キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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Summer Vacation


ドキドキ☆夏休み、の、前に


「…あんたさー、」
「なに園子ー?」
「関東大会で予選敗退した後から無駄に元気よね」


全中弓道関東大会も終わり、もういくつ寝ると夏休みって時。
おっとその前に期末テストだぜ☆なんて言ってたところを園子にツッコミ入れられた。
…鋭い!


「そ、そそそんなこと、」
「何なんかあったの?」
「ぅえっ!?」
「はっ!?マジでなんかあったのっ!?」


実は黙ってたんですけど、好きな人からデ、デート?のお誘い受けたんです!きゃー!!
なんていくら園子とはいえ、まだ言えないんだけどねー!!


「あんたまさか私に隠し事する気?」
「や、やだなー!隠し事なんてないない」


私の言葉にジーッとこっちを見てくる園子。
…怪しまれてる。
すっごい怪しまれてるっ…!
でもさ、ちょっと考えたらわかるでしょ?
帝丹が誇る機関銃・鈴木園子にチラりとでも漏れようものなら、あっ!!と言う間に校内どころか校舎すら越えて広がるじゃない…!!
園子が嫌いなわけじゃないの。
むしろ園子のことはおもしろいし、可愛いし、一緒にいて楽しいから大好きだよ。
でもそういうことじゃなくてさ。
黒羽くんとのこと、実際メールやり取り出来るようになって、…と、友達?になってさ。
ちょっとずつ、ちょっとずつだけど仲良くなっていってるところを、まだ誰にも言いたくないだけなの。
それを「隠し事」って言われたらそうなっちゃうんだけど、そういうことじゃなくて、今のこの感じが自分の中ですごく大切でまだまだ誰かに言えるようなものじゃないかな、って。
そんなこと思ったら、やっぱり園子に対してでも何も言えなくなってるだけなの。


「まー、あおいがそう言うなら信じるけど」


園子が手をヒラヒラさせながら言った言葉に、どこかチクンと傷んだ気がした。


「それよりあんた水着どーすんの?」
「何が?」
「夏休みよ、夏休み!新一くんとハワイ行くんでしょ?」
「……えっ!?」


私も今年はどこかに避暑に行きたいのよねー、なんてセレブゥな発言をする財閥令嬢園子様。
いや待って、今おかしな言葉聞いた気がする!


「ハワイって何!?」
「は?新一くんにみんなで花火しないか聞いたらあんたとハワイ行くって言ってたわよ?」


何言ってんのあんたみたいな顔で言う園子。
…いやいやいやいや。


「ハワイってなに!?」


ちょっとそれ初耳なんですけど私!ってにゃんこを捕まえて聞いてみた。


「何ってなにが?」
「ハワイ行くの!?」
「…弓道の関東大会の翌日くらいに、うちの親から電話あったって俺言ったよな?」


私の言葉にさっきの園子のように、何言ってんだお前みたいな顔をした工藤くん。


「…言いましたっけ?」
「それで行くか?って聞いたらオメーも『うん』って言ったから夏休みに2人で行くって話になったんだろ」


ほんとに頭大丈夫か?くらいな目を向けるにゃんこ。
…完全に工藤くんとの会話が記憶から消去されてるのは、関東大会の夜に黒羽くんとの(私的)ラブな初メールの余韻に頭を持って行かれてたせいで、にゃんこの話なんて右から左だったからだと思うの…!


「で、でも夏休みって、」
「あ?」


ハワイに行ったら2週間くらいこっちにいないわけで。
…そんなことしたら黒羽くんからお誘い来ても会いに行けないじゃん!!


「なんか用でもあんのか?」
「えっ!?い、いや、用って言うか…」


…どうしよう。
人生初のハワイ!全く揺れないかって言ったら嘘になる。
でも、でもね。
人生初ハワイ≦黒羽くんからのお誘い、なのね今の私は!!


「つ、追試あるかもなー、なんて、」
「はぁ!?オメーまたそんなこと言ってんのかよ!?どーすんだよ、また勉強合宿になったら!」


工藤くんは私(の、頭)を心配して言ったんだと思う。
でも言われた瞬間、これだっ!!って思った。


「こ、困るよね、ハワイに行けないし!」
「今日から勉強見てやっから、俺んち来いよ」


工藤くんの善意は、ものすごーーーく申し訳ないけど、意味のないものになる。
いや、意味のないものにしてしまう。と、思う。
でもそれでも!なんて思いながら、夏休み前のテスト勉強がはじまった。

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bkm

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