キミのおこした奇跡side S


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心の距離


縮めるための努力


「イチー!」
「にゃー」
「寂しかった?」
「にゃあ」
「私も寂しかった!はい、ちゅー」
「…」


久しぶりにあおいが家に来た。
まず最初にしたことがイチを抱き上げてキスすること。
…あのバカ猫あとで鍛えなおしてやるっ!
俺を見て勝ち誇ったような顔をした(気がした)イチにスパルタトレーニングを誓った。
その後あおいの料理を久しぶりに食った。
相変わらず…良く言えば個性的な料理を出してきたあおい。
まぁ…、それがすげぇコイツらしいんだけど。
時計の針が9時を回った頃。
あおいを送っていった帰り、フッと思いたって蘭にメールした。


to :蘭
sub :これから
本文:ちょっと会えねぇか?


from:蘭
sub :いいよ
本文:どこに行けばいい?


蘭からの返信に速攻でメールした。


to :蘭
sub :Re:いいよ
本文:俺が行く。


てゆうかあおい送った帰りでもう事務所の近くまで来てんだけどな。
俺が事務所の下に着くのを見計らったかのように、蘭が降りてきた。


「蘭!悪ぃな、こんな時間に」
「ううん。それは別にいいんだけど。何かあったの?」
「あー…あった、って言うか…」


どっから話切り出せばいーんだろうな…。


「蘭」
「うん」


まぁ…、どう言いつくろっても結局は同じだ。


「オメーを女と見込んで頼みがある」
「…は?」
「俺に料理を教えてくれ」
「はぁぁぁ?」


新一が料理なんて明日はサッカーボールが降ってくる!!とかすっげぇ失礼なこと言いやがった蘭に、簡単に経緯を話した。


「新一ってさぁ…」
「なんだよ」
「きれいにあおいに振り回されてるよね」
「…なんとでも言え」
「でも新一が料理覚えるのは私も賛成。少しくらい自炊できるようになった方がいいよ」
「じゃあ頼めるか?」
「うん、いいよ」
「っし!さんきゅー蘭」


さっすが持つべきものはなんでも出来る幼馴染!


「でもそれくらいなら明日学校で言えばいいのに。こんな時間に会えるかなんて、何かあったのかと思ったじゃない」
「バーロォ。学校でこんなこと頼んだらあおいに気づかれるだろ!」
「気づかれちゃダメなの?」
「あったり前だろ。出来る素振りも見せずにいきなり手料理を振る舞うことに意義があるんだ」
「…バッカじゃないの」
「ウルセェ」


大体!
蘭から料理習いはじめたとか「工藤くんいきなりどうしたの?」なんて聞かれたらどーすんだよ!
答えようがねぇじゃねーか!
なんて考えてる俺に蘭は盛大にため息を吐いた。


「…蘭?」
「あぁ、ごめんちょっと考え事」
「…オメーが無理なら別にいいんだぞ?」
「大丈夫、大丈夫。それで何を作りたいの?」
「…親子丼」
「親子丼?なんで?」
「…」
「…新一?」
「ア、アイツが、」
「うん?」
「俺に初めて作ったのがソレなんだよっ!」


なんとなく気恥ずかしくて蘭から目を逸らす。
けど、蘭からの反応がなく、チラッと横目で蘭を見る。
と、


「…笑いてぇなら声出して笑えっ!」
「ご、ごめっ!し、新一って可愛いとこあるんだなーって、ぷっ!」


声殺して肩震わせてやがったっ!!


「…もーいい!」
「ごめん、ごめん!うん、いいよ。親子丼にしよう」
「おー。頼むわ」
「はいはい。それでいつ教えればいいの?」
「明日から」
「明日!?」
「善は急げ、って言うだろ?」


蘭が心底嫌そうな顔をしたのはスルーしとく。
そんなわけで、蘭主催の料理教室が始まったんだが。


「で?」
「うん?」
「なんで2日に1回は親子丼なのよ!?」
「続けねぇと覚えらんねぇだろ!」
「あのねぇ新一。こんなに親子丼につきあわされる私の身にもなってよ!」
「いーじゃねぇか。毎日じゃねーんだから!」
「よくないわよっ!なんでこんっなに頻繁に親子丼につきあわされなきゃいけないのよ!?」
「そんなぎゃーぎゃー言うなって!」
「とにかく!作り方は教えても私当分親子丼はいらないから」
「余ってもったいねぇだろ!」
「だから初めから1人分で作りなさい、って言ってるでしょ!?」
「そしたら2人分の分量がわかんねぇじゃねーかっ!」


蘭が今にも回し蹴りを繰り出すんじゃねぇかって顔してっけど、ここで引き下がるわけにはいかねぇ…!
親子丼習い始めて何回指切ったと思ってんだっ!!


「だいたいこの包丁切れすぎなんだよっ!」
「包丁に当たってんじゃないわよっ!」
「ウルセェ!今真剣なんだから黙っいってぇー!!」
「はい、今日2回目ご苦労様」
「オメー大丈夫かくらい聞けよ!」
「大丈夫ー?」
「オメーってヤツは…」


でもなんだかんだ言いつつも、切るたびに絆創膏を貼ってくれる蘭にはすげぇ感謝してるけど。


「なんじゃこりゃー!?」
「親子丼だよ?」
「蘭お前どっか悪いのか?」
「なんでよ、失礼ね」
「じゃあなんだって毎日毎日親子丼なんだよ!俺は最近夢の中まで親子丼食ってんだぞ!」
「毎日じゃないでしょ!それに私もいい加減親子丼以外の料理を見たいの!お父さんも、もう少しの辛抱だと思ってつきあってよ…」


なんて会話が毛利家でされてるなんて知る由もなく、同じくうんざりした顔をしている博士に今日も親子丼を振舞った。

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bkm

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