キミのおこした奇跡side S


≫Clap ≫Top

出逢い・再会


避けたかった再会


「うーん…」
「蘭姉ちゃんどうしたの?」


蘭の家、毛利探偵事務所に来た翌日。
なーんか慣れねぇんだよなぁ…。
それに、


−私は新一が好き!−


もうきっぱり諦めたとも聞いたが、それは蘭の中の話であって、俺としては、聞いちまった手前「工藤新一」としてどうするべきなのか、考えあぐねていた。


「コナンくんて、新一と仲良いのよね?」
「えっ!?」


蘭の口から「新一」の名前を聞くと、どうしても過剰反応してしまう自分がいた。


「な、仲良いかは、わかんないけど…。どうしたの?」
「うーん…、新一と連絡取れないのよねぇ…」


だって俺ここにいるし…。


「電話は電源切れてるみたいだし、メールもしてるけど…たぶん見てない気がするんだよね…」


いや、メールは見てっけど黒ずくめの奴らからしたら死んだハズ「工藤新一」のケータイで連絡すると、何かとマズイんじゃないかと思ってしてねぇだけ。


「何かあったのかな…?コナンくん知ってる?」
「え?えーっと、あ!事件だよ事件!新一兄ちゃん事件で忙しいって!」
「事件で忙しい、って、電話もメールも出来ないほど?」
「え!?う、うん!すっごく忙しいんじゃないかな!?」
「うーん…」


−幼馴染って、ほんとに物心ついた頃から一緒だからなんでもわかっちゃうんだよね−


…疑ってる。
蘭が明らかに「俺」の動向を疑ってる。
こういうのも見えてくっから、やっぱ同居って無理が


「それにさー、」
「うん?」
「新一電話出れないほど忙しいってのはいいけど、」
「うん」
「どうしてるのかな?」
「え?ど、どうしてる、って?」
「猫!新一飼ってたでしょ?新一がそんなに忙しいなら、ちゃんとエサとかやってるのか心配」
「……あっ!!!!」


やべぇ!
あのバカ猫の存在忘れてたっ!!!


「あ、コナンくんどうしたの!?」
「僕阿笠博士に呼ばれてたの忘れてたっ!!」
「え?今から?」
「今からー!!行ってきまーーす!!」


あのバカ猫死んじゃいねーよなっ!!?
アイツ死んだらあおいがっ!!!


「イチー!どこ行ったー?」


しーーーーん


…マジでヤバイ気がする。


「イチ?おい、どこにい」
「シャーーーーっ!!!」
「うわぁぁぁ!!痛ぇ痛ぇ痛ぇってっ!!悪かった!エサ出してやっからちょっと待、だから痛ぇってっ!!」


見つけた!
と思ったら目据わらせて飛び掛ってきたイチ。
そうだよなー。
俺も監禁されてメシもらえなかったらこうなると思う…。
エサをだしてガツガツ食うイチ。
どーっすかなぁ、って、


「おいっ!オメー何俺の頭に乗ってんだよ!」
「にゃー」
「…オメーには俺が誰かわかんのか?」
「にゃ!」


「工藤新一」にしていた行為を「江戸川コナン」にもしてくるイチ。
人間にはない動物の感で、イチは何か感じてんのかもしれねぇとか思った。
でもまさか死んだはずの「工藤新一」の家に「俺」が毎日来てるとこ組織の奴らに見つかるわけにも行かねぇし!
博士は今変声機とか発明してもらってるからこのバカ猫押し付けるわけにはいかねぇし…。
あおいはマンションでダメだし、頼めるって言ったらやっぱ


−頼ってきたら、また協力しちゃうんだろうなぁ、って思う−


蘭、しか、いねぇよなぁ…。
俺も調子いーよなぁ、とは思いつつも、あおいが大切にしてるイチ死なすわけにはいかねぇし。
背に腹は変えられねぇ。


「ただいまー」
「あ、お帰り、コナンくん!博士大丈夫だった?」
「う、うん…。あ、蘭姉ちゃん、これポストに入ってたよ?」
「え?なにー?差出人はー…ないわね。え、やだ何?嫌がらせ?」
「だ、大丈夫じゃない?開けてみたら?」
「え?う、うん…。……あれ?鍵?と、手紙…、はあああああ!?」


