キミのおこした奇跡side S


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孤島の姫と龍宮城


屋敷内探索


「へぇ、そう!合気道をねぇ!」


俺と服部先頭の見回りの途中であおい、和葉、竹富さんが談笑していた。


「2段やねん!」
「キミは?」
「わ、私は中学の時弓道を少しやってたくらいです…」
「いやいや、それでも心強いよ!」


竹富さんはあおいと和葉の武道経験を聞いて安心したようだ。
まぁ確かにあおいは中学3年間弓道続けてたし?
射撃で、だったけど、命中率は異常だったしな。
…でも今オメー弓も銃もねぇだろ。
って、ツッコミはしないでおいた。


「あのオッサンこっちの組に入れておいて正解やったな」
「あー。1番弱そうだったからな」


そして1つずつ部屋を見て、最後の部屋、って扉に差し掛かった。


「さぁ服部くん、最後の部屋だよ!」
「もったいぶらんと早開けてぇな!」


そう言う和葉は服部にしがみつき、あおいはその後ろで和葉にしがみついていた。
…そういや和葉も蘭と同じで強ぇくせに怖がりだって、前に服部が言ってたな。
この組み合わせ、やっぱ失敗だったかも。


「おーい、誰かいてるか?…おーい!」
「…い、いない?」


あおいの言葉の後、みんなで室内に入ってみた。


「誰もいないみたいだね?」
「…せやけどここの部屋、他の部屋に比べてめっちゃ広いなぁ!」


確かに。
ダブルサイズのベットもあるし。
町長の寝室か?


「たぶん、町長の奥さんの部屋だからだよ。ほら。2人の写真も飾ってあるし」
「ふぅん。…さすがにイカレてきとるなぁ、えっ、」


写真たてを弄ってた服部が、写真たてを壊した。
…何してんだオメー。


「ん?なんや写真2枚入ってんぞ?」


そう言って写真たてから写真を取り出すと、


「何やコレ?若い女と写ってる写真出てきよったで。…まぁさかこの町長浮気しとったんとちゃうやろか?」
「違う違う!その人が町長の1人娘の美弥子お嬢さんだよ。奥さんに似て色白で気立てが良くて誰が射止めるか島中の評判だったらしいよ?…まさか5年前短大在学中に誘拐されて行方知れずになるなんて思わなかったからねぇ…」
「あんた確か九州のテレビ局から来た言うてたけど、そのわりにはえらい詳しいなぁ?」
「ああ、いや。町長の家で家政婦をしていた松本良子さんと僕がいとこ同士でね。よく話を聞かされてたんだ」


…あれ?
家政婦、って、


「なぁ、その家政婦さんてひょっとして、」
「強盗事件の時に亡くなった…?」
「ああ。4年前のあの事件で強盗グループの1人にね。いとこ同士と言えば、スタッフの池間くんも母親が町長の奥さんと姉妹で、お嬢さんとはいとこ同士だと言ってたよ?」
「ねぇ、この写真の後ろに写ってるお城って見たことないけどどこのお城?」
「あぁ!それはお城じゃなくて町長の家だよ!大きな屋敷でねぇ。良子さんの話だと、その屋敷が建った頃美弥子お嬢さんはとても喜んでいたそうだよ。お城のお姫さまになったみたい、ってね」


…お姫さま、か。
あれ?


「ほんならやっぱり柱に刻んであったあの姫っちゅうんは、」
「お、お嬢様のこと!?」
「変な文字ならこの柱にも書いてあるよ。…きっとこれそのお嬢さまが書いた字なんじゃないかなぁ?」
「「えっ!?」」


柱にクレヨンみたいなもので書いてある文字…。
ちよにい、かあちゃん、わたし…背比べしたのか?でもちよにいって…。


「でも『かあちゃん』てお母さんのことでしょ?お嬢さまなのに庶民的って言うか…」
「いや…。『かあちゃん』はお母さんのことじゃないみたいだよ?ほら見てよ。消えかけてるけどこの部屋の扉に同じ色のクレヨンで書いてあるでしょ?『ママのおへや』って」


そう…『かあちゃん』=母親ではない。
お嬢さまと他に2人誰かがいた、ってこと。


「お嬢さんの学校の友達じゃないかなぁ?」
「違うよ!だってお嬢さまがこんなに小さいときにあんなに大きい友達がいるわけないもん!」
「そらそうやわ…」
「『かあちゃん』と『ちよにい』ならこっちの扉にも書いてあんぞ」


服部の言葉にその扉を見る。


「むこうの部屋が『ちよにい』の部屋でこっちが『かあちゃん』の部屋や。それだけやない。字の側に変な絵が描いてあんねん。『かあちゃん』の方は鳥で、『ちよにい』の方は…うなぎみたいやな?」
「…で、でもこんな暗い中で見る子供の絵って、」
「気色悪いなぁ…!」
「まぁ、とにかくこんな無人島の家に部屋があるっちゅうことは、『かあちゃん』も『ちよにい』もお嬢さまとしょっちゅうここに来てた人間ちゅうこっちゃ。こら、救助船が来て向こうの島に帰ったら町長に話聞いてこの2人が何者か教えてもらわなあかんみたいやなぁ」


…確かに。
謎はどんなに小さなものでも、一見関係ないようにも見えることさえ、1つずつクリアにしていかなければならない。
この事件に、関係あるかもしれねぇし、な。
その時、


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


夜の闇を切り裂くような悲鳴が響き渡った。


「な、何!?今の声っ!!?」
「久米くん、じゃないか?」
「に、2階でなんかあったんと違う!?」


まさか、犯人が!?
そう脳が思い至った直後、2階に向けて駆け出していた。

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bkm

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