キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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卒業、そして


尋問


あの後2回、あおいちゃんのケータイに電話をしたけど相変わらず電源が切れていた。
で、今日も起きてから(あんま眠れてねーけど)電話したらやっぱり電源が切れていて。
ヤバい、って思うよりも、何がどうヤバいのかもわからないような、うわー、っていう感情が沸いた。


ピンポーン


昼前に米花町に着いて、そこでも1回電話するけど繋がるわけもなく。
そのままあおいちゃんのマンションに行くけど、あおいちゃんは出てこなかった。
どーすっかなー、と思っていた時、


「もー、なんであおいは電源切ってんのよ!」
「わかんないけど…、充電切れてること気づいてないだけならいいんだけど、具合悪いとかだったらどうしよう…」


エントランスに賑やかに女の子2人組が入ってきた。
そのうちの1人と目が合うと、


「あ、れ…?黒羽、くん?」
「…蘭ちゃん、だっけ?」


以前帝丹で会った子だった。


「え?もしかしてあおいに会いにきた?」
「あー…うん、そうなんだけど、」
「誰?」
「ほら、黒羽くん。あおいの彼氏の、」
「マジで!?あおいの友人の鈴木園子ですー!」
「園子ちゃんね。俺、黒羽快斗」


蘭ちゃんと一緒にいた子は鈴木って名乗ったけど、この子がもしかして鈴木財閥のご令嬢か?


「なに、もしかして黒羽くんもあおいと電話繋がらないの?」
「あー…俺も、っていうか、たぶん俺が原因?」
「「…」」


園子ちゃんの言葉を聞いて、あ、俺だけ拒否られてんじゃねーのか、って少しホッとした。


「ねぇ」
「うん?」
「ここで閉め出し食らってるってことは黒羽くんも暇なのよね?ちょっと顔貸しなさいよ」
「えっ」


園子ちゃんは明らかにそれまでとは目つきを変えて俺を見てきた。
…すっげー嫌な予感がする。


「いや俺今出直そうかなー、って、」


って、言った瞬間に園子ちゃんはドン!と俺の真横の壁に足を着いた。
…俺、女の子に足ドンされんの初めてなんだけど。
この子ほんとに財閥令嬢?


「逃げようたってそーはいかないわよ?こっちには米花の女拳士がいるんだから、あんたが逃げ出した瞬間に取り押さえるわよ?」
「それ取り押さえるの私だよね?」


園子ちゃんの言葉に蘭ちゃんが苦笑いする。
…めんどくせーのに捕まっちまった気がする。


「で?あんたが原因てどーいうこと?」


結局そのままエントランスホールにあるソファに座らされて尋問されることになった…。
チラッと隣の蘭ちゃんを見るけど、あんまり面識のない俺でもわかるような、お前が諦めろって顔をしていた。
…マジかー。


「いや、ちょっと昨日…言葉の行き違いが、」
「あ、先に言っとくけど、蘭は去年の全中空手大会でベスト8までいったから。下手なこと言うとタダじゃおかないからね」
「…うわぁ、全中ベスト8とか、蘭ちゃんつよーい」


蘭ちゃんを使っていい具合に俺を脅迫してくる園子ちゃん。
…この子、ほんとにあおいちゃんの友達か?


「で?原因は?」
「…卒業祝いに工藤新一とニューヨーク行くって話聞いたからだよ」
「あ、それ私も行くよ?」
「だとしても、あの男が一緒の段階でダメだろ」
「なんで新一くんのこと知ってんの?」
「ほら、前に言ったでしょ?黒羽くんが帝丹に来た時に新一と鉢合わせしたから、」


蘭ちゃんはどうも公平なスタンスでいてくれるようで、園子ちゃんと俺の間の空気を上手くなだめてくれる。
…うん、この子があおいちゃんの友達なのは納得だ。


「それで?蘭も一緒に行く旅行だけど新一くんがいるってだけで頭ごなしに反対したわけ?」
「別に頭ごなしってわけじゃねーし」


俺ここで何してんだろ?
肝心のあおいちゃんに会えねーのに、なんでこの子たち(うち1人は今日初対面!)に尋問されなきゃなんねーんだよ…。


「まぁ、確かにちょっと口調は強かったけど、普通に話してたんだよ。でもいきなり青子の名前出してきて、」
「青子って誰?」
「俺の幼馴染!青子に嫉妬してる感じの話されたんだけど、今それと工藤新一の話は別問題、って…何?」


