キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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卒業、そして


遭遇


冬休みも終わって、園子に洗脳されてる私の脳は、じゃあ次はバレンタイン!てなるわけだけど、内部進学な私と違って快斗くんは世間一般と同じく受験生なわけで。
快斗くんのお母さんに「いい加減受験生の自覚持ちなさい」とお叱りを受け(当然と言えば当然)受験が終わるまでは、遊んだりとか、控えることになった。
でもそこはやっぱり、つきあってから初めてバレンタイン(しかも去年はバレンタインにあげてない)


「江古田に届けに行くよ」
「えっ、いや俺は嬉しいけど、」
「駅で会って、渡して帰る。それじゃダメ?」
「…わかった」


当日江古田駅に待ち合わせて届けに行くことにした。
…と、言うことは、


「たのもーー!!!」
「いらっしゃい、あおい」
「よぉ、あおい!来たな、今年も」
「今年もよろしくお願いしますっ!」


駆け込み毛利寺に入信する期間になったわけだ。


「今年はフォンダンショコラとかいいかな、って思ってたけど、」
「それはだめ!」
「みたいだから、チョコドーナツなんてどう?」


去年フォンダンショコラは快斗くんが作ってくれた。
それを蘭に話したから、今年は焼きチョコドーナツに決定した。
そしたら日持ちもするし持って行きやすいと思うよ、って。
そういうところまで考えてくれる蘭は優しいと思う。


「おぉ…!」


焼き上がったドーナツを見て、おじさんが初めて歓声をあげてくれた。


「見た目は過去一じゃねーか!」
「今年は気合いが違いますから…!」
「いやお前、俺に食わす気なら毎年その気合い出せよ…」


そして初めておじさんからのお墨付きを貰えて、満を持してバレンタイン当日を迎えることができた。
着替えてる時間が惜しいから、学校帰りにそのまま電車に乗った。
相変わらず毎日連絡してるけど、会う、ってなるのは実はちょっとぶりだからそわそわしちゃう。
喜んでくれるといいなー、とか。
美味しく出来てるはずだけど失敗してたらどうしよう、とか。
そんなこと考えていた。


「あおいちゃーん!」


江古田駅で降りて改札のところまで来ると、改札の向こうで快斗くんが手を振って立っていた。
…今日も笑顔が眩しいっ!!


「ごめんな、わざわざ」
「ううん、いいのいいの」


快斗くんも制服で駅に来ていて、あ、これって制服デートだ、とか思っちゃった。
近くのファミレスに入って、飲み物を頼んだ。
直ぐに帰るって言ったんだけど、飲み物1杯だけ飲んでこ、って言われて思わず流された私は、温かいココアを1杯飲んで行くことにした。


「はい、快斗くん。ハッピーバレンタイン」
「すっげー嬉しい!ありがとな!」


私が渡した袋をほんとに嬉しそうに受け取ってくれる快斗くん。
…ずるい!その笑顔100点満点中150点っ!!!
快斗くんは中身をチラ見して、帰ったら食べるって言ってくれた。
その後は勉強どう?とか、1人で寂しくない?とか、そんなことを少し話してお店を出た。


「1時間経つの早ぇ…」


快斗くんが口を尖らせて言う。
わかる。
快斗くんといると1時間が5分で過ぎる感覚になる。


「で、でももう少しだし、」
「まーなー」


早く終わんねーかな、って言う快斗くんに心の中で大きく頷いた。
じゃあそろそろ改札にいかなきゃね、って時、


「あれっ?快斗?」


快斗くんを呼ぶ声がした。


「何してるの?ここで」
「…」


声の主は近づいてくるけど、快斗くんは声の主からスーッと視線を逸した。


「今日急いで帰ったわりになんで駅、に、」


声の主はそこまで言うと私に気づいたようだった。


「あ、あーっ!!!もしかして帝丹のあおいちゃん!?」
「指差すんじゃねーよっ!!」


声の主が私を差した指をパチン!と快斗くんが叩いた。


「あー…ほら、前に言った幼馴染」
「はじめまして、快斗の幼馴染の中森青子です!あなたは帝丹のあおいちゃん?」
「オメーいきなり馴れ馴れしいんだよ!」
「何よ!だって青子『あおいちゃん』て名前しか知らないもん!」
「だったらちゃんと紹介されるまで黙ってろよ!」
「快斗、紹介する気ないでしょ!?」
「あったり前だろ!?なんでオメーに紹介しなきゃいけねーんだよ!」
「はぁ!?何それ、青子だって可愛いお友達ほしいって言ったじゃん!!」


快斗くんは声の主ー中森青子、さん、と、話し出した。
なんでそう思ったのか、どうしてそう思ってしまったのか、それはわからないけど。
その2人を見て、あ、私この人苦手だ、って。
そう思ってしまった。


「あ、あのっ、」


未だ目の前で口論してる2人に声をかけた。


「私、そろそろ帰らないと、で、」
「あー!そうだよな、悪ぃコイツのことはスルーでいいから」
「なんでよ!?」
「ってぇな!」
「あおいちゃん、もう帰っちゃうなら仕方ないけど、今度青子ともゆっくりお話しよう!」


ね、と言う中森さんはどことなく蘭に似ているような気がする。


「じ、じゃあ、」
「気をつけて」
「あおいちゃん、またね」


改札を通った後で振り返ると、快斗くんと中森さんはまた何か言い争っていた。
それを見たくなくて、足早にホームに出た。

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bkm

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