キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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卒業、そして


吐露


「なにあれ、どーしたの」
「う、うーん…。バレンタインに彼に会いに行ったはずなんだけど…」


バレンタイン翌日の学校。
モヤモヤモヤモヤ。
昨日からちょっと、すっきりしない。


「あおい、ちょっと」
「なにー?」
「いつものとこ!」
「今そんな気力ない」


園子からこれから園子会議するぞ、って声かけられたけど、初めてお断りした。
…あの後、快斗くんどうしたのかな。
マンションに着いてから、着いたよってメール送ったら、チョコドーナツ食べたよって返信がきた。
美味しかったよ、って。
中森さんのことには一切触れていなかった。
快斗くんと中森さんのことは、ずっと前から、それこそ「この世界」に来る前から知ってたわけで。
でも快斗くんは原作の快斗くんとはちょっと違って、私を彼女にしてくれた。
でもあぁいうところ見ると、あぁやっぱり、って。
いつか蘭が、新一くんを好きってなるように、快斗くんも、って、そう思った。


「よし、じゃあ今日は特別に園子様がうちに招待してあげる!」
「え、私行かなくていい」
「いいから来なさいよっ!!蘭もよ!」
「えっ!?ま、まぁ…少しなら…」


園子様の発言で、放課後鈴木邸に行くことになった。
1度着替えに帰ったら今なら私家から出ないだろうな、テキトーに言い訳して行くのやめようかな、って思っていた私の心はバレバレだったみたいで、制服のまま来いって連行された。


「…ここどこのお店」
「うちの客間よ!」


園子のお家に着いたら、通された客間はどこぞのオシャレなカフェみたいな空間になっていて、テーブルには私たち3人が食べるには十分な量のスイーツが用意されていた。


「す、すごいね、」
「気になってたとこのスイーツ、テイクアウトしてもらったのよね」
「さすが園子…」


さぁ食べよ、って園子がイスに座れと促す。
その間、お手伝いさんが飲み物を持ってきてくれたからいたれりつくせりだ。


「「「いただきます」」」


園子が用意してくれたスイーツに手を伸ばす。
それはすごく甘くて美味しいんだけど、苦いような気もした。


もぐもぐもぐもぐもぐ


無言で食べる私に、園子はここのお店さー、とか。
蘭はこれもしかして4丁目にあるお店じゃない?とか。
そんなことをずっと話してた。


「聞かないの?」


お皿に載せたカヌレを半分食べた後で、そう聞くと、


「言いたくないなら言わなくていいわよ。ねぇ?」
「うん。あおいが言いたくなるまで聞かないよ」
「そーそ!今はこれでも食べなって!」
「これこの間お母さんが美味しかったって言ってた奴じゃないかな」


園子も蘭もそう言って、話しを変えてきた。
だからなのか、


「昨日、江古田に行ったの」


ポツリポツリ、って話しはじめた。


「江古田に行って、快斗くんの幼馴染に会ったんだ」
「へー、幼馴染いんのね、彼」
「うん。髪が長くて、コミュ力も高い、すごい可愛い女の子だった」
「「…」」


サクッてカヌレにフォークを刺したら、ボロッと崩れ落ちた。


「目の前でケンカ始めちゃってさ。すっごい仲良かった」
「…ま、まぁ、ほら、幼馴染って言ったら、ねぇ?」
「う、うん。幼馴染は、さ、」


園子も蘭もきっと思ってる。
「幼馴染って言ったら、蘭と新一くんみたいな感じでもおかしくない」って。
私には幼馴染いないけどさ。
言いたいことはわかるよ。
きっと何でも言い合えるんでしょ。


「いっつも江古田から帰る時にさ、」


なんでも言い合って、きっと誰より信頼してるんでしょ。


「改札通ってホームに降りる階段の前で振り返ると、いっつも快斗くん手を振って見送ってくれるの」
「良い彼氏じゃん」
「そうだよ、ちゃんと見送ってくれるんだもん」
「でも昨日は振り返ったら、ずっとその子と言い合ってた」
「「…」」


蘭と新一くんの絆に誰も入れないように、きっと快斗くんと中森さんの絆にも、誰も入れないんじゃないかな。


「別にさ、喋らないでほしいとか、会わないでほしいとかじゃないよ。だって幼馴染なんだもん。でもさー、そうじゃないじゃん、て、」


そりゃあさ、別に約束してるわけじゃないし、そんないちいち見送ってられない、っていうのもわかるけどさ。
でもそうじゃないじゃん、てなるのはもう、仕方ないことだと思う。


「あの子、ちょっと苦手だな、って思っちゃって、」


きっと快斗くんにも中森さんにも悪気はなかったと思う。
だから余計、嫌だなって感じた。


「…ごめん、愚痴っちゃった」
「いーって!言いたいこと全部言ってきなよ!」
「そうだよ。モヤモヤしたままの方がよくないよ」
「だからそんな顔しない!」


園子がそう言いながらティッシュをくれた。


「ほらほら、まだあるから食べて食べて」
「こっちも美味しかったよ」


そう言って笑う2人を見て、私このまま帝丹にして良かった、って。
本当にそう思った。

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bkm

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