キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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初めてのバレンタイン


キミが俺に


あおいちゃんと毎日のように過ごした冬休みも終わり。
お袋もお袋でまたどっかに行くようで、


「次来た時にあおいちゃん泣かせてたらただじゃおかないわよ?」


そう言い残して賑やかに家を後にした。
…あの子ほんとにすげーな、完全にお袋懐柔したぞ…。
まぁ、娘ほしがってたし、あんな子にお母さんお母さん言われたら嬉しく思うのも、わかるっちゃーわかるけどな。
そして2月に入った頃。
あおいちゃんから今度帝丹でスキー合宿があるって聞いた。
スキーかぁ、いいなぁ、なんて思いながら話し聞いてたわけだけど。


「その日バレンタインだけど、合宿でいないから、」


なんか言いにくそうにしてんなー、とか思ったら、そういうことね。
俺自体、毎年その日はやたら体調崩したりいい思い出があんまりない日だ。
去年ようやく体調万全で学校行ったらすげーたくさんチョコ渡された、俺にとっては「よくわかんねーけどチョコが貰える日」くらいな認識しかない日だ。


「そ、その日は無理だけど、帰ってきたら快斗くんに渡す、ね」


だから別に当日に拘る必要もねぇしなー、って思った時だった。


「今年は一応、手作りの予定です…!」
「マジでっ!?」


反射的に声が出てた。


「あおいちゃん作ってくれるの!?」
「え?あ、あぁ、うん、」
「俺すっげー楽しみにしてる!」


やばい、嬉しい!
料理が出来んだから、お菓子も作ろうと思えば作れるだろうけど、自分で作るのと人から作ってもらうのとじゃわけが違う。
しかも「あおいちゃん」から「手作り」って言うのは何気にすげー嬉しい(日頃は一緒に飯作ってるから特に)


「で、でも、失敗するかも、」
「大丈夫!俺全部食う自信あるから!」


あおいちゃんが作るチョコかー。
どんな奴だろうなー。
すっげー甘い奴作ってくれそう、とか。
そんなこと思っていたわけだけど、


「快斗さー、最近良いことあったの?」


ダダ漏れになってたようで、青子からツッコまれた。


「別に何もねぇし!」
「あー、そんなこと言っちゃうの?青子知ってんだー。確か帝丹のあおいちゃんだっけ?」
「お袋か!?」
「青子、おばさんとメル友だもーん!」


ニシシと、青子が笑う。
…あのババァ!!


「快斗はいつ紹介してくれるのかなー?」
「だからそんなんじゃねぇって言ってんだろ!?」
「え?だから彼女じゃないんでしょ?でも『ただの友達』なら青子に紹介してくれてもいいじゃん」
「え…」
「だって同い年だし?青子も可愛い友達ほしいし!別に彼女じゃないなら、紹介してくれても何にも問題なくない?」
「え、や、でも、」
「なにー?やっぱりあおいちゃんは青子の睨んだ通り快斗の『トクベツ』に」
「だからそんなんじゃねーって!」
「ふぅん。まぁ青子はどっちでもいいけど!」


そう言って去っていく青子の後ろ姿に頭を抱えた。
…別にあの子は「トクベツ」なわけじゃない。
俺はたぶんあの子に同情していてそれで。
後になってこの頃を振り返ると、そりゃあもう「トクベツ」じゃないことへの言い訳を並び立てるようになった時期に入っていたわけで。
つまりはそういうことだったと思うのはまだ先の話だ。


「てか、あおいちゃんスキー出来るの?」


あの後、青子から何か言われっかなーと身構えていたものの、アイツも俺の性格を大概理解しているようで、全くあおいちゃんの話しを出さなくなった。
…だから長いこと「幼馴染」っていう関係でいられるんだけどな。
そんなこと思っていた、帝丹スキー合宿の前日。
あおいちゃんに電話をしている時、フッと思ったことを聞いてみた。


「…え?まぁ…?たぶん…?…きっと…?」


あ、これきっとダメな奴だ。
そう思った俺は質問を変えた。


「スキー教室ってさー、だいたい上級から順に分けられるだろ?あおいちゃん何クラスなの?」
「…………E?」
「…何クラスあるの?」
「Aから…Eまで…」


ピッ、と思わず自分のケータイをミュートしていた。


「ふっ、あははははは!!!」


AからEまであるクラスのE!?
それって1番下のクラスじゃねぇか!!
何この子、もしかして運動音痴なの!?
あの性格にそんなオプションつけちゃうのっ!?
ダメだ、笑いが止まんねー…!!


「怪我しないようにね」


あおいちゃんに怪しまれる前に、1つ大きく深呼吸してそれだけ伝えた。
…あの見た目、あの性格に+αで運動音痴かよ!
ずりぃだろ、それ!
どーなってんだよあの子!!


to:芳賀あおい
sub:無題
本文:気をつけて行ってこいよ!怪我しないように!


朝そう送ったメールはいつまで経っても返事が来なくて。
あおいちゃんと毎日連絡取るようになってそれは初めてのことで。
まさか…、って思いと、そんなわけ…、って思いの間で揺れていた時、


from:芳賀あおい
sub:怪我しました
本文:予定変更で先生の付き添いで家に帰ってきました


あおいちゃんからメールが着た。
マジかよ、って思ったのが早いか、気がついたら耳元で呼び出し音が響いていた。
電話に出たあおいちゃんは明らかに元気がなく、中等度の捻挫をしたそうだ。


「快斗くん、…………痛いよー…」


あおいちゃんはいつもどこか、人に対して線を引いているような態度を取る。
それは俺の気のせいかもしれないが、痛かったら痛い、と。
…寂しかったら寂しい、と。
あおいちゃんと話していると、そういう弱さを見せるような言葉をストレートには伝えてこず、線を引かれているような感覚に陥る時がある。
だからこれはすっげーレアケース。
「あおいちゃん」が「俺」に弱音を吐いてきた。


「俺明日行くよ」


それはもう反射的と思われても仕方ない。
気がつけばそう口から出ていた。
その後もあおいちゃんはいいよ、悪いよ、と言ってたけど強引に行く方向で電話を終わらせていた。




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