キミのおこした奇跡side S


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出逢い・再会


西の色黒探偵の提案


「で?」
「なんや?」
「なんだじゃねぇよ。何しに来たかって聞いてんだ。事件か?」
「ちゃうちゃう。たまたまこっちに用あって、時間できたら工藤の顔見に行ったろ思ててやな」
「来れるかどうかわかんねぇ人間がわざわさ大阪から手土産持って来るかよ。来る気満々じゃねぇか」
「あ、バレた?」


新しい(というか懐かしい)教室や、新しい友人たちにも慣れ始めた頃。
「俺」とあおいは朝の短い時間だけ、顔を合わせる程度の関係で落ち着いていた。
電話は相変わらず出ねぇし(新しいケータイからかけてんのに!)メール出したらアイツ、アドレス変えてやがった!
蘭、に、聞くのもなんとなく気まずいし(蘭にはケータイ変えたメールはやった)どーする手立てもないまま時は流れ。
博士の発明した探偵7つ道具を駆使し、オッチャンを「眠りの小五郎」に仕立て事件を解決していく日々の中で出逢ったのがコイツ。
西の色黒探偵、服部平次。
最初は工藤新一に敵意丸出しだったくせにコナン=俺ってわかった途端、ミョーになついてきやがった。
まぁ…、同い年の推理マニア。
俺的にもコイツの存在は貴重。
で、連絡取り合う仲になったのはいーんだけど。
さっき学校から帰ってきたら、事務所で我が物顔で茶飲んでいやがった。
…コイツわざわざ大阪から何しに来たんだ?


「で、用は?」
「いやー、ほんまに一緒に住んどるんかなぁ思てな」
「はぁ?誰と?」
「あの姉ちゃんとやないか!」


はぁ?


「自分あの姉ちゃんのこと好きなんちゃうん?」
「…オメーはわざわざんなこと確認するために大阪から来たのかよ」
「だから言っとるやないか!こっちに用があって、時間できそうやったからついでに確認しとこ、思てな!」
「あのなー、俺と蘭はそんなんじゃねーって言ってんだろ?」
「ウソウソ!そんな強がらんでも俺はちゃーんと知っとんのやで?」
「だからウソじゃねーって言ってんだろ!俺と蘭はただの幼馴染み!…それ以上でもそれ以下でもねぇよ」


そう。
蘭は俺の気持ちを知っていて。
偶然とは言え俺も蘭の気持ちを知ってしまって。
でもだからって俺たちは変わらない。
蘭がそれを望んだように。
やっぱり俺も、蘭とは変わらない友人であり続けることを望むのだから。


「わざわざんなこと確認しに来んなよ、暇人が…」
「お、言うたな?正体隠して好きな女と一緒に暮らしとるムッツリスケベに言われたないわ!」
「バーロー!だから蘭はそんなんじゃねぇって!」
「ほー。ほな工藤が好きなんはあおいちゃんか?」


…はっ!?


「な、なんでオメーがあおいのこと知ってんだよ!」
「図星やな?」
「なんでオメーがあおいのこと知ってんのかって聞いてんだ!!」


母さん園子以外でここまでニヤケた顔ができる奴に初めて逢った。


「この西の高校生探偵舐めたらあかんでぇ?俺はてーっきり、ここの姉ちゃんのこと好きやからわざっわざ、ちいそなったんちゃうかー思ぉてたら、なんや他にいるらしいやないか!のう、コナンくん?」
「だから誰がオメーに喋ったんだよっ!?」
「そんなん、ここの姉ちゃんから聞いたに決まっとるやんけ!」
「はぁ!?蘭が!?」
「おー、言うとったでー?私が新一の恋人?ナイナイ!新一にはあおいっていう長ーーーく片想いしてるちっちゃくて可愛い女の子がいるんやーってな!」


あ、あの女、服部に余計なことをっ!!


