キミのおこした奇跡side S


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孤島の姫と龍宮城


notice me, but...


「せや!1つ聞きたいことあってんけど」
「あん?」


じゃあ俺たちもホテルに帰るか、ってなってようやく部屋に戻ってきた時。
服部が不意に切り出してきた。


「鬼亀島で俺が潮流に流されたやろ?」
「ああ、そうだな」
「あん時お前なんで顔赤くしててん?」
「……………え゛っ!?」


鬼亀島の服部が流された時ってだってオメー、あの時俺はっ…!


「夕日のせいや、言うとったけど、あの赤み、そんなわけあるかい!何があってん?」
「べ、別に何にもねぇけど?」
「…怪しぃなぁ!自分めちゃめちゃ怪しいで!」
「な、何が?」
「何思い出し赤面しとんねん?」
「べ、別に赤面なんかっ」
「お、ほれほれ!もっと赤ぉなった!ほんまに何があったんや?俺たち親友やん!隠し事はナシやで?な!」


な!と言って俺の肩を叩く服部。
すっかり忘れていたのに、思い出させやがったもんだからまた顔が赤くなってきた気がするのは気のせいじゃないわけで。
なぁなぁ、教えーや!としつこい服部に、腹括ってポツポツ話した。


「ち、」
「…」
「乳揉んでたやとーー!!!?」
「オメー何聞いてたんだよ!!揉んだなんて一ッ言も言ってねーだろーがっ!!…た、ただなんつーか挟まれた?っていうか、」
「おっまえ、俺が生きるか死ぬかの瀬戸際やった時に何しとんねん!!!!」
「だからアレは俺がそうしたんじゃなく不慮の事故でだなぁ!」
「あかん」
「あ?」
「もうあかん。全っ部話したろ、あの姉ちゃんにっ!!」
「ば、ちょっ、待てよっ!!!」
「くっそ!なんやねんそのオプション!!小っさなったらそないなオプションつくんかい!!」
「オプションじゃねーだろ!」
「なんや、よーわからんけど、今めちゃめちゃ悔しいやんけ!どないしろっちゅーねんこの思い!!!」
「知るかよ…」


その後も一晩中(ほんとに一晩中!)このむっつりだの、俺もちっさなりたいだの、散々グチグチ言ってる服部につきあわされた。
翌朝ゲンナリした俺とは対象に今だ怒り冷めやらぬな服部はソーキそばの大食いでコレでもか!ってくらい自棄食いして東西探偵対決でオッチャンに圧勝したのだった。
…俺こんな対決に呼ばれなくてほんっと良かった。
和葉と2人寝坊したとかで遅れてきたあおいをチラッと見る。


−あ、逢いたい、です−


「俺」はココにいるぜ?
なぁ…。
ココにいるんだよ。


−あんなに近くにいるのに、ココだよって、声が届かないんだよ?寂しくないのかなぁ?−


そんなの言葉じゃ計り知れない。
「俺」はここにいるのにアイツの目に映る「俺」はアイツの望む「俺」じゃねーんだから。
でもそれでも。
今の「俺」に変わりない。
なぁ、気づいてくれ。
「俺」はここにいる。
けど、気づかないでくれ。
「俺」だとバレるとオメーまで巻き込んじまう。
決して口には出せない思いを胸に硬く閉ざし、沖縄を後にした。

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bkm

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