キミのおこした奇跡side S


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迷宮の十字路


再会…?


「山能寺さんは六角通りどしたな?」


水尾さん、西条さん、竜円さんと別れた。
竜円さんは、檀家のところに行かなければいけないらしく、山能寺に直帰しないそうだ。


「ここは恵比寿川通りやさかい…、まるたけ、えびすに、おしおいけ、あねさん、ろっかく、やから6つ目の筋どすな?」
「…ねぇ、今のなんて歌?」
「さぁ?うちらは手まり唄ゆうてますけど…。京都の東西の通りの名を北から南へ唄うとるんどす。まるたけえびすにおしおいけぇ あねさんろっかくたこにしきぃ しあやぶったかまつまんごじょう せったちゃらちゃらうおのたなぁ ろくじょうひっちょうとおりすぎぃ はっちょうこえればとうじみちぃ くじょうおうじでとどめさすぅ…。京都の子はみんなこの唄で通りの名を覚えるんどす」
「ふぅん…」
「ちゅうことは、自分も京都出身なん?」
「へぇ、そうどす」
「歳は?」
「19どす」


京都出身の19歳…。
もしかしてこの人…、いやでも短絡的すぎか…。


「ここが御池通りどす! ほな、うちはここで」
「さよなら!」
「さいなら」


千賀鈴さんと別れ、服部を見たらずっと千賀鈴さんの後ろ姿を追っていた。
コイツ…、


「お前まさか彼女が、」
「間違い無い!京都出身で、歳も俺より二つ上やしな」


…やっぱりな。


「でもなあ…。京都の子はみんなあの唄を、」
「やっと会えたんや!やっと!!」


…ダメだコイツ。
俺の意見聞く気ねぇし…。


ピリリリリリ


「お?…はい、もしもし」
「平ちゃん、何してんねん!!勝手に病院抜け出したらアカンやろ!!」


すっげ、俺の位置でも聞こえる大声!
ま、保護者から面倒任されてる大滝さんからしたらたまったもんじゃねぇよな…。


「大滝はん…。…え?……そうか…分かってるて!! ほな、ありがとうな、大滝はん!!」
「…なんだって?」
「ああ、今の電話でな、」


短刀の柄から桜さんと同じ血液型…。
刃型も桜さんの傷と一致、か。


「これで俺を襲うた翁の面が、桜さん殺した犯人に間違い無いっちゅう訳や!」
「そうなると、凶器を処分する方法の無かったあの4人は、犯人じゃないって事になるな…」


山能寺に着いたら、服部が門の所で立ち止まった。
門からは昨日の狂い咲きで花開いた桜の樹と、その奥に格子のついた窓が見える。
…なるほど、ね。


「コナン君!!」


なんかすっげぇ嫌な予感がして振り返る。
と、


「何してるの?」


やっぱり…。
俺の今の同級生、少年探偵団のメンバーがいた。


「お前達、どうして?」
「クイズに答えたご褒美に、博士に連れて来てもらったの!!」


どこにんな金あんだよ、博士。
発明料そんなに入ったのか?
いやさすがに旅費は各自持ちで保護者なだけか?
なんて考えていたら、元太が迷子になったことを伝えられた。
…ほんっとに、アイツは…、


「元太君、漢字が読めないから、今いる場所が言えないの…」
「で、君のその眼鏡で探してもらおうと思ってな!」
「…オッケー!任せとけって!」


ま、こういうのもしゃーねぇ。
追跡めがねのスイッチを入れた。
ら、


「へーっ…、こらオモロイな!あっ、あっちや!!」


そのめがねを奪い、そのまま歩き出す服部。
それはおもちゃじゃねーっての!


「…ったく…」


服部先頭に歩き出す。
アイツが1番いきいきしてる気がするのは気のせいじゃねぇよな…。


「こっちでも事件があったようじゃな?」


元太を迎えに行く途中、博士が歩美と光彦に気づかれない様に話し掛けてきた。


「ああ…、詳しい事は後で話すよ」


…ん?今の音、


「まただ…。哀君、例の薬を…」


そう言われた灰原がドラッグケースを取り出し、その中から薬を博士に手渡した。


「何だ?それ…」
「お腹が鳴るのを抑える薬。冠婚葬祭用に博士が開発したの…」
「他にも、酒が苦手な人用に、飲むと直ぐに赤くなる薬や、仕事を休みたい人用に風邪と同じ症状を起こす薬も開発したんじゃ!!どれも哀君に手伝ってもらってな!!」


はっはー、どれも使えねぇ…。
なんて思ったことは、博士には黙っていた。


「それから連れてきたわよ?」
「あん?て、イチ!」
「にゃー」


博士が持っていたキャリーバックからイチが顔を覗かせていた。
オッチャンについて出かける時は相変わらず博士に世話を頼んでいた。


「何その猫」
「え?」
「全然懐かないんだけど」
「ワシたちが餌をやろうとしても近寄ってこんのじゃよ…」
「小嶋君なんて引っかかれてたわよ?だけど私たちが旅行でいない間に餓死させるわけにもいかないし連れて行くって博士が言うから、ようやくそのバックに入れて連れて来たんだけど」


灰原は俺と俺の頭の上に飛び乗ったイチを睨みつけた。
んなこと言われてもなぁ…。


「コイツはあおいにしか懐かねぇんだよ」


蘭が餌やりに行ってもサッと姿隠すって言うし(てゆうかその現場俺も見たし)
頭がいいんだか悪ぃんだか。


「何それ?惚気ないでくれる?」
「…はあ?別になんも言ってねぇじゃねぇかよ!」


とにかく返したわよ?とスタスタ灰原が歩いて行った。


「…なんだぁ、アイツ?」
「哀君も猫が好きみたいなんじゃが、イチがいっこうに懐かんから寂しいんじゃよ」


寂しい奴の態度か?あれが。


「まぁなんでもいいけど、オメーももうちょっと世渡り上手くなれよな?ああいうのは敵に回すと後々面倒なんだから」
「にゃー」


イチを抱え直し、服部たちの方へと歩を進めた。

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bkm

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