■炸裂…!
「社長の遺体の周りに転がっていたんだよ。この4つの積み木がな」
俺たちが言った「おかしなこと」に対して警部は写真を出してきた。
…積み木?
「この4つだけ何故か社長の指紋とインクがついていたんだよ」
「インク?」
「インクがついていた面を並べてみると…、」
そう言って1枚1枚警部がテーブルに写真を並べる。
「そして最後がコレだ」
「!?」
「「お、おもちゃ…?」」
おもちゃ、だと?
「なぁ、警部はん。この4つの積み木が落ちていた位置、ちゃんと教えてくれへんか?」
「ああ…。これが遺体発見当時の写真だよ」
「…じゃあこの人が?」
「ああ。撲殺された辻谷社長だよ。4つの積み木が落ちていたのは社長の左の積み木の山の中。そして何故か『お』『も』『ち』『や』の4つに社長の指紋とインクがついていたわけだ」
「ついていたインクは机の上から社長の背中辺りに零れていたこのインクでしょうが、問題は、誰がインクを積み木につけたのか、ですな?」
そう。
犯人がつけた可能性も捨てられない。
「ねぇ、本当にこの4つの積み木にだけ社長さんの指紋がついてたの?」
「ああいや、そこに転がっている他の積み木にもついていたんだが、この4つだけ、いたるところにべたべたついていたんだよ。6面全部に。溝になっているこの文字の中までな」
と、いうことは、この積み木は社長のダイイングメッセージ、か。
俺の考えを服部がそのままオッチャンに披露する。
その間、このダイイングメッセージを考える。
おもちや、おもちゃ、なんだ?何が言いたかったんだ…?
「もしかして、ここにあるおもちゃに何かヒントがある、とか?」
「いや、特に変わったおもちゃはなかったよ」
「ほんまやろな?」
「ああ。一応その4つの積み木がダイイングメッセージの線もあると考えてここの事務所内はくまなく調べたがな」
「じゃあ、もしかしたら別の意味があるかもしれないね」
「別の意味?」
「4つの文字の組み合わせが他にもあるんと違う?」
「…ほんで?他に見つかったもんは?」
「ああ。…凶器のゴルフクラブと、犯人が犯行時着用していたと思われる社長の返り血がついた皮のコートだけだよ。…だが、ゴルフクラブもコートも社長の所有物でこの2つからは犯人は割り出せなかったよ。しかしわからんのはなんで犯人がそのコートを着ていたか、だ」
「んー?この返り血、左肩んとこだけ薄なってるで。なんかに擦れたんや、これ…」
「ああ、それも謎の1つだよ。この事務所のどこを探しても、その血が触れたと思われる箇所が見つからないんだ」
左肩の擦れた返り血、か…。
「ねぇ!血って言えば、ココにおかしな血が残ってるよ?」
遺体があった場所に広がる血。
よく見ないとわからないが、先端が途切れている箇所がある。
ここに何かが置いてあった可能性がある。
正面にはテレビ…。
「お、おい!勝手に触っちゃいかんよ!この机の上は犯行当時のまま保存してあるんだから!」
…あれ?
今一瞬、何かが引っかかったような…?
「外部入力になってんで」
俺の一瞬の思いを掻き消すかのようにリモコンのスイッチを押した服部。
…てことは、ここに置いてあったのは、ビデオカメラかもしれねぇ。
でも妙だな。
ここにビデオカメラが置いてあったとしたら、なんで犯人は犯行後に移動させたんだ?
カメラをテレビに繋いで縄で縛った社長を監視するために置いたとしても、犯行後にわざわざ持ち去る理由はない。
それに、さっきからなんか引っかかってんだよな…。
この部屋、なんか作為的な奇妙な違和感を、
「ねぇ、コナンくん?」
「え?…なぁに、あおい姉ちゃん」
振り返った俺にあおいは膝を曲げて視線を合わせてきた。
「ちょっと、お願いがあるんだけど、」
「え?」
あおいが俺に「お願い」?
「あ、あのね。こんなことお願いするのはズルイかもしれないけど、今回の推理勝負、和葉ちゃんに勝たせてあげたいんだ。…和葉ちゃん、私たちと宝塚に行くのすっごく楽しみにしてたみたいただから…」
申し訳なさそうに、伺うように俺を見てくるあおい。
「だからね、今度何かわかったら、こっそり教えてくれない、かなぁ?ほ、ほら!それをおじさんに言えば事件解決するかもしれないし…!」
ぱちん、と、胸の前で手を合わせて、拝むような格好をした。
「ね?お願い!」
思い返せば、俺コイツに今までロクなお願いされたことねーんだけど(宿題見せろだ、星の砂集めろだとかばっかで!あ、でも一緒に寝てくれって例外もあったな)
しかもそういう時って大概俺から目逸らして「他に頼める人いないからお願いしてます!」って感じだったんだけど。
なんと言うか…。
こういう風に俺の目を見ながら………か、可愛く?お願いされるなんて初めてなわけで。
「…ダメ?」
少し首を傾げて聞いてくるあおいに対して「ダメ」なんて選択肢、あるわけ
「ぶっぶっぶー!!」
げ。
「このボウズはこっちのチームや!ちょっかい出さんといてくれはりますか?」
そう言って俺を担ぎあげた服部に隣の部屋に連れて行かれた…。
「コラ!お前まさか本当に男の友情捨てて女に走る気とちゃうやろな?」
「友情って、オメーが勝手に俺を組ませたんじゃねーか!」
もう2度とあんな風にお願いしてくるあおいが見れないかもしれねーってのにっ!!
「んー?どの口が言うとんのや?今は小学1年生のコナンくん?」
「…ってぇな!つねんじゃねーよっ!!」
「だいたいなんや自分!」
「何がだよ!?」
「鼻の下伸ばしながら頬染めよって、どこの小学生がそないな顔しよんねん!!もっと顔の筋肉引き締めんかいこのムッツリスケベっ!!」
「べ、別に俺はムッツリなわけじゃねーしっ!ただたまたま今回はなんて言うか、」
「まぁなんでもええわ!…ええか?何がなんでもこの勝負勝って、甲子園行ったんで!!」
俺の若干言い訳じみた言葉を全くスルーして服部が甲子園への決意を再確認した。
なんちゅーやっちゃ…!
そんな服部の思惑通り、推理対決は間もなく勝敗が決まる。
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bkm