キミのおこした奇跡side S


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人気者のイルカと深海のサメ


「あおいお姉さんお帰りなさーい!こっちに来て!」


そう言って歩美ちゃんがあおいを引っ張ってきた。
…コイツらぜってぇなんか企んでる。
なんだ?何をコソコソ話してたんだ?
そんな俺の思いとは裏腹に、あおいが持ってきた皿のお陰で、あっという間に食卓はカレーに包まれた。


「じゃあみんな用意できたよねー?」
「はい!出来ました!」
「おぅ!いいぜ!」
「じゃあじゃあ!第1回あおいお姉さんとご飯を食べ隊製作のカレーライス、お姉さん食べて!」


…は?
あおいとご飯が食べたい?
しかも第1回ってなんだ?


「食べたいじゃなく、食べ隊!」
「俺たちさっき話してたんだけどよー」
「今度からあおいさんと定期的にご飯を食べよう、って」
「な、なんで?」
「みんなで食べるときっと美味しいよ!」


なるほど。
あおいが1人って話から、定期的にメシ一緒に食うって発想が生まれたわけね。
…それには俺も賛成だ。


「美味しい!」
「ほんと!?」
「それ俺が作ったんだぜ!」
「元太くんはルーを溶かしただけじゃないですか!僕はジャガイモと切ったんです!」
「ママがね、はちみつを入れたら美味しいって言うからはちみつを入れたんだよ!」
「へぇ、みんなすごいね!すっごく美味しい!」
「「「えへへへー!」」」


あおいはコイツらに好かれてるし、あおいもコイツら好きみてぇだしな。
定期的にでも誰かと食うのは良いことだと思う。
…少なくともずっと1人きりの食事をするよりは。


「ごちそうさまでした!」
「…あおいお姉さん、あおいお姉さん!」
「うん?」
「歩美たち、お姉さんにお願いがあるの!」


…お願い?


「あおいお姉さんも探偵団の仲間になって!」


……………は?


「正確には仲間じゃなくてマネージャーです!」
「マ、マネージャー??」
「あおいさんを僕たち少年探偵団のマネージャーに任命して、僕たちの補佐をしてもらおう、と話し合いで決めたんです!」
「そ、そうなの?」
「でもよー、マネージャーって何すんだ?」
「例えばですね、僕たちのスケジュール管理とか、依頼の窓口になっていただき」


どこからどうツッコめばいいのかわかんねぇんだけど…。


「で、でもさぁ、ほらキミたち『少年探偵団』でしょ?だから私は大きいから入れな」
「大丈夫だぜ!姉ちゃんチビだから俺たちといても違和感ねーし!」
「ね?あおいお姉さん、ダメ?」
「え!?う、うーん…」
「みんなといればきっと楽しいよ!」
「そうだろうけど、」
「でしょ!?だからね!?」
「う、うん…?」
「「「やったー!!!」」」


ま、コイツらはコイツらであおいの心配してくれたんだろうし?
ガキの相手が嫌じゃねーんなら、なぁ?
…何より俺がいない放課後、他の男(特にクロバとかクロバとかクロバとか)とふらふら出かけられるより、こっちの方が俺的にはずっと助かる。


「じゃあじゃあ、お姉さんの分の探偵団バッチ作ってもらわなきゃね!」
「言っとくけどリーダーは俺だからな!」
「じゃあ少年探偵団の仲間として、これからは週に1回博士の家で一緒にご飯を食べるんですからね!」
「え?」
「今日はカレーだったけど、あおいお姉さん今度何がいい?」
「え、私?」
「うん!来週はあおいお姉さんの食べたいものを作ろう!」
「…みんな」
「「「え?」」」
「仲間に入れてくれてありがとう!」
「「「うん!!」」」


て、ことであおいも少年探偵団の仲間入り、ってわけだ。


「じゃあ早速」
「うん?」
「姉ちゃん勉強教えてくれよ!」


………はっ!!?


「お、おいお前ら、それだけはヤメテおけ!」
「あおいお姉さーん!こっちこっち!今日ここが宿題なの!」


…知らねぇぞ、俺。
そしてあおいが元太たち以上に参考書にかじりつきはじめた頃、灰原が俺の側に寄ってきた。


「…少し意外だったわ」
「あん?」
「あなたの彼女。…何の不自由も苦労も知らない、あの賑やかな彼女と同じタイプの人間かと思ったから」
「…ああ、親のことか」
「ずっといないってどのくらい?」
「…少なくとも中1で米花町に来る前からいねぇよ」
「そう…」


チラッと灰原を見ると、ただ黙ってあおいを見ていた。


「笑っているからと言って、孤独を知らないわけではない」
「え?」
「…人気者のイルカも深海のサメと一緒ね」
「は?」
「その心のうちは、本人にしかわからない。太陽の下飛び回るイルカにも、その心の中では深い闇が眠っているのかもしれない」
「…なんの話だ?」
「こっちのことよ。…それより気をつけることね。元々庇護欲を掻きたてられるタイプの彼女、そんな家庭の事情を知った男は、それこそ放っておかないと思うけど?」
「…」
「あら怖い。睨んでる暇あったらとりあえず今のライバルの小嶋くんや円谷くんから奪還してあげたら?彼女問題解けなくて困ってるみたいだし」


灰原はコーヒー入れてくるからと言ってリビングから消えていった。
…なんだぁ、イルカって?
でもまぁ、


−元々庇護欲を掻きたてられるタイプの彼女、そんな家庭の事情を知った男はそれこそ放っておかないと思うけど?−


そんな忠告されなくても、どーにかするっての!
唸りながら参考書と格闘してるあおいを見たら、小さなため息が出た。

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bkm

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