キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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初めてのバレンタイン


ゲレンデの悲劇


そういうわけで、超初心者クラスのスキー合宿が始まってしまった。


「あ、あ、あ、あ、あ、」
「芳賀さん!ストック持って!!」
「ぎゃあ!!!」
「またやった…」


信じられない!
スキー板を履いただけで滑るってどういうこと!?
なんで!?
ここ斜面じゃなくないっ!?!?


「だからね、芳賀さん。板を平らにしたら滑って当たり前でしょ?滑りそうになったらストックがあるんだからこれで体を支えなさい」
「ハイ…ぐすっ…」
「泣いてたって滑れるわけじゃないの!しっかりしなさい!」


先生にカツを入れられ、板を履いて、ちょっと歩いて、斜面を少し登ってそこから滑るって言うのを繰り返し練習することになったんだけど。


「の、登れなっ」
「そんな体勢じゃ滑って当たり前でしょ!!」
「ぎゃーー!!」


わ、私っ!
絶対今日筋肉痛になるっ!!
てゆうか既に痛い!!
何、なんで?
なんでこんな普段使わない筋肉使わなきゃいけないの!!?


「じゃあ昼食の時間になるから、ホテルに向かいまーす!ゆっくりでいいから先生の後ついてきてね」


そう言われて滑り始めるんだけど


「と、止めてーーーーー!!!!」
「芳賀さん何やってるのーーー!!」


ドサッ!!


来てまだ2時間も経ってないのにもう帰りたいっ!!
私きっと雪山で死ぬんだっ!!
快斗くんにコイツもう生きてる価値ないって思われても仕方ないよ!!
だってその前に死ぬかもしれないんだもんっ!!!


「…うっ…うっ…」
「オメー泣くかメシ食うかどっちかにしろよ…」
「だ、だって先生と雪山に殺されるっ…!」
「あのなー、オメーそんなんじゃいつまで経ってもリフト乗れねーぞ?」
「の、乗らないっ!」
「いや乗る努力くらいしろよ…」


そりゃー工藤くんはいいよ?工藤くんはさ!
何でもソツなくこなしてスキーも出来てリフトだってスイスイだよ!?
でもね、違うのね、私は!
工藤くんとは違うのっ!!!


「かえりたいよぉ…ぐすっ…」
「ま、まぁまぁ、あと2日の辛抱じゃん!」


そう言って園子が私の背中を摩ってきた。
後2日もあるの!?バカじゃないの!?こんなの何が楽しいの!?!?


「はーい、Eクラス、午後の部始めるわよー!」


先生からの地獄へ招待する声が響いた。


「頑張って」


園子の声援に答える元気も既にない私は嫌々ながらもゲレンデに戻って行った。


「じゃあ午後も少し斜面を登って、滑るを繰り返します」


…ううっ…、始まってしまった…
私にももう少し運動神経があったらなぁ。


「うっ…くぅっ!!」
「芳賀さん!何度も言ってるけど、体を捻ればその方向に曲がるってわけじゃないのっ!!」


じゃあどうすればいいんですかっ!!
こんなのがあと2日も続くとか…ほんとに死んでしまうっ!!


「あら嫌だ、吹雪いてきたわね?一旦ホテルに戻りましょうか。これ以上ひどくなる前に順番に滑ってホテルに戻るわよー!」


そう言ってまた先生を先頭に滑り出した。
…滑って戻る!?
そんな高度なこと私に出来なくない!!??
えっ!?
な、何!?
ちょ、え、あっ!板が流され


「ぎゃーーーーーー!!!」
「芳賀さん前見なさいっ!!」
「いやぁぁぁぁぁ!!!」


ドンッ!!!!


い、痛いっ!!!
あり得ないくらい痛い!!!
どこの何にぶつかったのかよくわからないけど、とにかく痛いっ!!!!
足を動かそうにも上手く動かせないし、そもそも身体が痛過ぎて起き上がることが出来ない!!


「あおい!大丈夫か!?」


どこから現れたのか工藤くんの声がする。


「い゛た゛い゛」
「どこが痛む!?」
「ぜんぶ」
「特に痛ぇのは!?」
「…右足?」
「足だな!?動かすんじゃねーぞ!?蘭!救護医は!?」
「今園子が呼びに行ってくれてる!」
「…すぐ先生来るから!身体は?起こせるか?」


そう言う工藤くんの手を借りて身体を起こすと、私はロッジ前のスキー板を立てかけて置いておく場所に激突したんだっていうのがわかった。
…痛いわけだ。
でも人に被害出さなくて良かった…。


「おい、動くなよ?」
「え?ひぃっ!?」


工藤くんに所謂「お姫さま抱っこ」をされた。
…えっ!!!!??


「な、ななななななな」
「吹雪いてきてんだ!このまま外にいたら怪我だけじゃなく風邪引いちまうだろ!?蘭!ドア開けてくれ!」
「わかった!」


工藤くんと蘭の連携プレイでロッジの中のベンチに連れて行かれた私。


「芳賀!大丈夫か!?」


そこに救護担当の先生が到着した。


「…これは念のためレントゲン撮った方が良さそうだな」
「じゃあここから1番近い病院に電話します」


私の足を見た先生たちがバタバタと動き出した。
先生の車で病院に向かうことになり、先生がロッジ近くまで車を持ってくることになった。


「工藤くん?」
「あ?」


先生を待ってる間、工藤くんに話しかけた。


「ご、ごめん、ね。ありがと…」


私の言葉にいつもよりもずっと優しく頭にチョップして、


「しっかり診てもらって来いよ?」


工藤くんはため息を吐きながらそう言った。




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bkm

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