まぁ、こうなるだろうな…。


「ちょ、コナンくんコレどこにあったの!?」
「あ、だからポストの」
「新一うちに来たのねっ!!?何が留守中の猫の世話は任せたよ!!!ふざけんじゃないわよっ!!アイツどこにいったの!!?」
「さ、さぁ…」
「アイツー…、今度会ったらタダじゃおかないんだからっ!!」


俺当分蘭に会わない方がいい気がする…。


「猫を飼いたいだぁ!?」
「飼うんじゃなくて、預かれないかなぁ、って」
「ジョーダンじゃねぇ!ただでさえこのガキが増えたのにこれ以上厄介者はいらねぇんだよっ!!」


厄介で悪かったな…。
でもまぁ、あのオッチャンなら当然の反応だ。


「猫、飼えなそうなの?」
「ん?うーん…、大丈夫だと思うよ?…ここにも書いてある通り新一が留守ならその間あの家に猫1匹にしておくのも、ねぇ?」


お父さんがダメなら、お母さんが猫好きだから頼んでみるつもり、って蘭が言った。
そこまで巻き込んでほんっと申し訳ないと思う反面、助かったとも思った。
あおいと気まずい上、イチ死なせちまったらマジでヤバイ。
蘭との問題もあるが、冷静に考えて、俺は今あおいとどうなんだ、って話だ。
キスした翌日に他の女と遊園地行って(しかも自分を好きだった女)あげくその日のうちに姿くらますとかどうなんだよ?
言い訳っつーか、いや、言い訳することはねぇんだけど、でもなんもあおいに言ってないまま、この姿になっちまって。
せめて博士が変声機完成させてくんねーと電話もできねぇしなぁ…。
つーかその前に新しいケータイ買わなきゃだよな…。
今のケータイの使用履歴を電話会社にハッキングなんかされて見られたらたまったもんじゃねーし。
「工藤新一」用と「江戸川コナン」用に1台ずつ必要だ。
ケータイ買うのに保証人必要だけど、変声機作るのに忙しい博士はそれどころじゃねーし、パソコンのメールからあおいのケータイにメールしたらアイツ、パソコンからの受信拒否してんのか戻ってくるし!
…ってことはあおいから見たら、俺は今キスするだけして(しかも舌まで入れた)姿くらましたサイテー野郎か?
ほんっといろいろヤベェよなぁ…。


「なぁ博士ー、いつ出来んだよ変声機」
「そうじゃのー、今日の夕方には出来るんじゃないか?それより新一」
「なんだよ」
「小学校に行かんか?」
「…はああああ!!!?」


こんな姿の俺が平日の昼間っからうろうろしてるのはいただけないようで、博士にもう1度小学1年生になることを薦められた。
てゆうか小学1年生になることを強要された。
…俺の高1としてのプライドは?


「あー!もうほんっとやってらんねーー!!」
「まぁ…、おかしなことに首を突っ込んだ自業自得ってことじゃな」
「…さっさと変声機作ってくれよ!」
「だからもう少し待っとれ!」


なんかもうここ数日はため息しか出ねぇ。
いや、生きてるだけいいんだろうけど、でもこの身長はねぇって!
俺今絶対アイツよりチビだし!


ピンポーン


アイツから見下ろされて、蘭みてぇに抱きつかれたり恋バナ聞かされたりしたら俺の男としてのプライドがっ!!!
…いや、抱きつかれるのはいいのか?


ピンポーン


いやいやいや!
そこでおかしな妥協をするな俺っ!
ここで流されたら高校生としての俺が


ピンポーン


「新一、出てくれんか?」
「わーったよ!…ったく、しつけぇヤツだな!」


ピンポーン


「はいはいはい!1回鳴らせば聞こえるっつーのっ!!」


少しの背伸びで開けたドアの先に、1番会いたくて、1番会いたくない女が立っていた。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -