キミのおこした奇跡side S


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迷宮の十字路


終幕


体中が痛ぇ…。
俺何したんだっけ?
なんかすっげぇ良い匂いがする。
このままずっとここにいたいような、そんな匂い。
…ああ、そうか。
あおいからしていた桜の香だ。
重たい瞼をゆっくり持ち上げると、まるであおいが何かから俺を守るかのように覆いかぶさり倒れていて。
俺の顔にかかる長い黒髪に触れようと手を伸ばしたら、だぼだぼの服の袖から少しだけ出た小さな手が見えた。
当たり前だけど、また、この体に戻っちまったんだな…。


「気分はいかが?探偵さん?」


その声に体を起き上がらせると、灰原と博士が立っていた。


「…最悪」


まだ頭がどこかボーっとし、急に縮んだ体に脳が慣れていないような、不思議な感覚。


「ま、まぁ新一。その格好もなんじゃし、ホレ、着替えじゃ」


さっき灰原が持っていたカバンを、今度は博士から渡された。
俺が木陰で着替えてる間、灰原と博士はあおいの側にいてくれた。


「それで?どうするの?」
「もちろん、もう1度行くさ。服部と約束したしな」
「…ほんっと、早死にするわよあなた」
「ウルセェ!いざって時は誰よりもしぶとく足掻いて生き抜いてみせるさ…!じゃあ博士、灰原、あおいを頼む!」


−小っさなるまでどっかに隠れとけ!元に戻ったら帰って来い!!−


今戻るから殺されてんじゃねーぞ!服部!!
隠れていた林から飛び出し再び玉龍寺に向かうと、和葉に追っ手が襲いかかろうとしているところだった。
…あれだっ!!


「コナン君!!」


近くにあった松明を蹴り飛ばしたことで、犯人グループが次々と倒れて行った。


「和葉姉ちゃん!!平次兄ちゃんは!?」
「えっと…、あそこっ!!」


そう言って和葉が指差した先、屋根の上に服部と西条がいた。
…服部!
どうにか加勢しようとしても、西条の弟子たちに囲まれた。
…クソッ!!
こっちもやべぇが、服部の方も早急になんとかしねぇと…!
博士が連絡してくれてるとは思うがこっちからも警察に連絡しときてぇし…!
…そうだ!
これなら…!!
近くにあった松明を薪の束に向かって投げつけると、瞬く間に赤い赤い、炎となって上空に立ち上った。


「おいっ!直ぐに消すんや!!」


…よしっ!
この火に誰か気付けば警察、消防が一気に…!
火消しに躍起になる追っ手にも意識を向けつつ、服部を見上げる。
…西条の奴、小太刀に毒だと!?
あんニャロォ…!!


「あかん!平次が危ないっ!!」
「もう逃げられへんやろ?下からは弓で狙てるからな…」


屋根の上で追い詰められる服部。
下からは弓で狙う西条の弟子たち。
…そうだ!
あの弓を使えばっ!!


「おーい!! こっち!!」


和葉から離れて、弓矢を構えた弟子たちの注意を引きつける。
瞬間、腕時計のライトをつけて宙に放り投げた。


ヒュン ヒュン


ライトの光を目掛け一斉に矢が放たれ、壁に突き刺さる。
その矢を足場に宙を駆け抜け、ボール射出ベルトから飛び出したサッカーボールを思い切り蹴り上げた。


「くらえーーーっ!!」


そのボールが服部を今にも斬ろうとしてる西条の左手に命中し小太刀を吹き飛ばすことに成功した!


「よしっ!…って、うわぁっ!!」


足場を失った体が重力に引き寄せられ、地上へと落下する。
やべぇっ!!
落ちた!と思った瞬間、和葉にうけとめられた。


「行けーっ!! 服部ーーっ!!」
「平次ーーーっ!!」


俺がつくった好機を逃すことなく、服部は立ち上がりもう一度刀を構えた。


「うおおおおっ!!」
「たぁぁぁぁぁ!!!」


服部を殺しにかかる西条。
だが、さらにその上をいく服部は、峰打ちで西条に一撃を喰らわせた。
その一撃に意識を失い屋根から落ちていく西条を服部が止めた。


「義経になりたかった弁慶か…。アンタが弁慶やったら、義経は安宅の関で斬り殺されてんで…」


…例えソイツが弁慶でもオメーが義経だったらやっぱり弁慶は義経に敗れただろーよ。
チラッと入り口付近を見ると西条が倒されたことで逃げようとする弟子たちがオッチャンに投げ飛ばされていた。


「あ!あおいちゃん!」
「えっ!?」


和葉の言葉にオッチャンの方を良く見たら、あおいが木刀振り回していた。
…本人はただがむしゃらに振り回してるだけなんだろーが、全打命中し犯人ぼっこぼこにされてんだけど…。


「つ、強いやん、あおいちゃん…」
「は、ははっ…」
「全員逮捕や!!」


博士の通報と俺の出火により、ようやく駆け付けた京都府警の手で、西条とその弟子達は逮捕された。
そして仏像の在処もおそらく…。
こうして長いようで短かった義経と弁慶の闘いに幕が降りた。

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bkm

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