キミのおこした奇跡side S


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どっちの推理ショー


甲子園VS宝塚


「ただいまー!」
「「「「おかーえりー!」」」」
「…えっ!!?」


買ったばかりの本を手にこの後の至福の時に思いを馳せていたもんだから、目の前の人物の姿に我が目を疑った。


「よっしゃ、ボウズも帰ってきたしどっかうまいもんでも食いに行こか?」
「そうだなー。まだ時間も早いし、ちょっと遠くまで足を延ばしてみるか?」
「なんや?何が食いたいねん?言うてみぃや、ボウズ」


何が食いてぇじゃねぇよっ!!
コイツ何しに来てんだよっ!!


「パスッ!!」
「パス?パスタ?ああ!イタ飯か!」
「…へ!?」


今の言葉でそう取るのか!?


「そうだ!杯戸町におしゃれなパスタ屋さんができたんだって!」
「ほんならそこにしよう!」
「そうだなぁ、杯戸町なら近いしなぁ!」
「よっしゃ!決まりやな!」


おい、俺の意見は無視なのか!?
部活のため抜けた蘭と別れ、人の意見を無視する強引な色黒先頭(厳密にはパスタ屋知ってるあおい先頭)に、杯戸町に向かった。
…俺の予定は?


「ボウズは何食うねん?」
「なんでもいー」
「ほな肉と野菜バランスよぉ入っとるコレにしぃや!」


そう言って指さされたのは夏野菜たっぷりベーコントマトソースパスタ。
…もう好きにしてくれ。
出されたパスタは皿いっぱいにコレでもか!ってくらい野菜とベーコンが乗っていた。


「コレ食べて早ぉ大きくなるんやでー!」


あははー!と笑う服部を睨むものの、我関せずで自分はボンゴレロッソを食べていた。
コイツのせいで俺の今日の予定は…!
でもここのパスタ美味ぇからまぁいいけどさ。


「ふぅー!ごちそうさん!」


食うだけ食って、すっげぇ機嫌良さそうな服部。
そりゃオメー、こんな美味ぇパスタあの量食ったらそんな顔になるだろ。
でも肝心なこと忘れてねぇか?


「で?何しに来たの?和葉姉ちゃんと、この色黒男!」
「あ?こ、こら!ちょお待て!なんやその態度は!」
「いっきなりアポなしで来やがって!こっちにはこっちの予定があるってのによー!」


お陰で2度読みの予定がパァじゃねぇかよ!


「そうやそうや、予定や!お前らとスケジュール相談したろ、思てな!電話でも良かったんやけど、何や聞いたら和葉がすごい剣幕であおいちゃんに会いに行くでて言うからほんなら俺もボウズに会いに行こ思て来たったんやで!」
「別にそない剣幕やなかったやん!ただ早ぉ東京行きたいなぁ、て思ただけやろ!」
「和葉姉ちゃんはなんで東京に来たの?」
「うん!あおいちゃんたちとまた大阪周りたいなぁ、思て!まだ見せてへん大阪のいい所いーーっぱいあるから!」
「大阪の良いところって?」
「そらもちろん!」
「大阪名物、」
「宝塚!」
「甲子園!!」


…どっちも兵庫県じゃねぇか。


「私!甲子園に行くなんてそんなん聞いてへんで!」
「俺も宝塚なんか寝耳に水や!」
「もー!言うたやんか!近所のおばちゃんにチケットもらう約束してるて!」
「そう言うたらなんやごちゃごちゃ言うとったなぁ…」
「て、言うか、両方行くってのはダメなの?」
「そやな!俺がみんなと観たいのは高校野球の決勝戦だけやし!」


あおいの提案で一見落着。
かと思いきや、


「あかん、両方は無理や…」
「おい、そのオバハンてあの5人連れの、」
「う、ん…」


明らかに和葉が落胆してる。


「どうゆうこと?」
「近所でも有名な宝塚好きのオバハン連中でなぁ。1年間貯めた金注ぎこんで夏休みのある期間中ぶっ続けで宝塚見てるらしいんやけど、1日だけせっかく買おたチケット使われへん日があるんやて」
「ま、まさかそれが、」
「甲子園の決勝戦!?」
「うん…。なんでもその5人が勤めてはる会社の社長さんが高校野球好きで、決勝戦は毎年社員全員で見ることになっとって、その日の宝塚のチケットだけ譲ってもらうことになっとんねん…」


なるほどー?
甲子園は雨で日程がズレる場合があるから決勝の日だけ除いて買うってことが出来ないわけね。


「まぁ、しゃーないわ。ここは和葉が引いとけや」
「え?」
「宝塚やったら何べんも同じものやっとるけど、夏の甲子園の決勝は1年で1回きりの真剣勝負なんやからな!」
「何言うてんの!高校野球は後でニュースでも特番でもなんぼでも見れるやろ!」
「アホ!野球は生や!ニュースで結果だけ見てどないすんねん!」
「宝塚かて生が1番に決まってるやんかっ!宝塚のあんなええ席のチケット、普通の人やったら絶対手に入らへんねんで!なぁ、あおいちゃん?あおいちゃんも宝塚見たいやんな?」
「えっ!?…う、うん…?」
「こらボウズ!男やったら野球やろ?」
「そ、そうだね…」


ぶっちゃけどっちも興味ねぇ…。
国立でサッカーとかだったら間違いなく行くんだけどな…。


「じゃあこうしよう!推理勝負で勝った方のオススメの場所に行くってことで!」


オッチャンが投げかけたこの一言で、服部VS和葉の(結果はほぼ見えてる)推理対決が決まった。

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bkm

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