キミのおこした奇跡side S


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迷宮の十字路


真実を求め京の街へ


「和葉ちゃん!」
「あおいちゃん!堪忍な、朝から!」
「いいのいいの!服部くんは?」
「あー、まだ寝とるよ」


翌日朝一で梅小路病院に行った。
俺、あおい、オッチャン、蘭、園子の大人数で行くのはどうか、ってことになって、オッチャン、蘭、園子は遠慮することになった。
俺も残れって言われたけど、半ば無理矢理連れてきてもらった。
…正直この姿だと多少のダダも通りやすくて助かる。
そんなわけで俺たち2人で病院に行ったら、大滝さんと白鳥警部がいた。
大滝さんはなんでも「おやじさんたちがいない時の保護者やから」だそうで。
…大阪府警も大変だな、おい。


「…ん…」
「平次、気ついた?」


俺たちが病室に到着してすぐに服部が目を覚ました。


「心配したで、平ちゃん」
「大滝はん…それに、誰やったっけ?」
「…警視庁の白鳥です。殺害された桜正造氏が源氏蛍のメンバーだったと聞いて東京から駆けつけたんです」


その話を聞かずに、しきりに左肩を気にする服部。


「痛むのか?」
「ちょこっとな」


オメーが痛むって言うってことは、相当だな…。


「家宅捜索で桜氏の店から盗まれた美術品が見つかったんや!」


やっぱり、な。


「気つかはりましたか?」


出た、京都府警のシマリス警部…。


「警部さん、あの短刀は?」
「鑑定に回させてもらいました」
「結果が出たらすぐ教えてや。証拠が足りひんかったらこの肩の傷も提供すんで!」
「え?証拠って?」
「あの短刀が桜さん殺害した凶器やっちゅー証拠や。ほんまは犯人の肌に触れてたものがあったらええんやけど…あ!バイクは!?バイクがあったやろ!?」


グイッと有無を言わさず体温計を口に突っ込んだ看護士。
…まぁコレだけ喋れりゃそういう扱いでも仕方ねぇよな。


「あれは盗難車です。…ところでこの絵、なんなんかわからはりますか?桜氏の自宅の義経記に挟んであったんです」


それはあの暗号の絵。
…ま、今はまだ言う必要はねぇし。
服部もそう思ったのか首を横に振った。
が、


「ほんまですか?…まぁよろしいわ」


信じてもらえねぇだろうな。


「これに懲りておとなしゅうしてることですな」
「それじゃ、私もこれで」
「大事にな、平ちゃん」


そう言って警察トリオが去って行った。
あおいも蘭に服部が目覚ましたって連絡してくるって言って病室を出た。
さて、どーすっかな…。


「あー!あかん!私もちょっと用があってん!!」
「はあ?」
「ちょぉ出てくるから平次おとなししときや?」


そう言って和葉も慌しく病室を後にした。
…なら俺も、って


「おい、何着替えてんだよ」
「早よせぇ工藤!行くで!」
「…はあ?」


すっかり私服に着替えた服部に連れられ病院を後にした。
で、地下鉄で移動するとかでそのまま駅まで走らされた。
…断言してもいいが、今あおいに見つかってもアイツの足じゃ追いつかねぇから走る必要ねぇと思うけど。
とは思っても、俺も自然と気持ちが逸り、そのまま駅に向かった。
でも、


ピリリリリリ


「なんや?…あれ?むこうのケータイにあおいちゃんからかかってきとる」
「あー…バレたんじゃねぇの?俺たちが抜け出したこと」
「ほんなら無視しとこか」
「つーか向こうのケータイって?」
「ああ、スマホと2台持ちしてんねん。ほんまはスマホ持ち歩こ思とったらアホみたいに電池食いよるやろ、アレ!肝心な時に電池あらへんから意味ないでぇ!せやから結局こっち持ち歩いとって、向こうのケータイにかかってきた奴こっちに転送してもらうようにしてんねん!」


なるほど。
スマホと2台持ちね。
さすが大阪府警本部長のご子息。
高校生でケータイ2台持ち。
…ま、俺も人のこと言えねぇけどな。
それより


「大丈夫なのか?安静にしてなくて」
「大丈夫や。それよりほんま変わった奴やったで。あんな剣法初めてや」


防御も完璧、か。


「傷跡から凶器照合さしたろ思て、短刀出さしてわざと切らしたんに、その短刀置いてってしまいよった。なんでや?まだあんで」
「うん?」
「アイツ、戦ってる最中に俺の落とした巾着拾おうとしよった。ほんまわからんことばっかりや」
「…まさかその翁、お前の初恋の人だったりして」


ま、そんなわけねぇけど。
とりあえず服部と水尾さんちに向かう。
犯人はあの現場にいた3人の誰か…だしな。


「襲われた?あの後で?」
「それで失礼やけど、水尾さんのアリバイ聞きにきたんや」


まさか他2人もいるとは思わなかったけどな。


「ついでに西条さんと竜円さんのアリバイも聞かせてもらえますか?」
「え!?私たちも!?」
「かなわんなぁ…。今日は千賀鈴さんと4人で桜さんを殺した犯人の話しよう思てきたんに」


4人で話、か…。
誰が言い出したかしらねぇが、この3人(千賀鈴さんが共犯だと考えるなら4人)の誰かが他の人間を探りを入れようとした可能性もあるよな…。


「証人はいてません」


3人とも証人がいないなら、アリバイなしと考えていいだろう。


「もう1つ。皆さん弓やらはりますか?」
「弓、ですか?いや…」
「もみじ狩りの舞台では梓弓を持つけどな」
「私も弓の弦鳴らして悪霊祓いの真似事ならしたことありますけど…」
「じゃああの時、お茶屋さんにいた人の中にはいないの?弓をやってる人」
「そう言えばヤマクラ…」
「え!?あの山倉はん、弓やってたんか!?けど、あん時はおらへんかったやろ?」


…今の「ヤマクラ」って、もしかして昔あおいが怪我してた…。


「ごめんやす」
「おお、来はりました!」
「…あれ?お姉さん、千賀鈴さん?」
「へぇ、そうどす」
「舞妓姿と別人やから驚いたやろ?さ、上がって!」
「へぇ、おおきに」


女ってすげぇ…。
化粧1つで全然違う…。
千賀鈴さんが座って、出迎えた西条さんが座った。
あの座り方…、じゃあやっぱりこの人…。
千賀鈴さんを入れてしばらく談笑。
…事件の話するんじゃなかったのかよ?
まぁ…、おおよそ見当はついたけどな。
その「おおよその見当」を胸に水尾さんの家を後にした。

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