キミのおこした奇跡side S


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Start in my life


Start in my life.


「あー!もう止めだ止め!!」
「元太くん、後少しだよ!頑張ろうよ!」
「そうですよ!頑張りましょう!」
「そんなこと言ってもよぉ、わかんねーんだもん!」
「だからコナンくんや哀ちゃんが教えてくれるから!」


カレー食事会が終わった後で、勉強会が始まったけど、なかなか終わらない宿題にじれた元太が爆発した。
てゆうか勉強教えるメンバーの中にすでにあおいは入ってねぇんだな…。


「ねぇ元太くん、やっていかないと小林先生に怒られちゃうよ?」
「そうですよ!間違ってても最後までやっていきましょうよ!」
「なんだよ光彦!お前だってさっきからその問題できてねぇじゃねぇかよ!」
「そ、それはこれから、」
「俺はわかんねぇからもう止めてゲームすんだよ!」
「「元太くん…」」


いたよなぁ、昔も…。
勉強嫌でゲームに逃げる奴。
逃げたところでうちの学校は課題が加算されるだけなんだけどなぁ…。


「俺は勇気を持って宿題やってかねーんだ!ゲームするぞ!」
「おい、元太お前なぁ、」
「元太くん!」


「勇気を持って宿題やってかねぇ」ってなんだよ!
って思って声をあげたら、あおいとかぶってしまった。
チラッと見るとアイツも俺を見ていて、まぁ…、俺が言うよりはって思って譲った。


「あのねぇ、元太くん。『勇気』って言うのは身を奮い立たせる正義の言葉!…宿題が難しくてやっていかないってのは逃げてるだけで『勇気』とは言わないんだよ?」
「うっ…」
「同じ『勇気』って言葉を使うなら、間違ってもいいから、宿題していく方が勇気があってカッコいいと思うよ?」
「うーん…」
「コナンくんも哀ちゃんも教えてくれるって言うから、ね?やっていこう?」
「う、ん…」
「じ、じゃあ元太くんあと2問ですよ!頑張りましょう!」


…ほんっと、ガキの扱いだけは上手ぇんだよな。
その後、あおいの言葉のお陰か元太もなんとか宿題を終わらせることができた。


「もう8時過ぎてるよ?みんな帰れるの?」
「いやだなー!当たり前じゃないですか!」
「…でも心配だから、」
「歩美は俺と光彦が送って行くんだぜ!」
「そうだよ!博士の家に来た時はいっつも元太くんと光彦くんが送ってくれるの!」
「…なら、いいけど」
「それよりもあおいお姉さんは?」
「え?私?」
「暗いですけど大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫大丈夫!いっつもこのくらいの時間に帰ってたし!」
「僕が送って行くよ!」
「え?い、いいよ!コナンくんだって早く帰らないと蘭が心配するよ?」
「大丈夫大丈夫!僕が送っていくから帰ろう?」


バーロォ、オメー1人で帰せるかっての!
あおいが使ったお皿は片づけると言ってキッチンに向かっていった。
その間にさっき外出先から帰ってきた博士のところに向かった。


「夜間でも?」
「そー!事件が昼間だけとは限んねーだろ?充電しとけば夜間でも少しはターボ効くようにしててほしいんだ」
「なるほどのぉ…。まぁなんとかなるじゃろ!」
「悪ぃな」


ターボエンジンつきスケボーを夜間でもターボが効くようにしとかねぇといざって時に犯人に逃げられちまう。
…やっぱ俺もバイクの免許、って、小学生が取れるわけねーからなぁ…。
早く元の体に戻りてぇよ、チクショー。


「あおい姉ちゃん、準備できた?」
「うん!じゃあ哀ちゃんまたね?」
「ええ、さよなら…」


博士にスケボー預けてからキッチンに行くと灰原とあおいが何か話していて。
帰る時灰原に挨拶したあおいに灰原も挨拶し返してきた。
…あの灰原が!?


「あおい姉ちゃんて、」
「うん?」
「灰原と話するんだね…」


なんかすっげぇ意外だ。
いつの間に…。


「ああ、うん。みんなほどじゃないけど、少しずつ、ね」


ああ、コイツがガキの扱い上手いから…。
いやでも灰原なら「子供扱いしないでくれる?」とか言いそうだよな…。


「もう8月になっちゃうねー!お休みの時って時間経つのがあっという間!」


俺の考えなんか知る由もなく、あおいが大きく伸びをする。
…腹見えてんぞ、おい。


「そう言えば、」
「うん?」
「…あおい姉ちゃん香水つけてるの?」
「え!?」


体を動かしたことで鼻を掠めたあの匂い。
その俺の質問に、驚いたように声を裏返したあおい。


「べ、別に色気づいたわけじゃないんだよっ!」
「…僕何も言ってないけど」
「そ、そうだね…」


それは「工藤新一」が言った言葉だっつーの!


「香水じゃなくて、」
「うん?」
「千賀鈴さんがくれたお香なんだ」
「お香?」
「…この匂い、嫌い?」
「え?い、いや、良い匂いだと思う、よ?」
「…なら良かった!」


それだけ言ってあおいは鼻歌を唄い始めた。
…お香、ね。
そう言われてみれば匂いの元は首筋や手首ってより、服や髪からしてる気がする。
淡い淡い、桜の香が鼻を掠める。
…結局俺は、はっきり言葉を言うことから逃げてるのかもしれない。
言おうと思えば、…伝えようと思えば、何も「工藤新一」の姿で直接言うってことに、拘らなくてもいいんじゃねぇかって思う。
でも、


−今日も明日も明後日も、…1500年先も…側にいれたらいいなぁ、って人、いるよ−


アレは「俺」を指して言った言葉じゃないかもしれない。
けど、コイツと、もし1500年先も側にいれるのであれば。
いやでも、1500年先なんて生きてるわけねぇからまぁ…、人間の寿命の期間いっぱいに、もし側にいれるのならば、今コクる、コクらないってことに頭使うよりも先に今の俺に出来ること−1日も早く組織をぶっ潰して「工藤新一」としての生活を再開させること−をしていくしかねーよ、な。
それがあおい自身の身の安全にも繋がるわけだし。
1日も早く、「工藤新一」の姿であおいの隣を歩くためにも…。
なんて、どこからしくもないことを考えながら、淡い桜の香りとあおいの歌声に包まれながら真夏の夜が更けていった。

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bkm

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