俺は絶対あの姉ちゃんだけは彼女にせぇへん」


万が一する気が起きたとしても俺が断固阻止するから安心しろ。
意外に混んでいた(しかも故障中とかで球場の反対側まで行かされた!)トイレから出て自販機コーナーに向かう。
建物の中とはいえ、やっぱり暑いのは変わらない。


「そうや、お前も聞いたか?」
「あん?何を?」
「まーた怪盗キッドからの予告状が来たて話!」


怪盗キッド。
ビッグジュエルと呼ばれる宝石を狙う世間を賑わす白いキザなコソ泥。
今どき律儀に予告状を出し犯行を繰り返すレトロな奴。


「いいや、初耳」
「おとんが言うててんけどな、今度はなんでも警視庁捜査二課だけじゃなく、おとんら大阪府警も全面協力するっちゅー話やで」
「…て、ことは今度は大阪で犯行を?」
「おー。なんやけったいな暗号送りつけられたらしいで?それ以上は教えてくれへんかったからどんな暗号かまではわからんけどなぁ」


暗号、ねぇ…。


「でもまぁ、盗難は俺の専門外だし」
「暗号は専門なんちゃうか?自分気になるやろ?」
「…ま、まぁ、そこは、なぁ?」


キッドは、奴の犯行現場で数回、遠くから見たことあるだけ(それも園子がカッコいいから見に行こう!とあおいを誘ったからっていう理由で)
今どき真っ白なタキシードにシルクハットで盗みに入るとか。
愉快犯じゃねぇか?って、その程度の認識だ。


「でも俺には関係な」
「なんでも鈴木財閥のお宝らしいで?」
「え?」
「あおいちゃんの友達におるやろ、鈴木財閥のご令嬢」
「…」
「それから、」
「あん?」
「おとんの話やと、特別捜査協力者としてかの名探偵の知恵を借りるかぁっちゅう話が出とるらしいねん」
「…それって」
「この服部平次に茶買いに行かせる日本一のボケナス探偵として名馳せとる、眠りの小五郎に力借りるんやと」


ガコン、と、自販機の中でペットボトルが落ちる音がした。


「つまり、無条件でお前もついてくることになんねんな?」
「…まぁた大阪来るハメになんのかよ」
「えぇやん!今度こそうまいお好み焼き食える店連れてったるわ!」


あはは!って笑う服部。
怪盗キッド、ねぇ…。
ああ、でも確か母さんの話だとキッドの名付け親は父さんだ、って話だったっけ。
そう思うと、俺にも何かしらの因縁があんのかもしれねぇ、なんて。
そんなこと思いながらスタンドに戻った。


「PK戦でね!」


あおいたちのいるところまで辿り着くと、甲子園にも関わらず、会話が何故かサッカーだった。
…PK戦?


「PK戦、ちゅうことは、」
「そ!残り1分、工藤くんのゴールとアシストで同点に追いついてPK戦に持ち込んだんだけど、最後にPKを外したのも工藤くん」


…まさかアイツ今さら中学ん時の都大会決勝の話してんじゃねぇだろうな!?
俺のそれ以上言うなオーラに気づきもせず話を進めるあおい。
あの数日後中道に言われたこと今でも覚えてる。


−お前あおいちゃんに慰めてもらった?−
−…はぁ?なんであおいが出てくんだよ−
−えー、だってあおいちゃん『ラスト1分あの土壇場で、工藤くん笑ってたけど、何話してたの?』ってわざっわざ俺のところに聞きにきたんだぜ?そんなん気になるくらいお前のこと見てたってことじゃねぇか!俺悔しかった!あおい!体で慰めてくれ!!って、冗談だろ冗談!−
−オメーと一緒にすんじゃねーよ!−
−でもお前にじゃなく、俺に聞いてくるあたり、あおいちゃんも気遣ってんだからわかってやれよ?−


そういう気の遣われ方がカッコ悪ぃから、試合後から今の今まで、あおいにはその話題は一切しなかったんじゃねぇか。


「でも、最後の寂しそうな後姿がなんだかカッコよくて、少し、…羨ましかった」


…え?
カ、カッコ良かった?
せっかくPKまでもつれ込んだのに情けない!とかじゃなくて?


「いっ!?」
「お前、この間からずいっぶん美味しい話聞かせられとるな?俺はこんな使いっパシリさせられとんのに!」


服の襟を掴んで服部が俺を持ち上げた。
パシリは俺のせいじゃねーっての!


「今のあの2人が、その時の工藤くんに似てるなぁって思ったんだ。往生際が悪くて、子供みたいに負けず嫌いなところ、そっくりだよ」
「平次もそうやろか…」
「…きっとね」
「うわぁぁ!?」
「「え?」」


私が話し終わったと思った直後、服部が俺をあおいの方に放り投げた。
俺はペットやなにかじゃねぇんだからもっとまともに扱え!!


「平次!遅かったやん!」
「アホゥ!1番近いトイレが壊れとって反対側まで行ったんじゃボケェ!まぁそのついでにあっち側で立ち見で試合見とったけどな」
「今さら茶届けられてもよぉ…」
「買うてきただけありがたい思わんかい!」
「…コナンくん大丈夫?」
「う、うん。ありがと、あおい姉ちゃん…」


俺をキャッチしたあおいに体を起こされ、自分の席に戻り、マウンドに目をやる。
試合は延長戦へ。
日本一の負けず嫌いが決まるまで、あと少し。

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bkm

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