キミのおこした奇跡side S


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孤島の姫と龍宮城


天体観測


「…」


救助船が来たのは日がだいぶ昇ってからのこと。
オッチャンは来なかったけど。
…ぜってぇ、二日酔いだな。
浜辺で久米さんを探していたあおいたちと合流した後、簡単に事件について話した。
犯人が大東さんで、誘拐が狂言、屏風を盗んだ犯人が久米さん、ってなったら、小さいクルーザーは犯人を2人乗せてるわけで。
島に戻るまで誰も何も喋らなかった。


「なにー!?事件は解決しちまっただとぉ!?ほんとかよ、おい!」
「あぁ!あんたが酒飲んでえぇ気分で寝てるうちにな!」
「じゃじゃじゃ、俺のテレビ出演は!?ギャラはっ!!?」
「知るかボケェ!」
「ほんじゃあお前が何か起こせぇ!食い逃げなんでも良い!!派手な奴を一発っ!!」


そんなバカな、って発言をするオッチャン。
まぁ実にあんたらしいけどな。
結局この発言でひらめいた竹富さんの案で「東西大食い探偵対決」になるらしい…。
…俺呼ばれてなくて良かった。


「え?流星群?」


そしてその日の夜。
やたら夕飯を早く済ませたがっていたあおいと和葉。
わけを聞くと天体観測したいんだとか。
…そーいや、今日だったな、ペルセウス流星群。


「コナンくんも見に行くよね?」


いや、俺ぶっちゃけ部屋で寝たい。
と喉のまで出かかった言葉をグッと飲み込んだ。
だって俺が行かないって言ってもこの様子じゃ和葉と2人で見に行く気だろ?
それって女2人で夜中に出歩くってことじゃねぇかよ!
あぁ、くそ!と思いながらも強制天体観測が決まった。


「オメーも来んのか?」
「あ?行っちゃ悪いんかい」
「いやぁ、明日の準備でもすんじゃねぇかと思ってな」
「アホゥ!腹空かしとけばえぇだけやろ!」


ってことで服部も入れた4人で見ることになった。


「砂浜で見るの?でもホテルの電気邪魔じゃない?」
「それがね、流星群のために今日だけ海沿いに面した照明はなるべく使わないようにするし、宿泊客にも協力してくれるよう伝えてあるから大丈夫なんだって!」


って、ことでホテル前の砂浜に向かう。
すでにチラホラ人影が見えた。


「俺いーっつも思うんやけど、天体観測て首疲れへん?」
「…あ!じゃあ服部くん服脱いで!」
「「「…は!?」」」


服部の一言に、あおいがとんでもないことを口走った。


「服部くんの服を下に敷いてみんなで寝そべってみるの!」
「…なんで俺の服やねん!?」
「ヤダ!女の子脱がせる気!?」
「そぉは言うてへんやろ!?おい、和葉!お前もなんか言わんかいっ!」
「せやなぁ…。服でも敷かんと髪の毛が砂まみれになってしまうから…、平次、あんた服脱ぎ」
「はぁ!?だからなんで俺の服やねん!」
「…嫌ならいいよ。…工藤くんはしてくれたのに」


その言葉に反応したのは服部だけじゃなく、俺もだった。
まさかあの時のこと言う気じゃっ…!


「え?なになに?工藤くんと天体観測したん?」
「うん。中2の修学旅行の時にね。最初背中合わせでお互いの体に寄りかかって見上げてたんだけど、それでも首痛くなるじゃん」
「うんうん」
「そしたらしゃーねーなぁ、とか言いながら着ていたジャージ1枚脱いでそれを敷いて2人で寝そべって見てたんだよ」
「いやや!工藤くんめっちゃ優しいやん!それにやっぱり東京モンはキザやな!」


工藤くんちはお父さんがジェントルマンだからこう言うのわりと普通だよ、と笑うあおい。
…の、後ろからお前のせいか目線を服部から向けられてる気がするのは気のせいじゃないはずだ。


「しゃーないのぉ」
「平次、服貸してくれんの!?」
「あのキザ男のせいで俺が貸さなタダの酷い男やんけ!…そのかわり、」
「いたっ!?」


俺の頭を鷲掴みにして服部が続けた。


「同じ男としてボウズも服貸してくれんねんな?」
「え?平次のだけでええんちゃう?」
「どアホゥ!俺の1枚に4人てどんだけくっついて寝なあかんねん!2:2で別れた方が広々できるやろ!」
「…それもそうやな」


そしてあおい、和葉の、脱ぐのか?と言う期待を籠めた視線と、お前のせいじゃボケェ!早脱がんかい!と言う服部の視線が俺に集まってきた…。
やっぱり寝てた方が良かったかもしれない…!


「あ!今流れた!」
「え!?どこどこ!?」


服部の服に服部と和葉が、俺の服にあおいと俺が頭を乗せて寝そべる。
同じ向きで横並びと狭いから、と、体の位置を変え俺、あおい、和葉、服部の並びで寝そべった(あおいと和葉は同じ向きで寝そべってるけど)


「うーん、わからへんなぁ…」
「ピークはもう少し後だから、これから増えてくるよ!」
「ほんまに見えるん?」
「見えるよ!ペルセウス流星群は、流れる速度が速くて、途中で急激に光を増すことがあるんだって!明るい流星や火球が多くて、流星痕が残ることも多いみたいだから見つけやすいはずだよ!他の流星群に比べても明るいから、薄曇りでも観測する事もできるくらいだし!」
「…」
「…ん?なに?」
「あおいちゃん詳しいなぁ…」
「ああ!工藤くんと天体観測してた時にもういいよ!ってくらい流星群のうんちく語られたから」


…悪かったな、語って。
あの時は、ただ黙って夜空を眺めてるだけなのもなんか勿体なくて。
俺の知ってることポツリポツリ話し出したらあおいが「それでそれで?」って聞いてくるから、なんか…、そのままうんちく語った気がする。
また沖縄で、こうして流星観測するとは、あの時は思いもしなかった。
あの時よりは、少しは、近くに感じる。…よ、なぁ?
チラリ、と横目で見るあおいはあの時と変わらず嬉しそうに夜空を見上げてた。

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bkm

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