俺が青子の名前を出した途端、園子ちゃんも蘭ちゃんも黙った。
言うならば、うわぁ、って顔して俺を見てる。


「原因、わかったかも…」
「え?」
「完全にあんたのせいね」
「えっ!?」


蘭ちゃんは心底困った顔をしてるし、園子ちゃんはやれやれとでも言うかのように大袈裟に頭を振った。
俺がどういうことか聞こうとした時、


「髪が長くて、コミュ力高くて、すっごい可愛い女の子」


園子ちゃんが口を開いた。


「なんですってね?黒羽くんの幼馴染」
「え?…ま、まぁ、髪長ぇしコミュ力あるけど可愛いかって聞かれたら人並みとしか、」
「1つ聞きたいんだけど」
「う、うん?」
「あおいのどこが好きなの?」


あ、俺今試されてる、って、
これテキトーに答えちゃ駄目な奴だ。
俺の直感がそう言ってた。


「小さくて可愛いところ。ノリが良くて、話し方も柔らかいし、声も好き。なんか頼りなくて、つい手貸したくなるところとか。裏表なくて真っ直ぐで素直なところ。いつも笑ってるところ。予想外の行動してくるところとかも好き。…家のこととか、大変なはずなのに全く感じさせないくらい明るいところ。ちょっと抜けてるところとかも和むよな。あとは」
「ストーップ!もういーわよ!」


俺の言葉に園子ちゃんは手のひらをこちらに向けて静止のポーズを取った。


「ったく、それ本人に言ってやんなさいよ」


園子ちゃんは呆れたような息を吐いた。


「あおいは滅多に愚痴らないのよ」
「うん?」
「そりゃー、嫌なことあったー、とか。そういう小さいことは愚痴るけど、深刻な奴は愚痴らないのよ。特に誰かの悪口になりそうなことは言わない奴なの。それが黒羽くんの幼馴染のことは愚痴ってきた!」


この意味わかる?と園子ちゃんが言う。


「蘭と新一くん見てたら、幼馴染の仲の良さも理解できるけど、でもそーいうことじゃないでしょ」
「…いやでもマジで青子のことは、」
「黒羽くん」


それまで黙っていた蘭ちゃんが口を開いた。


「…私も幼馴染がいるからわかるよ。なんでも話せるし、何も話さなくても相手のことがわかる。…でもあおいの話しを聞いて、確かに自分の『恋人』っていう人にそんな存在の異性の友達いるのは嫌かもしれないな、って考えるようになった」
「…」
「だってその相手は自分が知らないその人のことを知ってるし、もしかしたら自分が教えてもらえないようなことも、聞いたり気づいたりするのかもとか考えちゃうよね」


その人と仲良さそうな現場を見たら特に、と、どこか困ったような顔をする蘭ちゃん。


「ごめん、俺やっと理解したわ」


あおいちゃんは言ってた。
「俺にはそれが普通なこと」だと。
蘭ちゃんに言われるまで考えもしなかった。
俺にとって青子の存在はそれこそ「普通なこと」だったから。
でも幼馴染のいないあおいちゃんにはそれが特異なことで。
…あぁ、だから俺にとっての青子と、あおいちゃんにとっての工藤新一が同じことだと言ったのか。


「えー、でもこれ原因根深くねーか?」
「それをどーにかするのがあんたの仕事でしょーが!」


そう言いながら俺の右肩に人差し指を突き立てた園子ちゃん。


「いい?あおいは自分から愚痴るような奴じゃないのよ。あんたが上手くやらなきゃ溜め込んで溜め込んで今みたいにドカンてなるの!好きならちゃんと見てなさいよ!」
「…気をつけます」
「黒羽くんとその幼馴染がどれだけ仲良いのか知らないけど、あんたがどう言い訳しようとしても相手は女なのよ!それ理解してからあおいに新一くんのこと説教しなさい。わかった!?」
「はい、わかりました」


理由をちゃんと聞いたら、あおいちゃんちの玄関と言う名の天の岩戸が今日開くことはないだろうと結論づけ、偶然出会った2人に感謝しつつこの日はここでお開きになった。

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bkm

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