「そん時に言うてたでー?なんや自分あおいちゃんと連絡取れてへんらしいやん?俺に新一の親友やったら言うてくれへんかぁ、言うてなぁ。このままじゃあおいちゃんが、ええーっと、黒羽やったかなぁ?に、取られるんちゃうか」
「なにーーー!!?何だソレ!?いつの話だっ!!?なんでそんな展開になってんだよっ!!!」
「…そんなん俺が知るわけないやろ」


確かにあおいは電話出ねぇし、メールも送れねぇから朝の登校前や帰ってからチラッと見るくらいになっちまったけどっ!!
いやでもだからってなんだよクロバッ!!
俺がいねぇ時にあんニャロォ何してやがる!!!


「でまぁ、せっかく東京行くことやし、工藤にはいっつも世話になってるよってこら噂のあおいちゃんがどんなんか見るついでに挨拶でもしとこかぁ、思たんや」
「いねぇから帰れ!」


やっぱりあおい、クロバと2人で会ってんのか!?
でもこの前本人がクロバはただの友達って延々と語ってたじゃねーか!
じゃあなんでだ?
なんで蘭はそんなこと


「つれへんなー。ええやないか、あの工藤新一が長いこと片想いしとるあおいちゃん、興味あるやろ?」
「ねぇよ、帰れ帰れ」


俺は今それどころじゃねーんだよっ!!
そんな馬鹿な理由で大阪からわざわざ来んじゃねぇよ!
まぁ幸い、ここにあおいはあんまり来ねぇから会うこともねぇだろうけど。


「ただいまー」
「お帰り、蘭姉ちゃん」
「おー、お帰りぃ」
「あれ?服部くん?どうしたの?」
「こっちに用あってな。ついでに寄らせてもろたんや」
「そうなんだ。びっくりしたよ、帰ってきたらいるから!…ところでコナンくんだけ?お父さんは?」
「おー、オッチャンやったらなんや入れ違いに出かけて行きよったで?」


…おいおい、他人に留守番任せるのかよここの主は。


「あ、今お茶出すね?」


お茶の用意をしに行った蘭の後ろ姿を見送る。
俺もそろそろ元太たちが迎えに来る頃なんだよなぁ…。
て、あれ?湯飲みが1つ多い。


「蘭姉ちゃん、誰か来るの?」
「あぁ、うん、あおいがね」
「えっ!?」
「もうそろそろ来るんじゃないかな?」
「…あおいちゃんて、前に言うとった噂のあおいちゃん?」
「…噂かどうかはよくわかんないけど、前に服部くんに話したあおいだよ?」


おいおい、いつもは来ねぇくせになんで今日なんだよ!


「ら、蘭姉ちゃんあのさ」
「蘭ー?いるー?」
「いるよー!」


遅かった…!
上に行くよう薦める前にあおいが来やがった…!!
チラッと服部を見るとあり得ないくらいキラッキラした笑顔で扉を見てた。


「お邪魔しまーす」
「おお!」


なんの歓声だ、なんの!


「…お、お客様?」
「違う違う、この人は」
「工藤の親友の!西の高校生探偵服部平次や!よろしゅう」
「く、工藤くん、の、」
「せや、工藤の親友やで!」


誰が親友だ!!
そこ強調して言うんじゃねーよっ!!


「え、工藤くんが?」
「そうそう。あんたがあおいちゃんやろ?いやぁ、工藤からよー話聞いとるで!」


今初めて話したじゃねぇか!
どかっ、と服部の足を蹴ると、真上から頭を押さえつけられた…!
くっそー、元の姿だったらこんなことにはっ…!!!


