■排除
NYの事件後あおいとは、まぁ…普通。
今まで通り、まではいかねぇけど、普通に「同級生」してる。と、思う。
話さないわけでもないし、すげぇ話すわけでもない。
朝の学校は、また一緒に行くようになったけど、放課後は別。
1人で帰るって言われた時のこと、実はかなり俺の中で引っかかってたんだな…とか。
今さらながら思う。
「あの人だよ、あの人!」
「んー…見えないなぁ…」
「学ラン着てるし、誰かの彼氏かな!?」
クラスの女子が校門を指差して騒いでいた。
…学ラン?
って、思った矢先、あおいがカバンを持って教室から勢い良く飛び出していった。
まさか、って窓を覗いたら、
「クロバ!?」
なんでアイツがここにいるのか知らねぇけど、アイツが来てあおいが走って帰っていったのは事実で。
気がついたら俺もカバン持って教室を出ていた。
そしたら、
「く、くくくく黒羽くんっ!!!??」
「テメー何してやがる」
クロバが俺の目の前であおいに抱きついているところだった。
「よー、彼氏くん!久しぶりだな!」
「…もう1度聞く。テメー何してやがる」
「友情の確認?」
「頭悪ぃことぬかしてると蹴り殺すぞテメー。その薄汚ぇ手さっさと離しやがれ!」
へらっ、と笑うクロバ。
その態度にさらにイラッときたのは言うまでもない。
「相変わらずこえぇなー、彼氏くんは!じゃあ芳賀ちゃん!」
「はい!?」
「おみやげもらうだけもらって帰るのは忍びないけど、俺殺されたくないから帰るね!」
悪ぃなんて全く思ってねぇくせによく言う。
その後あおいに何か耳打ちしてから彼氏くんもまたなー!とか言って去って行った。
俺はオメーにだけはもう2度と会いたくねぇんだよ!
イライライライラ。
チラッとあおいを見ると後ずさりして俺から逃げようとしていた。
「おい」
「ひぃっ!?」
「…オメーに聞きてぇことがある」
「わ、私はないんで帰りたいと思います!」
「そうか。オメー俺と帰り道一緒だったな。帰りながら話してやるから来い」
強制的にあおいの腕を引っ張りわりと人気のない住宅街まで歩く。
今日という今日はクロバのこと、はっきりさせようじゃねぇか…!
「1つ確認させろ」
「はい!?」
「アイツはオメーの彼氏か?」
「え!?く、黒羽くんが!?ち、違うよ!そんなわけないじゃんっ!!」
「オメーはアイツが好きなのか?」
「えっ!?い、いや、好きか嫌いか、って聞かれたら好きだけど、でもそれは友達として好きって意味でそんな深い意味のある好きじゃなくてなんて言うかほら例えばハンバーグは好きか?って聞かれて」
「男として好きなのかって聞いてんだよ!」
「そそそそそそそんなつもりはございませんっ!!」
「アイツなんで校門前で抱きついてんだよ!?」
「え!?………友情の証?」
「…おいあおい」
「は、はい?」
「あんまりバカなこと口走ってっと蹴り飛ばすぞテメー」
「痛い痛い痛い痛いっ!!」
ぐりぐりとコメカミに拳を当てながら思う。
なんなんだよ!
いつもいつもクロバクロバ!
結局オメーはいつでもアイツのことしか考えてねーじゃねぇかよっ!!
「で」
「え?」
「なんでアイツなんだよっ!」
「…え?」
俺の両手にすっぽり収まるあおいの顔を見てると、さっき俺の顔見てヘラッと笑った黒羽を思いだし余計イライラしてきた。
「オメーがアイツがいいってんなら別にいーけど」
パッ、と手を離して顔を背けた。
ら、俺の制服のブレザーを引っ張ってきて
「べ、別にほんとに黒羽くんとはただの友達だよ!?」
弁明を始めた。
口を挟まずに黙って聞いてると、ソレさっきも言わなかったか?って内容のことをいつまで続ける気だよ?ってくらい延々と話していた。
「わーったよ!」
「え?」
「メシ」
「…え?」
「オメーが延々と話し込むから俺腹減ったんだけど?」
オメーまじで俺が止めなかったら明日になるまで話してたんじゃねーか?って勢いのあおいを止めて家に向かうことにした。
「久しぶりにオメーの不味いメシ食ってやっから何か作れ」
「…そんなに偉そうに食べてもらわなくても結構です」
「オメーの長話につきあって腹減ってっから何か作れって言ったのが聞こえなかったのかよ?」
「いひゃいいひゃいいひゃい」
「ほら、帰るぞ」
グイッて、手を繋いで歩き出す。
前まではこれが普通だったのになぁ…。
そんなこと思って家路につく。
「そ、そう言えばさ、」
「あん?」
「工藤くん、自分で料理してたの?」
「え?あー…、ほぼコンビニ弁当、たまに蘭」
「………そっか」
スーパーで食材を買い出す。
なんかコレも久しぶりだ。
「で、でもさ、」
「あー?」
「工藤くんもちゃんと覚えた方がいいよ、料理」
「え?」
「ほ、ほら!今って自分でお弁当作る男の人増えてるって言うし!そういう人モテるし!」
「…別にモテる必要ねぇし」
「そんなこと言ってると、将来結婚した時奥さんに逃げられちゃうよ?」
「え?」
「だって私だったら嫌だもん!自分の旦那様が料理全くできない人なんて!」
「え、」
「覚えて損はナイんだし、工藤くんも覚えたら?」
そう言ってあおいはカゴを持ってレジに向かう。
−だって私だったら嫌だもん!自分の旦那様が料理全くできない人なんて!−
別に俺のことを言ってるわけじゃない。
それはわかってる。
でも、好かれる要素を取り入れようとすること、嫌われる要素を取り除こうとすることは、人の性。
俺も料理でもするか、とか。
少し思ったことはあおいには秘密。
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bkm