キミのおこした奇跡side S


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夏祭り


真夏の事件


「終わっちゃったねー!」
「みんな、ゴミは持って帰らなきゃだからね?」
「「「はーい!」」」


杯戸の花火はここら辺じゃでけぇ方だと言っても隅田川の花火ほど打ちあがるわけでもなく。
ほどよく打ちあがり、良い頃合で終わった。
主に元太が食い散らかした後を片づけて、神社の神主さんにお礼を行ってみんなで駅に向かう。
…それをまとめてんのがあおいってのが不思議っちゃー不思議な気もするけど、でも元太たちもよく言うことを聞いて俺や灰原が言うよりもテキパキと動いている気がする。


「うわぁ…。やっぱり駅混んでるねぇ…」


片付けも終わって駅に向かったら、そりゃーもう人、人、人!
…わかっちゃいたけど、これで電車はほんとツレェ。


「あおい姉ちゃん、はぐれないようにね」
「あ、ああ、うん。みんなも次のにちゃんと乗ってね?」
「「「はーい!」」」


ホームに入ってきた電車に雪崩れ込む人だかり。
なんとかあおいの手を掴んではぐれないようにはしたものの、灰原たちとは離れたようだった。
…でもまぁ、あっちはあっちで固まって乗ったみてぇだし大丈夫だろ。
それにしても暑ぃなぁ…。
弱冷房車か?
そもそもこの背丈だと満員電車って窒息できんだけど!
いつの間にかあおいとも手離れちまって(すぐそばにいるけど)
早く着かねぇかな…。
ほんっと、あつ


クイッ


暑い暑い、とただひたすら米花町に着くことを考えていたら、右袖を誰かに引っ張られる感触があった。
見るとその手の主はやっぱりあおいで。
手、肩、顔と、視線をあげて行くとあおいは俺の方を見ていなくて。
どこか赤い顔に涙目で、前を見ながらクチビルを噛んでいた。
その表情を見て直感的にあおいの後ろを見ると、明らかに挙動不審の男がいた。


「テメー何やってんだよ!?次の駅で降りろ!!」


相手の男の手首を掴む。
そう言った俺を泣きそうな顔で見ていたあおいが目の端に映った。


「コ、コナンくんどうしたんです!?」
「オメーらは先帰ってろ!」
「え!?あ、ちょ、」


電車の中に入った時同様、雪崩れ込むように外に出た俺を少し離れたところで見ていた光彦たちが焦った声を出していた。
あっちは灰原がいるから大丈夫だ。
問題はこの男!


「じゃあオッサン、駅員呼んで、うわっ!?」


「犯人」は俺を思い切り突き飛ばして階段を駆け上がっていく。
…ガキだと思って舐めんじゃねーよっ!!


「テメー待ちやが」
「置いてかないでっ!!」
「うわぁ!!?」


後に続いて駆け出そうとした俺に抱きついてきたあおい。
その勢いで思わずホームに倒れこんだ。


「ひ、1人にしないで…!」


いつからそうだったのかわかんねぇけど。
電車の中で「泣きそう」な顔してたあおいははっきりと泣いていた。


「わ、私っ!痴漢なんては、初めっ」
「うん…」
「た、助けて、って、思ったのにっ!声、出な…!」
「うん」
「すっごく怖かった…!!」
「…うん」


あとは「コナン」に抱きつきながらわんわん泣きじゃくってて。
なに喋ってんだかわからなかったけど、「俺」にしがみついてきたその強さが今を物語っていた。


「…大丈夫だよ」


オメーは、


「あおい姉ちゃんは、」


俺が、


「僕が、」


必ず


「守るから」


そう言って背中をぽんぽんと叩くと、うんうんと小さく頷いているのがわかる。
…もし「俺」が「俺」のままだったらこんな思い絶対させねぇのに。
今「工藤新一」の姿であったなら、こうなる前に、守ってやれていたのに…!
あの男も逃がさずボッコボコにしていたのに!
「俺」が「俺」であったのなら…!
自分の中で言い知れないほどの後悔が入り乱れる。
そんな俺の思いすら包み込むように、優しい桜の香が鼻を擽った。

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bkm

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