キミのおこした奇跡side S


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迷宮の十字路


思いをのせて


「あおいちゃん!」
「和葉ちゃん!大丈夫だった?」
「うん!あおいちゃんは?」
「私も大丈夫だよ!」
「………あんな、あおいちゃんさっき」
「和葉っ!」


屋根から下りてきた服部と共にあおいに駆け寄ると、「何か」を言いかけた和葉の話を服部が止めた。
…たぶん俺に会ったこと、言おうとして服部がソレを止めたんだろうな。
そのことは気遣わせて悪ぃと思うけど、今はそれよりだなぁ!!


「あおい姉ちゃん!」
「あ、コナンくん!コナンくんも大じょ」
「なんでこんなところに来るの!?」
「え?なんで?…コナンくんたちが心配だったから?」
「危ないことすんなって言っときながら自分で危ないことしてんじゃねーかよっ!」
「ご、ごめん…?」
「ごめんじゃねーだろ!?今回はたまたま怪我なく済んだけどっ」
「だ、だってコナンくんたちがまだここに」
「だってじゃねぇだろーがっ!もっと自分の運動神経考えてだなぁ、」
「ご、ごめんなさいっ…!」
「怪我だけじゃ済まないことだって十分あり得んだぞっ!?わかってんのかよっ!!」
「わ、わかってるよ…!だ、だけど私だって心配」
「それがわかってねぇって言ってんだろ!?だいたいオメーは」
「なんやコナンくんとあおいちゃんて、どこぞの夫婦みたいやなぁ」


…………ふ、夫婦!?


「『バアサンこないなところで何してんのやー?』『いややわジイサン、あんたのため思て』みたいな初老の夫婦みたいやで」
「し、初老の夫婦…」


夫婦は夫婦でも新婚夫婦じゃなくて初老の夫婦かよ…。


「でもコナンくん!今のあおいちゃんに対する言葉といい、さっき平次のことも『服部』言うてたし、目上の人間にそないな口の聞き方したらあかんよ?」
「…ご、ごめんなさーい…」
「あおいちゃんもあおいちゃんやで!」
「え?私?」
「子供にこないな言われ方させとったらあかんやろ!」
「ご、ごめん…?で、でも勢いがほら私が謝った方が良い勢いだったっていうか、」
「それがあかんて!子供はちゃんと躾なあかん!コナンくんが目上の人間敬えん子になったらどうすんねん!?」
「まぁまぁ!それだけボウズがこの姉ちゃんのこと心配しとるっちゅーことやないか!」


ぐしゃぐしゃっと俺の頭を押さえつけてきた服部。
…くっそー!
今度元の姿に戻った時はただじゃおかねぇっ…!!!


「おおーい!キミたちももう帰っていいそうじゃ!」
「博士…」
「事情聴取は毛利くんが引き受けるというのと、何より服部くん!キミは1度病院に戻らんとじゃろ?」
「…そうや!平次、あんた病院抜け出したん!?」
「え!?…い、いやぁ、もう大丈夫やし、自主退院しただけや」
「アホなこと言いなや!ほな病院行くで!!」
「和葉ちゃん!」
「うん?」
「明日、和葉ちゃんも都合ついたら、」
「…ああ!わかっとるよ!このアホ病室に縛り付けてでも行くから待っとって!」
「うん!じゃあ、明日ね!」


帰って行く服部と和葉を見送った後俺たちも山能寺に向かうことにした。
途中ホテルがこっちだ、という理由で博士と灰原とも別れ、2人帰路についた。
俺の隣を歩くあおいは、何か考えているようだった。
…コイツまだ気づいてねぇな。
シャカシャカっとさっき買ってもらったコーラを思い切り振る。


プシューーーーー


「うわぁぁぁぁ!!」
「コナンくん!何やってるの!」


カシャン


コーラを盛大に被った俺にハンカチを出そうとしたあおいは一緒に落ちた「何か」を拾い上げた。
…よし!


「あれれー?あおい姉ちゃんそれどこのお家の鍵?」
「え!?…ど、どこのだろう?」


…「どこのだろう」!?
コイツまさか素で言ってんじゃねーだろうな!?
タイミング的に俺んちのだろーがっ!!!


−え?もういい?−
−おー。イチが他の奴に懐かねぇって聞いたから−
−あー、確かに。餌を置いておくとなくなってるから食べてるんだろうけど、私がいると食べてくれないからなぁ…−
−だから、さ、−
−うん?−
−適任者に頼むことにしたから…。今までありがとな、助かったぜ。…渡した鍵は俺んちのポストに入れててくんねーか?−
−…はいはい−
−なんか悪ぃな−
−いつものことでしょ−


「そ、それさー!あおい姉ちゃんの知ってる人のお家の鍵じゃない?」
「…」
「その鍵のタイプだと、アパートとかの鍵ってより、どちらかと言うと一軒家の鍵じゃないかなぁ?」
「…」
「どこのお家だろうねー?あおい姉ちゃん、誰かに会ったりした?」
「…」
「その人の家の鍵じゃない?」
「…」
「…あおい姉ちゃん聞いてる?」


鍵を見つめて固まってるあおい。
ダメだコイツ聞いてねぇ…。


「おーい、あおいー。戻ってこーい…」


しばらく放心状態のあおいの隣で、月明かりの下、散り行く桜吹雪を見送った。

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bkm

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