キミのおこした奇跡side S


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Start in my life


扉は開けるもの


「あのバカ、マジでどこの鍵かわかんねぇとか言わねぇよな?」


京都であおいに鍵を渡してから数日。
東京に戻って来てもあおいがその鍵を使う気配はなかった。
まぁ、イチがすっかり他の奴らにも尻尾振るようになったお陰で博士が苦もなく見てくれてるから使う必要ねぇっちゃねーんだけどな。
でもそれにしたって1回くらい、確認のために使ってもいいんじゃねーか?


「あー!あおいお姉さんいらっしゃい!」
「こんにちは歩美ちゃん!探偵団のみんなも来てるの?」
「うん!今日はみんなでカレーを作って食べよう!って材料持ってきてるの!」


そういや博士の話だと、灰原が住み始めたせいもあるけど、あおいが全然メシ食いに来ないって言ってた。
見る限り、灰原とそんな仲良いわけじゃねーから遠慮して来れないのかもしれない。
…それにこれはある意味チャンス?


「あおい姉ちゃんも一緒に食べて行かない?」
「コナンくん…。んー、どうしよっかなぁ…」
「にゃー」
「イチ!」


ペットっつーのは、どんなに他の人間に尻尾振るようになっても、主人が来たらその他大勢全てを忘れてそっちにすっ飛んで行くものだ。
イチも例外じゃなく、あっという間にあおいの胸に向かってダイブした。
…あのバカ猫後で覚えていやがれっ!
僅な苛立ちも合わさり、手渡された皿を豪快に割った。
…ま、博士には後で買って返せばいいだろ。


「あー!お皿割れちゃった!」
「コナンくん何してるんですかー!」


…ちょっと無理矢理感ある気もするけど、まぁ仕方ねぇよな?


「ごめんごめん、手滑っちゃって!」
「オメーどうすんだよー!皿なくなっちまってカレー食えねぇじゃねぇかよ!!」
「えー?わ、コナンくん6枚も割ったの!?」
「ごめんなさーい…」
「…怪我は?」
「それは大丈夫!」


あおいが俺に目線を合わせながら聞いてくる。
…コイツのこういうガキの扱い方、嫌いじゃねぇんだよな。


「おい、どーすんだよ!皿がねーと食えねぇじゃねぇか!」
「あ!じゃあさー、新一兄ちゃんの家から借りたら?」
「新一、ってお隣の工藤新一さん、ですか?」
「うん!あおい姉ちゃん鍵もってるって僕聞いたよ!」
「…えっ!?」


あおいが目飛び出るんじゃねぇかってくらい見開いて驚いているのがわかった。
…え、ほんとに気づいてなかったのか?


「新一兄ちゃん、あおい姉ちゃんだから鍵預けた、って言ってたしあおい姉ちゃんがお皿借りるくらい新一兄ちゃん許してくれると思うよ?」
「で、でもほんとに工藤くんちの鍵かどうかわかんな」
「僕ついて行こうか?」
「えっ!?」
「あおい姉ちゃんがもらった鍵、新一兄ちゃんちの鍵だと思うけど心配ならついて行こうか?」
「え!?…や、…う…は?」
「じゃあ行こう!あおい姉ちゃん!」
「あ、ち、ちょっと待ってっ!」
「…なに?」
「か、仮に工藤くんちの鍵でも…か、勝手に入ってお皿借りるとか、は、ちょっと…」


あー!もう!!
ごちゃごちゃとはっきりしねぇ奴だな!
俺がいいって言ってんだから鍵使えばいーだろうがっ!!


「新一兄ちゃんちの鍵持ってるのあおい姉ちゃんしかいないし」
「…え?」
「博士も持ってないからあおい姉ちゃんが借りに行ってくれないと僕たちカレー食べれないんだけど!」
「蘭、は?」
「うん?」
「蘭は?…工藤くんちの合鍵持ってるって教えてくれたのコナンくんだよ?」


たまにコイツが見せるこういう言動。
今回の合鍵のこと、誤解を招いたのは俺だ。
でもコイツやっぱり「俺は蘭が好き」って思ってんじゃねぇか?


「イチがなつかないから蘭姉ちゃんに頼んでた世話、断ったって言ってたよ?その時に鍵返してもらったって。だからあおい姉ちゃんがさ、」


ぎゅるるるるー…


「俺腹減ったー…」
「元太くん、おっきいお腹の音鳴りましたねー!」
「だってよー、歩美がカレー作ってくれる、って言うから昼食わずに来たんだぜ?もう腹減って動けねーよ!」
「…あおいお姉さん、歩美からもお願い。新一お兄さんちからお皿借りてきて…」
「歩美ちゃん…」
「じゃないと元太くんが倒れちゃう!」
「…わ、わかった、借りてくる」
「ありがとう!あおいお姉さん!良かったね、元太くん!」
「…僕ついて行こうか?」
「だ、大丈夫!で、でもお皿借りるだけだからね!」
「うん?」
「すぐ帰ってくるから!」


そう言ってあおいが博士の家を出て工藤家の門をくぐる。
…何躊躇ってんだよ!
早く使えっ!
玄関前でしばらく立ち尽くしていたあおいがようやく扉に手をかけ、中に消えていった。
…ふぅ。
これでアイツもあの鍵が俺が渡した俺んちの鍵だって気づいただろうし、後は「工藤新一」の姿に戻ってその真意を、


「なんだよ?」
「別に」
「はあ?」


俺を見ていた灰原はプイッとキッチンに消えて行った。
…なんだアイツ?


「怪しいですね」
「あん?」
「コナンくんてあおいお姉さんにだけ態度違うよね?」
「…え゛っ!?」
「お前あの姉ちゃんのこと好きなんじゃねぇか?」
「え!?でもあおいお姉さん新一お兄さんのお家の鍵持ってるし、新一お兄さんの恋人さんでしょ?」
「じゃあ、禁断の恋という奴ですね!」
「あの兄ちゃん今いねぇからっていいのかよ?」
「でもでも、禁じられた恋ほど燃え上がるって園子お姉さん言ってたし!!」


あの機関銃くだらねぇことガキにべらべら喋ってんじゃねーよっ!!


「俺があおい姉ちゃんにだけ態度違うのは!」
「「「うんうん」」」
「…新一兄ちゃんに頼まれてるからだよ!」
「そんなんじゃ納得できませんよ、コナンくん」
「そうだぜー!お前は頼まれたからって世話するようなキャラじゃねーじゃねぇかよ!」


元太、オメーにだけは言われたくねぇよ…!


「あの姉ちゃんは!」
「なになに?」
「…あおいは、」
「あおいお姉さんがどうしたの?」
「…1人なんだよ、家に帰っても」
「「「え?」」」
「だから1人ぼっちで寂しくないように新一兄ちゃんから頼まれてんだ!」
「…1人って?親は?」


いつからいたのか灰原が俺に聞いてきた。


「…いねぇよ、もうずっと前から」
「…保護者は?」
「さぁなぁ?あのマンションの名義人が後見人らしーが、少なくとも俺は1度も会ったことねぇぜ?」


俺の言葉をどう受け止めたのか、何かを考えている灰原。
と、その後ろでヒソヒソと小声で話している歩美ちゃんたち。
…なんか嫌な予感がする。


「おい、オメーら」
「ただいまー!お皿借りてきたよー!カレー食べよう!」


俺の言いかけた言葉はあっけなくカレーのお誘いに掻き消された。
…まぁ、コイツらが考えることなんざたかが知れてるしいいか。
そう思いながら食卓についた。

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bkm

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