キミのおこした奇跡side S


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どっちの推理ショー


勝負の行方


「犯人はこの事務所内のこと詳しゅー知ってて、社長と顔見知りやって可能性が高ぉなったな」


鑑識の結果、ビデオカメラに社長の血が付着していたことで、社長が縛られビデオカメラで監視されていたことがわかった。
…顔見知りの犯行、か。
となると怪しいのは例の遺体発見時いた4人の社員。


「その4人なら今高木くんが、」
「目暮警部!社員4人のアリバイ聞いてきました!」
「ほんであったんか?アリバイ」
「4人ともデザイナーで会社の経理も担当している愛甲奈央さんは犯行時刻の6月29日午後5時頃1人で釣りに出かけていて、営業を担当している波佐見淳さんは自宅でビデオ鑑賞。企画を担当している中紙功男さんは競馬場へ。副社長の岩富創さんはゴルフトーナメントの決勝ラウンドを見に行っていたそうです」


アリバイ立証が出来そうな人がいねぇな…。


「今千葉がウラを取ってますがアリバイ立証が出来そうな人が1人もいないので…」


…裏?
まてよ、もしそうだったとしたら、あの積み木のダイイングメッセージは…あっ!
…こんなことに気づかなかったとは、な。
服部の方をチラッと見るとコイツも「何か」に気づいたような表情を見せた。
この勝負、決まったな…。
でも、


−今回の推理勝負、和葉ちゃんに勝たせてあげたいんだ。…和葉ちゃん、私たちと宝塚に行くのすっごく楽しみにしてたみたいただから…−


そう言って「お願い」してきたあおいの姿が頭に浮かぶ。
別に和葉を勝たせたいわけじゃなく、俺は…。
でもなー、そうすっとこの色黒がうるせぇし、どーすっかなぁ…。


「おい、服部。オメーもわかったんだろ?このダイイングメッセージの本当の意味」
「いや。さっぱりや!」
「え?」
「だいたいなんでインクのついた4つの積み木だけがないんや?これが写真やのぉてほんまの積み木やったら、こうやってかざして裏の字も見えて何かわかるかもしれへんのに!」


そう言って写真をかざす服部。
…何してんだ、コイツ?


「まぁ、写真の裏見ても、積み木の裏は見えへんけどな!」


そう言いながら和葉の方にチラッと視線を走らせた服部。
…そうか…。
コイツー、結局オメーも和葉に勝たせてやりてぇんじゃねーかよ!
このいい格好しぃが!


「でもさぁ、殺害されたこの社長さん、すっごく苦労して積み木にインクをつけたみたいだね?だって、後ろに縛られた手で、溝になってる積み木の字を指でなぞって、どの字にインクをつけるか決めてたんでしょう?この積み木って全部違う字だし、動物の絵が入ってたりするから僕だったらこんがらがって間違えちゃうよ!これが積み木じゃなく、将棋の駒だったら裏の字が決まってるからインクをつけやすいのにね!」


そう言う俺を一瞬驚いた顔で見た服部。
バーロォ、お前のその三文芝居につきあってやるってんだよ!



「アホ!将棋の駒やったら余計ややこしいやんけ!社長が残そ思た字が、インクついた字か、インクついてへん字か、わからへんで?」
「あ、そっかぁ…」
「そうや。その字にインクつけたんやのぉて、床に零れたインクにその駒を置いただけかもしれへんしなぁ!」


その服部の言葉を聞いて和葉は何かを思いついたらしい。
あおいはと言うと…、アイツはこの推理っつーかある種の数学の問題に向かねぇもんな…。
明らかに私わかりません!て顔していた。
そりゃそうだ。
オメーがメモも取らずにあっさりこの問題解ける頭持ってたら俺は苦労してねぇよ。


「それで社長を発見したその4人の社員、社長を殺害する動機はなかったのかね?」


あおいはまぁ…、和葉に任せるとして。
和葉の推理の「抜け」を補えるようにしとかねぇと、な。
高木刑事の話を聞くと、発見した4人、誰にでも動機はあるようだったが、ダイイングメッセージはあの人を指していた…。
後はその立証、だけどその前に…


「おい、工藤。気ついたか?」
「ああ…。この部屋の奇妙な違和感だろ?でも、これだけじゃねぇんだよな…」
「そうやねん。あともう1こ、なんかが引っかかってんねん!」


そう。
何かが…、


「ええ。そのカレンダーは特にお気に入りらしく、終わった月のカレンダーも保管していたそうです」


…そう、か!
じゃあ犯人は…


「服部。オメー買ったか?あの小説」
「ああ。おかんが朝1番で買ぅてくれたで?」


なら後は、実際に4人の発見者に事情聴取、ってことで来てもらえば、犯人は断定できる。
警部の働きかけで、遺体発見者の4人が現場にやってきた。
その時のことを1人ずつ話始める。


「せやせや。そこのカレンダー、いつもちぎってんのは社長か?」


そう言ってカレンダー前に並ぶ4人を見る。
…この身長、覚えておいて、と。


「ねぇ。そのカレンダーに予定を書き込んでいるのも社長さんだったの?」
「ああ。来週の日曜日は久しぶりに会社のみんなでゴルフをやる予定だったんだが」
「…まぁええわ。俺らちょっと探し物してくるからテキトーに話繋げといてくれや」


そう言って隣室に入っていく服部についていく。
後は証拠だ。


「よっしゃ。見つけんで」
「ああ。社長の死角に何故か置かれたビデオカメラと、縛られていたその位置と机の上の奇妙な違和感」
「犯人の着ていたコートについていた擦れた返り血。容疑者4人のけったいな集めもん。ほんで、社長の残したダイイングメッセージ」
「そう。後はアレさえ見つかれば」
「この謎、1本に繋がんで!」


そしてアレはほぼ間違いなく、この部屋にある。
服部と2人手分けして部屋の中を探す。
すると、


「コレや。…あったでぇ、薄なってるけど血拭いた跡が残ってんで」


服部が見つけたカレンダーの血痕を見る。
…これで決まり、だな。
そして服部と隣の部屋に戻ると、


「ダイイングメッセージは『い』『み』『と』『わ』になんねん!」


和葉が与えられたヒントから真犯人のトラップ−岩富副社長の名を示したダイイングメッセージ−に辿り着いたところだった。
…あのヒントで辿り着けたのは、さすがってところだよな。
チラッとあおいを見ると、目きらっきらさせて和葉を見ていた。
…それでこっからどう誘導するか、だけど、


「間違ぅてへん。その『い』『わ』『と』『み』の4つのメッセージは、正真正銘社長が殺害前に残したダイイングメッセージや」


俺が悩んでいる間にも服部が話し始めた。


「そんなんあって当たり前や!岩富さんは犯人とちゃうんやから!」


…まぁ、結局はコイツと和葉の対決だし、コイツに任せるかなぁ。


「確かに言うたけど、そのメッセージがほんまに合ぅてるとは言うてへんで?ほれ、言うたやろ?社長が積み木にメッセージ残した時のこと!思い出してみぃや!」


そう言う服部の言葉にその場にいた者がその場面を思い返す。
事件解決まで、あと少し。

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bkm

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