キミのおこした奇跡side S


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小さくなった名探偵


そしてはじまる物語


「新一兄ちゃん言ってたよ」
「え?」
「…蘭姉ちゃんは、誰よりも信頼できる最高の幼馴染だ、って。だから蘭姉ちゃんには自分よりももっとずっと良い男の人と幸せになってもらいたい、って」
「新一が?」
「うん」
「…ぷっ!それコナンくんの嘘でしょ?」
「え!?う、嘘じゃないよ!」
「ううん、嘘だよ!新一が『自分よりも良い男の人』がいるなんて思ってるわけないもん!」


…俺とんだナルシストになってねぇか?


「でもありがとう。コナンくんの気持ち、嬉しい」
「い、いや、ほんとに新一兄ちゃんが、」
「新一もコナンくんみたいに気の利く奴だったら、もっと早くあおいとくっついてたんだろうけどなぁ!」
「え?」
「そしたら私もこんなことしなくて済んだかもしれないのに!…きっと今頃あおい悲しんでるんじゃないかな?新一電話でもしてればいいけど」
「…え!?あおいが悲しんでるってなんだよ!?」
「こーら!あおいお姉ちゃん、でしょ!てゆうかコナンくんあおいのこと知ってるの?」
「え!?あ、う、うん、名前だけは…。いや、そんなことより悲しんでるって何!?」
「…たぶんだけどね、」
「うん」
「あおいも新一が好きだと思うんだ」
「…えっ!!!!?な、なんで!?なんでそう思うの!!!?どうしてっ!!?」
「え?どうして、って…勘?」
「…はあ!?」


言い切るならもっと確証持ってから言えよ!
今の一瞬で俺すっげぇ期待しちまったじゃねーかよっ!!


「…前に1度、あおいと新一の目の前で、私が熱で倒れたことがあったんだけど」


…それってNYの、


「その時新一が私を抱き上げて。完全に意識が飛ぶ直前に見えたあおいの顔がすごく…、胸が締め付けられるって言えばいいのかな?それくらい悲しそうな顔しててその時に『ああ、きっと新一が好きなんだろうなぁ』って思ったんだよね」


…………あの時は通り魔から遠ざかることが先決であおいがどんな表情だったかまで覚えてねぇし!
俺としたことがっ…!


「それに気づいていながら今日新一と出かけた私は、あおいの中でもきっと嫌な奴になっちゃったんだろうけど。…でもこっちは本人に確認してないから確かじゃないんだけどね」
「うん…」
「でも新一が1番好きな女の子が、新一を好きになってくれて、その子と幸せになってくれたらいいなーって思うからやっぱり、新一があおいのことで頼ってきたら、また協力しちゃうんだろうなぁ、って思う」
「…うん」
「それに新一諦め悪いからあおいとつきあえるまで絶対諦めないと思うし、本人も言ってたしね。何度喧嘩してもどんなに避けられてもあおいしかいない、って。それでこそ、工藤新一って気がしたんだ。…でも新一頭いいんだけど、ちょっとぬけてるようなとこあって詰が甘いっていうか…。ずっと私の弟みたいな奴だったから、これからも頼ってきたら私が助けてあげないとね!」


俺にとってはほんとにただの「幼馴染」
でも、蘭はいつからこんな思いを抱えていたんだろうか。
俺は何無神経に蘭に相談してたんだろう。
俺ってつくづく…。


「それに私気づいたことがあったんだよね」
「なに?」
「新一の笑顔」
「え?」
「笑ってる新一はカッコいいなぁ、って思う。でも、あおいの側で笑う新一の笑顔が1番好きだなぁ、って気づいたの」
「…そうなんだ」
「私じゃあんな風に新一を笑顔にできないし、…あおいがいなかったら新一といてもホームズの話ばっかりで楽しくなかったし!」
「…ソーデスカ…」
「知ってる?新一ってばあおいに食べさせたいからって1ヶ月の間に18回も親子丼作る練習したんだよ?私にはそんなことしないだろうしね。だからもう、きれいさっぱり諦めがついた、かな?」
「…そっか」
「って、こんなことベラベラ話しちゃったけど、小学生のコナンくんにはまだ早かったよね?つまらなかったでしょ?ごめんね」
「ううん、大丈夫。…蘭姉ちゃん」
「うん?」
「さっきのアレ、ほんとに新一兄ちゃんが言ったことだよ」
「…え?」
「アイツは俺の幼馴染だけあって顔は良いし頭も良い!でもガサツなのが玉に瑕なんだよなー!だからしっかりアイツに首輪つけれるような男と」


ドガァァァ


「…」
「それ、新一が言ってたのね?」


こ、こいつコンクリの壁にヒビ入れやがったっ!!


「あ、い、いや、ちょっと違ったかな」
「嘘言わなくていいのよ?コナンくん。今のはすっごい新一が言いそうな言葉だわ!…明日学校でとっちめてやるんだからっ!!」


バキバキっと手の骨を鳴らす蘭。
…俺小さくなって命拾いしたかもしれねぇ!
明日学校行こうもんなら即効殺されるじゃねーかよっ!!
さっきまでのシリアスムードはどこ行った?な蘭。
それがすげぇ、俺たちらしかった。


「だいたい聞いてくれる!?新一って遊園地に女の子置いて1人でどっか行っちゃうようなヤツだったのよっ…!」
「へ、へぇ」


おいおい、本人目の前にして「新一」のグチ言う気じゃねーだろうな?


「もうほんとにどういうつもりなのかな。信じられないよね?あおいは私にとっても大事な友達なのに、あおいにもああいう態度だったら考えものよね。どう思う?」
「さ、さぁ?僕大人の男の人のことはよくわからないや…」


俺に振るな、そんなこと。


「あ、そうだよね。ごめんね。…なんか可愛い弟ができたみたいでコナンくんにはなんでも言えちゃいそう!」


はっはー。
これからは普段聞かなくていいようなことも聞かされるわけね。
早くヤツらの情報手に入れてズラかりてぇ。


「そうだ、コナンくん」
「え?」
「あおいに会ったことはある?」
「…え?」
「新一の好きな子!…ある?」
「い、いや、『僕』はない、けど…」
「じゃあ今度、あおいを紹介するね。新一の大好きな子。…あおいずっと1人暮らしだからコナンくん見たら弟みたいってきっと喜ぶよ!」


それは俺が会いたくない。
いや、俺だって会いてぇよ?
会いてぇけど今のこんな姿じゃ嫌だ。
…あおいにだけは絶対に知られたくない。
蘭にすでにあり得ねぇくらいガキ扱いされてんのに、今さら自分のプライド気にするなんて俺もバカだとは思う。
それでも、あおいの目にだけはこんなガキじゃなく「カッコいい工藤くん」であり続けたい。
蘭の思い、自分の思い、そしてあおいの思い。
いろいろな思いが交錯する中、この日から俺は「江戸川コナン」として歩き出した。

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