キミのおこした奇跡side S


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出逢い・再会


賭け


なんで


「工藤くんっ!?」


なんでコイツ


「な、なんで?工藤くんどうして」


今の「俺」を「工藤新一」って思うんだよっ!!?


「く、工藤って誰?僕は工藤じゃないよ?」
「え…?」
「お姉さん、博士に用があって来たの?呼んでくるから待ってて!」


ヤバイヤバイヤバイって言葉が頭の中で繰り返される。
アイツなんで俺を見て「工藤新一」だと思えんだよっ!?
蘭ですら気づかなかったんだぞっ!!?
おかしいだろっ!
あり得ねぇだろっ!!


「おお、新一。誰じゃった?」
「博士…。あおいが来てる…」
「なに、あおいくんじゃと!?」
「しかもアイツ『俺』を見て『工藤くん』て言いやがった…!」
「…ええっ!?ど、どうするんじゃ!?」
「…と、とにかく博士は俺のことは『遠い親戚の江戸川コナン』で通してくれ。新一は事件で忙しいって」
「あ、ああ、そうじゃな」


そう言って博士がリビングから出て行った。
…どーすんだ、これ。
アイツなんで今の俺を見て「工藤くん」なんて思えるんだよ!


−たぶんだけどね、あおいも新一が好きだと思うんだ−


…ま、まさかな。


「お、おお、あおいくん!どうしたんじゃ?」
「博士…」


チラチラとこっちを見てるあおい。
…やべぇよな、やっぱり。


「で、どうしたんじゃ?あおいくん」
「え?あ、ああ。…うん、と…」


何かを考え込んでるようなあおい。
そのあおいを見かねたのか博士が家に入れとまさかの提案。
いや、博士とあおいの中ならフツーはそうなるだろうが、今それはねーだろっ!!
なんて思ってるのは俺だけで話は進み、あおいはリビングに入ってきた。


「は、博士って孫いたの?」


入ってきて俺を見ながら言ったあおいの台詞。
…あれ?
今の俺=工藤新一説が、なくなった、のか?


「…じゃあ子供?」
「いや、この子は親戚の子でじゃな、ほ、ほれ!こっちに来て挨拶しなさい!」


こっち来て挨拶しろじゃねーっての!
でもこの状況だ、腹括るしかねぇ…。


「こんにちはー…」


って、俺がソファの影から出て行ったら、


「ど、どうしたんじゃ?」
「う、ううん!なんでもないっ!」


明らかににやけた顔で目輝かせてた…。
この顔知ってる。
あおいがイチに対して見せる顔。
「可愛いものを見る目」って奴だ。


「こんにちは、お名前は?」
「…コナン。江戸川、コナン、です…」


そう言った後俺の頭をいいこいいこと、撫でてきたあおい。
…お、俺の男としてのプライドがっ!!
いいこいいこじゃねーってのっ!!
何が悲しくて好きな女に黙ってガキ扱いされなきゃなんねーんだよっ!!


「じゃあコナンくんは小学1年生なんだ?」
「そ、そうだよ。お姉さんは?」
「私は高校1年だよ」


博士が茶(コーヒーの方がいいが、小学生らしく茶にしろだそうだ)入れてくれる間、江戸川コナンになって初対面だし。
極々当たり障りない自己紹介を繰り広げていた。
その後茶飲みながらあおいがここに来た理由、「工藤新一」の行方について博士が話した。
って言っても難事件で出かけてるってだけなんだけど。
それを納得したのかしてねぇのか…。
でも、じゃあなんであおいはさっき俺を見て「工藤くん」て言ったんだ?


「すまんが、少し部品を切らしとって、買いに行ってくるからちょっと待っててくれんかの?」


なんて思ってたら博士の無茶振り!
今あおいと2人きりにすんじゃねーよっ!!!
って、思ってもまた勝手に話が進んであっという間にあおいと2人きりになっちまった…。
どーすっかなぁ…。
…でも。
博士もいねぇなら、問い詰めるには良い機会かもしんねぇ。
つーか、今聞かねぇと、コイツがなんで「俺」を「工藤新一」と思ったか、わかんねぇままだ。


「そう言えばー!」
「うん?」
「さっきお姉さん『工藤くん』って言ってたけど、あれ誰のこと?」


一瞬驚いたような顔をしたけど、俺んち指差して答えた。


「そこの家の人で、私の同級生の工藤新一くんのこと」
「あ、あー!お姉さん新一兄ちゃんと友達なんだ!でも新一兄ちゃんて僕よりずっとお兄さんじゃない?なんで僕と間違えたの?」


さりげなく、さりげなく。
今なら「小学1年生の江戸川コナン」として聞きだせるはずだ。


「別に間違えたわけじゃないけど…」
「けど、何?」
「な、何、って…」
「僕と新一兄ちゃんじゃ全然見た目が違うでしょ?…なんで新一兄ちゃんだと思ったの?」


16年一緒にいた蘭ですら、気づかなかったのに。
なんでオメーは、一目見ただけで、俺を新一だと思ったんだよ?


「な、なんで、って、」
「なんでって?」


イチが俺を新一だって気づいたような野生の感?
んなわけあるかよ!
蘭も気づかなかったことを、コイツは気づいた。
…いや、感じ取った?
それはもしかしたら、


−あおいも新一が好きだと思うんだ−


この非常時にバカみてぇな考えなのは重々承知してる。
でもどんな姿であれ、もしかしたらって、期待しちまうのは、おかしなことか?


「お姉さんて、」


心臓の音が煩くなってきたのが自分でもわかる。
楽観的すぎるかもしれない。
組織のこと、俺のこと、話ちまったら博士の言う通り、コイツも危なくなる。
それは頭じゃわかってる。
だけどもし、コイツが肯定したら、


「新一兄ちゃんのこと、好き、なの?」


その時は…。
見つめる先のあおいは、いつもと変わらない、漆黒の綺麗な瞳をしていた。



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bkm

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