「…話?」
「せや。なんや工藤が長いこ」
「あーーーー!!!」
「コ、コナンくんどうしたの?」
「何かあった?」
「あ、あー!う、うん。なんか喉がおかしいなぁ?ボク風邪引いちゃったのかなぁ?」


我ながら苦しい言い訳…


「えぇ?大丈夫?」
「大丈夫だよ、蘭姉ちゃん」
「……はい、コナンくん」
「え?」
「これ舐めたら少しはよくなるよ?」
「あ、ありがと」


あおいがカバンから飴を取り出し俺に差し出した。
…そーいやコイツ風邪ひくと喉やられやすいって前言ってたもんなぁ。
飴持ち歩いてる、ってことは、風邪でもひいてんのか?


「あ!せや、せや!姉ちゃん、この間の話どーなった?」
「ええ?…だからやっぱり部活があって、」
「無理なん?俺がおかんに怒られるやん!」


なんの話だ?


「うちのおかんが普段世話になっとるって思いこんどる毛利名探偵になんやてっちりでも食べながら礼を言いたいらしいで?せやから連れて来い言うてん。で、オッチャンだけ来られても俺が困るさかいお前も来てもらお思って姉ちゃんに先に電話して聞いたら、空手の試合で行けへんからオッチャンだけじゃお前見れへんであかん言うねん」
「…てゆうか蘭に聞く前に俺に予定聞けよ、オメー」
「予定言うてもヤイバーごっこするくらいやろ、小学1年生のコナンくん?」
「…テッメー…」


確かに予定ねーけどっ!!
でもなんか一言あんだろ、フツー!!


「せや!あおいちゃんどうや?週末暇か?」
「え?私?」
「おう!毛利のオッチャンと、このボウズと一緒に大阪来ぇへん?」
「「…………はあ!?」」


俺と見事にハモらせたあおい。


「え?時間ないん?」
「え、や、時間、は、ある、け、ど、」
「ほな決まりやな!てことで毛利の姉ちゃん!このボウズの面倒はあおいちゃんが見てくれるさかい、オッチャン入れた3人の旅行許したってくれへん?」
「ち、ちょっと、私まだ行くなんて言ってな」
「あかん言うんか!?ものごっっっついうまいてっちりが食えんのやで!?しかもタダで!!」
「え、」
「このボウズも食べたい言うてさっきヨダレ垂らしとったでー?姉ちゃんが一緒に行くて一言言えばこのボウズもうんまいてっちりが食えんのに!…可哀想や思わへんか?こんなちっさいのに食いたいもんも食わせてもらえずほんま不憫な」
「ちょっと服部くん!うちがコナンくんに好きなもの食べさせてないみたいに聞こえるじゃない!」
「いやー、俺はそうは言うてへんよ?…で?優しいあおいちゃんは来てくれんねんな?」
「え!?や、わ、私」
「な!?」
「う、」
「来てくれんねんな!?」
「う、うん…」
「ほな決まりや!じゃ、そういうことでオッチャンにも言うとって!今週末大阪で待っとるって!」


それだけ言って服部は賑やかに去っていった。
…アイツ学校はどうした?
いや、そんなことよりも、


「あおいほんとに大丈夫?」
「え!?……うん、いいよ。コナンくん、見てるから」


この状況下であおいと旅行(オッチャンというこぶはいるが)
すっげぇ複雑…。
いや、でも物は考えようで、2日間あるんだ。
前みたいにこの姿を利用してあおいに「俺」がプラスになるようなこと言っといてとりあえず電話出てもらって、メアド聞くってのも手だ。
よし!


「わ、わー!僕大阪もてっちりも初めてなんだー!楽しみだなー!」
「よかったね、コナンくん!ちゃんとあおいにもお礼言うのよ?じゃあお父さんにも言っておかなくちゃ」
「うん!ありがとうあおい姉ちゃん!」
「…どういたしまして!」
「コーナーンーくーん!迎えに来たよー!!」


満面の笑顔で答えるあおい。
この間、いきなり博士の家を飛び出したときはどうしようかと思ったが、これは良い感じだ!
週末に向けた野望をひっそりと胸に仕舞い、今の同級生たちの輪に入っていった。

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