キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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恋の受験戦争


あなたは私にとっての


「新一ここにいた!先生が探してたよ?」
「らーーーーん!!!!」
「えっ!?何?あおいもいたの?どーしたの?」


これがまさに天の助け。
そんな絶妙なタイミングで空手着に身を包んだ帝丹が誇る天使・蘭が現れた。


「え?あ、あれっ?もし、かし、て…黒羽、くん?」
「そーだけど…会ったことあるっけ?」
「あ、会った、っていうか、去年の練習試合にうちに来た時あおいといたところ見たし、」
「…あー、あの時」
「そ、れにその後もあおいからいろいろ話し聞いてた、し…?」


快斗くんとのやり取りをしつつ、蘭が困ったようにチラッと私を見てきた。
…そう!蘭、そうなの!!
今ちょっと一言では言えない状況なの助けてっ!!!


「蘭、オメーは」
「おー!黒羽ここにいたか!探したぞ!」


工藤くんが蘭に向かって口を開きかけた時、職員玄関の方から男の人が快斗くんに向かって手を振りながら近づいてきた。


「そろそろ戻るから準備しろー」
「…はい、今行きます」


どうやら快斗くんは先生の車で来たようで。
先生と一緒に帰るみたいだ。
…良かった!快斗くんには申し訳ないけど良かった!


「あおいちゃん」


なんて私の心の声が漏れたかのように


「夜電話する。またね」


わりと大きめな爆弾を投下して去って行った。
と、いうことはですよ?



「オメー、話しあっから、俺が終わるまでここで待ってろ。いいな?」


その爆弾が着弾した人も新しい爆弾投下するわけで。


「聞いてんのか?」
「…はい、聞いてます」


この後もこの空気が続くわけで。
去って行く工藤くんの後を蘭が追いかけていたのがわかったけど、正門前に取り残された私はこの後どうしようかとずっと考えていた。
全部全部、言わなかった私のせいなんだけどさ。
でもさ、言おうという気持ちはあったってのだけは汲み取ってもらいたいわけ。
いやもう、それも言い訳ですよ?
わかってますよ?
でもですね、私なりにない頭振り絞って時期とか言い方とかいろいろ考えていたわけで


「帰るぞ」
「はい」


どのくらい経ったのか、工藤くんが私のところにやってきた。
…あぁ、ここからまたボロクソ怒られるんだ…。
そう思ってたけど、


「…」


工藤くんは無言で歩いていた。
…え、逆にそれも怖いんですが???


「オメーさぁ、」


学校を出て、人通りが少なくない土手に出たくらいで工藤くんが口を開いた。


「迷惑だったのか?俺がしてきたこと」
「…えっ!?」


なんでそんな結論に達したのか、工藤くんはそう言ってきた。


「なんで!?迷惑なわけないじゃん!私の方こそいっぱい迷惑かけてるのに!なんでそんなこと言うの!?」
「…俺はオメーを………友達だと思ってる」


工藤くんは目を逸らし話しを続ける。


「オメーの家のこととか聞いて、そりゃあ最初は同情があったかもしれねーけど、でも今は…友達、だ」
「うん」
「…けど、……蘭、に、聞いて、」
「え?」
「オメーは違ってんのかな、とか思ってさ」


さっき蘭は去って行った工藤くんの後を慌ててついて行ってた。
…たぶんきっと、その時に何か言ったんだと思う。
蘭が何をどう話したのかわからない。
だけど…。


「工藤くんは、友達ってより…」
「…友達ってより?」
「…か、家族?みたいな…」
「………」


私の言葉に工藤くんは黙って私を見てきた。


「い、嫌なのはわかるよ?」
「え?俺は別に、」
「で、でもなんっていうか…、いつも私のこと心配してくれて、助けてくれて、一緒に旅行にも行ってくれるし、お父さんがいて、お母さんがいて、…それってもう、家族、みたい、だし、」
「…」
「そういう工藤くんをただの友達って感じで言うことはできない、かな、みたい、な…?」


自分で言っててもわけがわからない。
でも工藤くんには本当にお世話になってて、本当に感謝してるってことは伝わってほしい。
私の言葉に頭を抑えて大きなため息を吐いた工藤くんは、


「じゃあアイツは?」


姿勢を正してから私に聞いてきた。


「クロバ!アイツは何?オメーの男か?」
「えっ!?い、いやいやいやいやいやいやいやいやそんな快斗くんとなんて滅相もございません!!」
「…」
「快斗くんはなんて言うか…、快斗くん、も、親のこと知ってる、から…」


工藤くんはその言葉に短くあぁ…と納得とも取れる言葉を吐いた。


「あ、あのさ、工藤くん、」
「新一!」
「…え?」


名前を呼んだ私の声を静止して、工藤くんはそう言った。


「オメー、俺を家族だと思ってんならいい加減工藤くんはヤメロよな。父さんも母さんも『工藤』なんだし!」
「え、あ、あぁ…うん?」
「ほら、呼んでみろ」
「し、しししし新一、くん…?」
「…」
「え?何」
「ま、どーとでもなるし。ほら、帰るぞ」
「…う、うん?」


私の言葉を聞いた工藤…新一くんは家に向けて歩き出した。
ここに来たばかりの時よりも大きくなった新一くんが小声で喋るとたまに聞こえない時がある。
だからこの時「ほんとに血が繋がってるわけでもねーんだ」って言ってたなんて、知る由もなかった。

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bkm

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