キミのおこした奇跡side S


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孤島の姫と龍宮城


かあちゃんとちよにい


服部の指示で船に吊るされていた男を桟橋に降ろした。


「酷い殺し方やな…。犯人は船長を硬いパイプみたいなもんでなんべんも殴ったんや。…もう死んでるとわかった後もな…」
「そ、そんな…」
「ほんで船長を船の横に括りつけて、例の字を書いたんや。『我はグソーの使いなり』ってな」


明らかに平良さんの時と殺し方が違う。
船長に直接の私怨があった者の犯行か?


「いったい誰が!?」
「や、やっぱりいるんだ!この島や海に、俺たち以外の人間が!人を殺して楽しんでる連中が隠れてるんだよ!」
「確かにそうだ。船がこの桟橋に衝突した時俺たちは全員あの家の中にいた。船を操縦してきた犯人がこのあたりに潜んでるのは間違いなさそうだ」


いや…。
そうとは限らない。


「今、船の中を見てきたら、操縦席のところにちっちゃい機械みたいなのがあってさ。それを見たらこの船、桟橋から海をグルーッと1周しただけだったみたいだよ?」


つまり、オートパイロットに設定していた可能性もある。
それイコール、この中に犯人がいる可能性を示していた。


「だがなボウズ。海には潮の流れってもんがあって、いくらオートパイロットでもこんなにぴったりと桟橋にぶつけることなんか、」
「いいや。ぴったりやのぉてもかまへんで?オートパイロットが潮流で受ける誤差はだいたい50メートルか100メートルや。島のこちら側にこすり気味につくように設定しといたら、島のさんご礁に沿って船を桟橋にぶつけることはできるで?」


そう…。
この地形なら桟橋にぶつけることはいくらでもできる。
そうなると犯人は内部の、この4人の誰かであることも拭いきれない。


「お、俺たちの中に犯人がいるかもしれないって言うのかよ?」
「あぁ。俺ら4人が平良さんを探しに船から出たとき、あんたらも俺らの後を追って船から出た言うてたやろ?そん時最後まで船に残った奴やったら犯行は可能や、言うてんのや」


そしてここで罪のなすりあい、と、思いきや、


「最後まで船に残ったのは俺だ」


大東さんが名乗りをあげた。


「だが俺が船から出た後に、こっそり船に戻ることは、誰にだって出来るだろう?それに忘れちゃいねぇか、探偵の兄ちゃん?平良って言う姉ちゃんの時のことをよ!」


まぁ…俺が大東さんの立場でも同じことを言うだろうな。


「平良さんの側の砂に書いてあった文字。あれはあの時島の真裏にいた俺たちには書くのは無理だって…!」
「ああ…。文字は満潮から引いている最中のすぐ側に書いてあったから、平良さんを見つける直前に書かなければ波で消されてしまうって確かに言ってたぜ?」
「そ、それに、平良さんの時も船長の時も、書いてあった文字は全く同じだったんだから同一犯なんだろう?だったら我々の中に犯人がいるわけないよ!」
「まぁ、犯人が複数犯なら同じ字を書くように示し合わせたってことも考えられるが、ソイツも犯人がしかけた罠かもしれねぇな…。俺たちの中に犯人がいると見せかけて仲たがいさせるためのなぁ…」


まぁ…、それもあり得ない話ではねぇけど、な…。


「と、とにかく!船は戻ってきたんだし、」
「せやな!話は向こうの島に戻ってからした方がえぇんと違う?」
「いや…。船長降ろす時俺も船ん中見たけど、燃料はほとんど残ってへんかったわ」
「「えっ…!」」
「それだけやない。無線も壊されてたし、俺らの荷物もみんなのぉなってた」


と、いうことは犯人は俺たちをこの島に閉じ込めてまだ何かやろうとしているのかもしれない。


「殺されとなかったらさっきおった家ん中で救助船を待つしか手はない、っちゅーこっちゃ」


その服部の言葉に1人また1人とあの家に戻っていく。


「ほんなら平次、私らも先行ってるわ。気つけてな?」
「心配すんな」


そう言って去っていく和葉の隣であおいの瞳が心配そうに揺れていた気がした。


「なぁ工藤。おかしいで、この事件」
「あぁ…」
「最初の被害者の平良さんは丁寧に手組んで目も閉じさせてたのに、2番目の被害者の船長はぼっこぼこのタコ殴りや」
「犯人がそれぞれ別の人間なのかもしれねぇが…、それにしても違いすぎる」
「それに気になるんは、殺される前の船長と平良さんの行動や」
「あぁ…。平良さんは危険を犯して潮流が早い海にわざわざ潜っていたし、船長は予定時間ぎりぎりまで船で島の周りを回っていた」
「船ん中に海底探査機もあったから、あらきっと海ん中を探してたんやろな。たぶん俺が海の底で見た、碇についてたはずの何かをな。…それより工藤。俺らがさっき集まってた部屋のイスの裏、」
「あぁ。クレヨンで書いた子供の字だろ?俺が座っていたイスの裏は『わたし』で、あおいのイスには『ママ』」
「けど、俺が座っていたイスの裏には、」
「「『かねしろさん』」」
「お嬢さまが書いた字やろ?金城さんやったらなぁんで『パパ』て書かへんねん?字書いてあったのあの3つだけやろ?」
「それにお嬢さまと背比べしてた『かぁちゃん』と『ちよにい』のイスがなかったのも引っかかるな」
「あぁ…。部屋まであんのにイスがないんはごっつ変やで」


『かぁちゃん』と『ちよにい』…。
一体ナニモノなんだ…!?

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