キミのおこした奇跡side S


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孤島の姫と龍宮城


必要な手段


「お!あれやあれ!」


クルーザーで走ることしばし。
服部の声で窓の外を見ると


「アレが、身元不明の遺体があったっちゅー島や!通称鬼亀島」
「鬼亀島ぁ?」
「見てみぃ!島の先っちょが亀の頭みたいになってるやろ?」
「はぁ…」


亀の頭、ねぇ…。


「んで?なんでそんなところでオッチャンとオメーが推理対決なんだよ?」
「まぁ一種の島興しみたいなもんやな!さっき俺らがおった島の金城っちゅー町長の家が誘拐やら強盗やらに合ぅてしもうてなぁ。島の評判が悪ぅなって観光客が減ってきたさかい、テレビ局呼んでイメージアップしよっちゅー話や!あの島もその町長の島らしいしなぁ!」


遺体の謎を解いても、イメージアップにゃならねぇ気もするが…。


「まぁテレビ局言うても?ちゃんとしたスタッフはさっきの竹富さんくらいで、後はこの辺の海に詳しい地元の連中みたいやけどなぁ」
「ねぇ、キミ達どこから来たの?」


その声にチラッと目をやると、あおいと和葉が知らない男に絡まれていた。


「東京?」
「あ、はい」
「私は大阪!」
「じゃあ明日の撮影が終わったら一緒に潜ろうよ」
「俺ら地元だから良いポイントたくさん知ってんだ!」
「あかんあかんあかん!」
「「え?」」


何が一緒に潜ろうだ、ふざけんじゃねーよ!
誰がオメーらと潜るかってんだ!
そう思った俺の心の声を、服部が見事に代弁してくれた。


「今日も明日も明後日も、予定がぱんぱんに詰まってまんねん!チューブ加えてペンギンみたいに足ひれつけてお前らとノンキに海でお魚さんごっこしてる暇ないんじゃボケェ!」
「なんだと!?その子、お前のなんなんだよ!」
「よー聞いてくれはりました!コイツは俺のなぁ、…全っ然関係ないタダの幼馴染で、やかましぃてしゃーない女やから絶対手ぇ出すなよ!?」


…なんだその日本語。
そこでそう言うかフツー?
…まぁ良いけど、他人のことだし。
問題はこっち!
あおいと目が合ったからこっちに来るように手招きした。
少し腰を屈めて俺に耳を傾けるあおい。
だーれがあんっな頭軽そうなヤロー共に近づけさせるかってんだ!


「あのね、あおい姉ちゃんて、泳げないんでしょ?」
「え?う、うん…、それが何?」
「泳げない人はダイビングしたらボンベが重くて上がって来れないなんだよ?」
「………えっ!?」
「ボンベにいーっぱい酸素入れても、それが重くて海面に上がって来れないの。あのお兄さんたちそんなに親切な感じじゃないからあおい姉ちゃん助けてくれないと思うよ?だから一緒に行かない方がいいんじゃない?」
「…ほ、ほんと?」
「うん?」
「泳げないと酸素ボンベつけててもダメなの!?」


すでに若干涙目のあおい。
…だからオメーは園子に騙されんだよ。
俺のは騙してんじゃなくてまぁ…、必要な自己防衛手段、って奴だ。


「ボンベが重しになって上がってこれないどころか海の底に、沈んじゃうんだよ?そして酸素がなくなって息ができなくなり、ボンベを捨ててもがくけど泳げないから全然海面に上がれなくて誰にも見つかることなく、1人冷たくなるんだ。…あおい姉ちゃんは溺死体、見たことある?」
「……わ、私っ!」


かかったな。


「行かないよね?」
「う、うん!」
「じゃあ僕から離れちゃダメだよ?」
「うん」


コナンくんもいなくならないでね?と念を押された。
コレで撮影終わってもあんニャロー共についていくことはねぇだろ。


「今売り出し中の高校生探偵、毛利小五郎に挑む、ってな!」


俺とあおいが話していた間、服部の方も話が進んでいたようだ。
…どっちが挑まれてんだかわかんねぇけどな、実際。


「どーでもいいが、さっさとやること済ませて切り上げようぜ?ここらじゃ日が暮れるとグソーの使いがマブイを取りにくるって言うしよ!な?船長」
「…グソーの使いに、」
「マブイを取られる?」
「グソーはあの世、マブイは魂のこと。沖縄に伝わる昔話だよ。…女の人が夜なべして機を織ってると」
「わ!?」
「死に装束を纏ったあの世の使いが水辺から音もなくやってきて…、魂を吸い取る、ってね」


男たちの話の途中で引っ張られたと思ったら、身を屈めながら俺の隣にいたあおいが腕を引っ張ってくっついてきた。
いやうん。
蘭もこの手の話し丸っきりダメだし、あおいのこの態度はわかるんだ。
わかるんだが、俺の腕にしがみついてきてるもんだから、左腕がちょうど谷間に挟まれて俺腕つりそうなんだけど…!
だって下手に動いてオメー、へんなとこ触ったらそれこそ問題でっ…!
なんて思ったら余計腕に変な力入ってマジでつるっ…!!


「ちょっと止めてよ!島に着いたら一泳ぎしようと思ってたのに!」


その一言にため息を吐きながらあおいから解放された。
上腕にまだ感触が…。


「白やな」


なんて思っていたら、服部が俺の隣に来てぼそりと呟いた。


「あの姉ちゃんの水着、絶対白のハイレグやで!」
「あ、そう…」


服部の相変わらずな態度に呆れながらも、つりかけた腕を擦りつつ、島到着を待った。

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bkm

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