キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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卒業、そして


焦燥


「ほんとおばさんが言ってた通り、ちっちゃくて可愛い子だったね、あおいちゃん」
「まー俺の彼女ですから?」
「快斗の彼女にしとくのもったいない!」
「うるせぇよっ!!」


あおいちゃんを見送った江古田駅。
久しぶりにあおいちゃんに会ったってのに、青子に出くわすとか運が悪いとしか言えない。
けどまー、いつかは紹介しねーとなんだろうとは思っていたし、ちょうど良かったのかもしれない。


「快斗、最近機嫌悪いね」
「もー俺受験嫌!あおいちゃんが足りない。やっぱ帝丹にすりゃ良かった」


お袋の言うところの「受験生の自覚」って奴で、最近あおいちゃんとの連絡もめっきり減った。
メールはまぁ、毎日してるけど、1日1通なんて時もあって早く受験終わんねーかなって思っていた。
その我慢も無事実り高校合格!
諸々の書類も貰って、夕方あおいちゃんに久しぶりに電話した。


「快斗くん、合格おめでとう!」
「あっりがとー!これでやっと普通にあおいちゃんに会えるな」


久しぶりにゆっくりとあおいちゃんと話して、あーやっぱりこの子の話し方好きだなー、とか。
そもそも声も好きだ、とか。
そんなこと思いながら電話してた。
…ん、だが。


「新一くんのお母さんが、私と蘭も卒業のお祝いに遊びにおいで、ってニューヨークに」
「は?何それ工藤新一と旅行するってこと?」


あおいちゃんがとんでもない爆弾発言をした。


「新一くんと、ていうか、新一くんと蘭と私の3人で、」
「行っちゃだめ」
「えっ!?」
「行かないで」


工藤新一と旅行?
ふざけんじゃねー、って話で。
例え他にも人間がいたとしても、それを許容できるかと言われたらそんなの許容できるほど心が広くなれないわけで。
口を吐いた本音にあおいちゃんはなんで?とか言い出した。


「それ本気で聞いてんのか!?あのなー、オメーは家族って思ってるかもしれねーけど、アイツはそんなことこれっぽっちも思っちゃいねーよ!」
「…なんでそんなこと言うの」


あ、ヤバい、って。
明らかにあおいちゃんがムッとしたのがわかった。
これは怒るとかじゃなくて、理解してもらわないといけないと、1度カップに手を伸ばし飲み物を飲み込むことで今のイラつきも飲み込もうとした。


「そんな下心ある奴と旅行なんて絶対ダメ」
「…快斗くんは新一くんを知らないからそう言うけど、」
「知ったら余計反対するぜ?アイツと行くのはダメ」


あおいちゃんは本当にアイツを家族としてみているのかもしれない。
けど俺をあぁいう目つきで見てきた奴がただの家族として見てるわけがない。
そんな奴と旅行なんてさせられるかって話だ。


「なんで快斗くんがそういうこと言うの」
「なんでって俺は」
「快斗くんだって中森さんと遊ぶじゃん」


いきなり出てきた青子の名前に、本当に何のことかわからなかった。


「ごめん、俺マジでわかんねーんだけど、」
「そうだと思うよ。快斗くんには普通のことなんだよね」


要するに、あおいちゃんは青子に嫉妬してる、ってこと、なのか?
でも青子となんて、バレンタインのあの日の駅での一瞬しか会ってなくねーか?
え?なんで??


「あおいちゃんが何を誤解してんのかわかんねーけど、青子は幼馴染で別にそんなんじゃねーし、何ていうかもう兄弟みたいなもんなんだって!」


なんで今青子?ってことしか頭になかった俺に、


「それと一緒だよ」


明らかに怒っている声であおいちゃんは言う。


「そ、りゃあ、幼馴染じゃない、けど、でも新一くんは」
「だからアイツはあおいちゃんのことそーいう風に見てねーって言ってるだろ!?」
「だからなんで私だけそんなこと言われるの!?」
「だからも何も事実だって言ってんじゃねーか!アイツはあおいちゃんを家族なんて思っちゃいねーし、実際家族なわけじゃねーんだからダメだって言ってんだろ!?俺が青子と遊ぶのと、工藤新一と旅行するのとじゃ問題のレベルが違うだろ!?」


あおいちゃんは口調も柔らかいし、どこかぽーっとしてるところがあるから、こんな口論になるようなこと今までなかった。
でも俺としてもこの部分は譲れねーし、そもそもあおいちゃんが青子に嫉妬してることとこれはレベルが違う問題だ。
だから強い口調で言った自覚はある。


「わかった」


ある、けど、


「もういい。もう知らない」
「は?え、何言っ」
「快斗くんは快斗くんの好きにしてよ。私もそうする」
「おい!ちょっと待てって!」
「ばいばい」


まさかこうもあっさり引き下がられるとも思いもしなくて。
それこそ青子だったらもっと食い下がって言い返してくるもんだから、一瞬何が起きたのかわからなかった。
通話終了を表すようなケータイ画面に、


「マジかよ」


独り言が漏れた。
慌ててかけ直すけど、電話が繋がることはなく。


「クソッ!」


あおいちゃんは電源を切ったようで、電話が全く通じなくなっていた。


「あれ?快斗どこに出かけるの?」
「米花町!」
「待ちなさい!」
「いってー!?」


電話が通じねーなら直接会いに行くしかねー、って思って家から出ようとした所で、お袋に耳を引っ張られた。


「今日は誰の合格祝いでご馳走用意してると思ってるのかしらー?」


馬鹿なこと言ってないでご飯の準備しなさい、って言うお袋。
…普通のメシなら迷うことなくあおいちゃんのとこに行っていた。
でも確かに今日は「俺の合格祝い」だ。
そしてうちは2人家族なわけで、俺がいなくてどーするんだって話で。


「…明日にする」
「そーしてちょうだい。さぁ、食べましょ!」


後でもう1回電話して、明日会い行こうと思った。

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bkm

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