キミのおこした奇跡side S


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孤島の姫と龍宮城


不審者探索


「碇だと?」


見た目でわかっちゃいたけど、案の定電気も通ってなくロウソクの灯りだけという状況の中、服部が海に潜って発見した碇について話した。


「鎖が切れてしもて錆び付いた、船の碇がな」
「それって、1年前にここで死んだ人の船の碇、かなぁ?」
「そやそや!船でこの島に辿り着いてこの家ん中で台風が過ぎんの待ってたけど、碇の鎖が切れて船だけ流されしもてんて!」
「ちゃうちゃう!」
「「え?」」
「碇には貝や海草がびっちりひっついてたから、あら海に沈められてから4〜5年は経ってんで」


4〜5年前に沈んだ碇、か…。


「そう言えばそのくらい前だったよな?町長の家で例の事件が立て続けに起こったのは?」
「なぁに?例の事件て」


俺の問いにチャラ男Aのロン毛(池間さん)が昔話を始めた。


「最初は5年前、町長の1人娘の美弥子お嬢様が誘拐されたんだ。その1年後今度は町長の家に強盗グループが押し入って、家宝の金の屏風が盗まれたんだ。犯人からの電話を取った町長や執事の話だと、誘拐犯も強盗犯も同一グループ、って話だがな」


誘拐と、強盗…。


「そ、それで?その犯人は!?」


あおいのその問いに答えたのはチャラ男Bの茶髪(久米さん)だった。


「お嬢様の身代金も屏風の代償金も、町長が突っぱねたから捕まらずじまいでお嬢様も屏風も行方知れずって話だぜ」


屏風の代償金ならまだしも、娘(しかも1人娘)の身代金を突っぱねた?
離れ小島に別荘まで持ってる人間が、か?


「町長としては踏んだり蹴ったりだよ。誘拐事件はちょうど奥さんを亡くした頃らしいし、強盗グループに家政婦が1人殺されて、執事は怖がって辞めてしまったらしいし、町長は身代金をケチる冷血漢だと陰口を叩かれた上に、自分が所有しているこの無人島で餓死した男の遺体と柱に刻まれた妙な文字が見つかって、オマケに今回のこの殺人事件だ。本当にグソーの使いに魅入られてしまったんじゃないかと思ってしまうよ…」


グソーの使い、ねぇ…。


「なぁ、確かその柱に刻まれてた字って、姫眠るるは 甲なりて 乙にあらず、やったやん?」
「う、うん」
「その姫って、誘拐されたお嬢様のことなんと違う?」
「…えっ!?じ、じゃあそのお嬢様はもう殺されていてこの島のどこかに埋められてるの!?」
「そうや…。あの世の使いになって化けて出てきて平良さんの首を!」


ドスッ!


その時テーブルの端でナイフが突き刺さる音が響いた。
何だ!?


「あの世の使いにビビッてんなら、そのナイフを使いな。昔話だと、女はマブイを口から抜かれねぇようにシーグ(小刀)を口に咥えてたって言うからよ。まぁそれに護身用にもなるしな」


そう言って戸棚を空けた大東さん。


「ほぅ、コイツはおもしれぇ!見てみな?この湯のみ茶碗。誰かが灰皿変わりに使ってたようだぜ?」


…タバコの銘柄は様々だが、確かに「誰か」が灰皿変わりに使っていたようだ。
オマケに火を消すためにためた底の水がまだ乾いていない。
でも…。


「俺らがこの島に来る前に、得体の知れん連中が集まって何かをしてたっちゅーこっちゃな」
「ああ。1人や2人じゃないかもしれねぇな。女1人を殺し、この島のどこかで息を潜めてる…。グソーの使いって奴はよ」


確かに、このタバコを見る限りだと複数犯の可能性もある、か…。


「ひょっとしたらどっかで狙ってるかもしれねぇぜ?俺たち全員のマブイをなぁ!」
「そ、そんな…!」
「ほんならもうこの家にいてるかもしれへん
やん!」
「それはないよ!みんなで誰もいないの確かめただろ?」
「でもこの家、いろんなところの窓ガラスが割れてたから、」
「俺らがここで話し込んでる間にこっそり忍び込むのは簡単やろなぁ!」
「…じゃあ、もう1度みんなで手分けして調べてみよう」


そう言ったのはディレクターの竹富さん。
ま、その方が無難、てところか。


「ほんなら久米さんと池間さんと大東さんは2階を頼むわ。俺らは竹富さんと1階を調べるから」
「そ、そうだね。女の子が2人もいるのに男がキミ1人じゃ襲われた時危ないから」
「はぁ?何言うてんねん」


あおいはまぁ仕方ねぇとしても、剣道有段者の服部と合気道有段者の和葉。
俺はまぁ、キック力増強シューズがねぇけどそこそこのキック力はあるし?
竹富さん、守ってもらうのは1番見た目弱そうなアンタの方だよ…。
そんな思いを胸に、1階見回りチームと2階見回りチームに分かれてもう1度屋敷内を調べることにした。

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bkm

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