キミのおこした奇跡side S


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孤島の姫と龍宮城


今宵、エデンの片隅で


しばらく流星を見ていたら、少し、瞼が重くなってきて。
あぁ、そういや俺昨日から寝てねぇや、とか。
「新一」の姿だったら1日寝ないくらいどーってことなかった(つーか授業中寝てた)けど、「コナン」の姿でソレをしたらやっぱり疲労度がハンパない。
瞼を閉じてもまだ、流星が流れているのが見える気がしていた時。


「コナンくんもう寝た?」


和葉が口を開いた。
いや、俺まだ起きてるけど?って思ったけど、なーんかダルくて返事する気にもなれずに、このまま寝たフリでもしてるか、って思った時、隣であおいが動く気配がした。


「たぶん寝た、かな?」


あぁ、俺の様子を探ったのか。
ほんと返事する気力もねぇし、このままでいよう。
そう思った時だった。


「私毎っ回思ててんけど、」
「うん?」
「コナンくんてあおいちゃんのこと大好きやんな?」


……………はっ!!?
な、何言う気だこの女っ!!!


「どー考えてもあおいちゃんコナンくんの初恋やって!今回もなんやエライあおいちゃんが危なないように気にしとったし、京都ん時も玉龍寺であおいちゃんに説教してる姿はなんや夫婦か恋人みたいやったし?」


オメー人が寝てると思ってふざけたこと喋ってんじゃねぇよ!
とは思ったものの、この話題を投下され今さら「バーロォ、起きてんだよ!」なんて言えるわけもなく、このまま寝たフリをすることにした。


「でもちょっと可哀想な気もすんねんけどなぁ」
「え?」
「あないにあおいちゃんのこと気にしとんのに、工藤くん帰ってきたらコナンくん失恋してまうやん」
「…えっ!?」
「せや、平次は聞いてへん?工藤くんがいつ帰、って気色悪っ!!あんた何ニヤッニヤしてんねん!!」
「…あぁ、すまんすまん!なんやおもろい話しよんなぁ思たら笑いが止まらんで」
「おもろい、てあんたコナンくんと仲良いのに酷い男やなぁ…」


…蹴り飛ばしてぇ…。
目瞑ってても服部がニヤッニヤしてる姿が手にとるようにわかる。
あんニャロォ、1人でこの状況楽しみやがって!
オメーの女だろ!?
好き勝手喋らせんじゃねぇよ!


「あおいちゃんからしたら工藤くんが帰ってきた方がえぇんやろぉけど、」
「か、和葉ちゃん!」
「うん?」
「そ、そういう話はまた今度2人きりの時にっ!!」
「…なんで?えぇやん。平次は工藤くんの親友や言うてるし、この際平次に言って工藤くん情報もろたらえぇやん。なぁ平、ってだからあんたはさっきからなんでそないにニヤッニヤしてんの!?気色悪い男やなぁ!」
「すまんすまん!俺のことは気にせんと早ぉ話続けて!」
「…ほんま気色悪いわ…。でもあおいちゃん、こんなんでも役に立つ思うで?どこにおるかもわからん工藤くんのこと、心配やないの?」


いつの間にか、話がこっちにきた。
いや元々「コナン」である俺の話題だったけど、それが「新一」である俺の話題になっただけ。
…そして和葉が振ったそれは少し、俺も聞いてみたいあおいの本音。


「あおいちゃん」
「な、なに?」
「あんなにいっつもあおいちゃんのこと心配しとるコナンくんには悪いけど、私はあおいちゃんに幸せになってもらいたいて思う」
「う、うん」
「せやから出来ることはしてあげたいとも思うんやけど」
「…うん」
「逢いたないの?工藤くんに」


その言葉にあおいにバレないように、ひっそりと天を仰ぎ見た。


−あれが天の川!で、1番光ってる星ベガが織姫星!川挟んで光ってるアルタイルが彦星!天の川の真ん中で光ってる星が2人を繋ぐはくちょう座のデネブ!これでわかっただろ!?−
−…すごい−
−あ?−
−織姫と彦星ほんとに天の川挟んでるよ!?え、じゃあ7月7日にもしかしてあのはくちょうのデネブが接近して橋渡しするの!?−
−…んなわけねぇだろ…−
−違うの!?だって鳥が橋渡しして、−
−あのなぁ、そりゃ子供に話す昔話だろ?主に東アジアで語り継がれてる民話!作り話だろーが!だいたい七夕伝説で橋渡すのは白鳥じゃなくてカササギだろ?−
−…じゃあずっとあのままなんだ?−
−ったりめーだろ?そんな民話いちいち信じんじゃ−
−寂しくないのかな?−
−は?−
−あんなに近くにいるのに、川に挟まれてココだよって、声が届かないんだよ?寂しくないのかなぁ?−


1年に1度しか会うことが許されない織姫星と彦星。
実際問題、星が「寂しい」なんて感じるかって話だが。
そもそも何億光年離れている俺たちには近く見えても実際あの場所に行ったら遠く離れすぎていて姿なんか見えるわけがない。
でも、


−あんなに近くにいるのに、川に挟まれてココだよって、声が届かないんだよ?−


そういうことじゃないんだってこと。
それくらい、俺にもわかる。


「あ、逢いたい、です」


あおいの言葉に、あの日と同じ星たちが映らないように、きつく瞳を閉じた。

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bkm

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