キミのおこした奇跡side S


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迷宮の十字路


組上がったパズル


「ここや!ここの六角堂におんで!」


服部の誘導で無事元太を回収。
つーか絶対クラスに1人はいたよな、修学旅行とかで迷子になる奴。
…どっちかっつーとあおいもそのタイプだから、そう思うと元太のこういう行動、憎めねぇんだよなぁ…。


「それにしても、便利なもんやな!発信機つきのバッジっちゅう訳か!」
「ああ、その発信機から出る周波数がそのめがねと同調して…、」


あ、れ…?
なら、


「服部!!」
「そ、そうか!!」


バッ、と元太の方を見る。


「なな、何だよ!?」


俺たちの勢いにうろたえる元太。
その手にあるペットボトルを見て、ある事を思いつく。


「工藤、まさか…」
「…ああ。行こうぜ!」


そう言って博士たちとうまいこと言って別れ、みそぎ川に行く。


「間違いねーな…」
「ああ! あの姉ちゃんが聴いた音は、やっぱり凶器を落とす音やったんや!!」
「となると、犯人はやはりあの4人の誰か…」


…いや、あの時嘘を言ったあの人…。


「3人や!! 俺の初恋の人が殺人犯の筈無いやろ!!」
「オイオイ…」


どんだけ私的意見だ、ソレ。


「ただ…、一つだけ気になるんは、さっき聴いた唄と俺が覚えてた唄の歌詞が、1ヵ所違うんや…」
「はあ?」
「俺の初恋の人は“あねさんろっかく”を、“よめさんろっかく”と唄てたんや!何でやろうな…」


俺が知るかよ!
その後山能寺に行くと白鳥警部がいて、いろいろと情報をくれた。
と、言っても俺にじゃなくオッチャンに、だけどな。


「ね、ねぇ服部くん」
「ん?どないした?」
「か、和葉ちゃんは?」
「へ?」
「和葉ちゃんと連絡が取れないんだけど…」


オッチャンが謎が解けたー!と口走ったものだから、白鳥警部が人を集めて推理ショーが始まることになった。
全員集まるまでの間、俺は俺で推理をしていたら、あおいが服部のところに近づいてきた。


「あー、トイレにでも篭ってるんちゃうか?」
「そんなわけないじゃん!…和葉ちゃんきっと犯人の証拠になりそうなものを探しに、」
「はあ?和葉が?ないない!そんな気の利く女とちゃうで!考えすぎやて!」
「そんなことないよ!服部くん狙った人源氏蛍のメンバー殺した人なんでしょ!?もう6人も殺してるんだよ!?和葉ちゃんに何かあったらどうするの!?」
「せやから大丈夫や言うて」
「じゃあ私がそこに行くから場所教えて!昨日どこで襲われたの!?」


…珍しくあおいが噛みついてるな。


「平次兄ちゃん、和葉姉ちゃんに電話してみたら?」
「あ?せやから別にい」
「それだったらいいでしょ?」
「え?う、うーん…」
「皆さん集まりましたな?ではこれから毛利小五郎による桜正造氏殺害事件の真相を」


納得いきません!て顔してるあおいを他所に、オッチャンが推理ショーの開幕を告げ一同を着席させた。
…にも関わらず、この迷探偵には白鳥警部他の情報が何かの足しになっていたわけでもなく、いつも通りの迷推理を繰り広げてくれた。
さすがだ、オッチャン。
これだけ人招集しといてその迷推理。
人類がその脳みそになったら世界は平和だぜ?


「千賀鈴さん、弓をやる人はここが矢じりでこすれて怪我をすると聴きます」
「確かに…。この矢枕の怪我は弓をやってるせいどすけど…。まだ始めたとこやし、人を射るなんて絶対でけしまへん!」
「オジサン、私もそう思うよ…。ここを怪我するのは初心者の証拠で、そんな人が人を射るなんてできるわけないよ!」


…さすが元弓道部。
あおいも初めて会った時、手怪我してたもんな。
それに今の会話で疑惑は確証に向けて動き出す。
やっぱりあの人…。


「工藤」
「ああ…、おっちゃんのお陰で、疑惑が確証に変わった。犯人はやっぱりあの人」
「なんや自分気ついとったんか?」
「…あおいが元弓道部で聞いたことあったんだよ。あの座り方もあおいもたまにする、弓やる奴の癖みてぇなもんだし!」
「ああ、なるほど。…弓やるモンとちゃうかったら、あんな事言わへんからな」
「後はその証拠と、」
「仏像の在り処やな」
「何か餌、あげましょうよ!!」
「俺、どんぐり持ってるぜ!!」


オッチャンの迷推理で迷惑被りまくったシマリスに、元太たちがエサをやろうとしてた。
が、肝心のエサのどんぐりは手から転がり落ち、池ポチャ。


「まるで『どんぐりころころ』の唄みたい!」


…どんぐりころころ?
そう、か!
もしかしたら!!
部屋に戻り、例の暗号、あの絵を探し出す。


「おい!どないしたんや、工藤!?」
「もしかしたらあのコピーの絵は京都の通りの名前なんじゃねーかと思ってよ!」
「なんやて!?」
「…まず、東西の通りだ。この五段目は五条通り、四段目は四条通り、この三段目と二段目の間は、三条通りと二条通りの間で、御池通りだ!!その証拠に、」
「どんぐりころころ…」
「次に南北の通りだ。スミレも『春の小川』の唄から小川通り、天狗は『烏天狗』から、烏丸通り、そして富士山は『富』の字から、富小路通りだ!」
「ニワトリは何なんや? ドジョウは『柳川鍋』やから、柳馬場通りやろうけれど…」
「ニワトリは…、西洞院通りじゃないか? “酉”の方角は西だから…!」


…謎がパズルのように1つずつ組みあがって解けていく。
この時の感覚は、探偵でなければ味わうことが出来ない。


「蝉は『アブラゼミ』から、油小路通り、天狗は烏丸通り…」
「ほんで金魚は『金魚の餌は麩』ちゅうとこから、麩屋町通りやな!?」
「そして、同じ色のスミレと富士山、ニワトリとドジョウ、蝉と金魚、天狗と天狗を線で結ぶと…」
「…『王』?何や、王って?」


…まだだ。
まだ何か、


「点だ!! こうじゃ無ぇか!?」


そう言って、地図に黒い染みをつける。
そこに現れたのは「王」ではなく、「玉」…!


「玉はギョクとも読み、宝石の意味もある…」
「この場所は…、」
「仏光寺!」
「お宝はもう見つけたも同じやな!!」


服部と2人で走り出す。
気持ちだけが逸るあまり、この「証拠」を残した地図をテーブルの上に置いたままにしていたことに、この時の俺は気づかずにいた。

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bkm

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