キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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初めてのバレンタイン


駆け込み毛利寺


「へー、スキー合宿」


いよいよ2月って時。
大晦日に快斗くんちに行った時、快斗くんに内緒で快斗くんのお母さんと連絡先を交換させてもらった私は、お母さん直々にまたどこかに旅立つため家を空けるから快斗くんをよろしくと連絡がきた(帰ってきたらまた一緒にご飯食べようって言ってくれた!)
私だけじゃなく世間一般もバレンタインで浮かれる時期に突入してるわけだけど。
今年の帝丹中学はスキー合宿とバレンタインが重なるから、当日に快斗くんに渡す、ってことが出来ない。
でも用意してないわけじゃないよアピールは必要!(園子談)と思ったから、ちょっと早いけど、快斗くんにその話題を出した。


「その日バレンタインだけど、合宿でいないから、」
「あー、はいはい」


私の言葉で全て察したかのように快斗くんが頷いた。
…でもそうだけどそうじゃないの!


「そ、その日は無理だけど、帰ってきたら快斗くんに渡す、ね」
「あー、ほんとに?」
「う、うん…!今年は一応、手作りの予定です…!」


私の言葉に、


「マジでっ!?」


予想以上の反応が返ってきた。


「あおいちゃん作ってくれるの!?」
「え?あ、あぁ、うん、」
「俺すっげー楽しみにしてる!」


えー、嬉しい!なんて電話口で言う快斗くん。
の、言葉が嬉しいっ!!!
今からそんなに喜んでくれるの!?!?
工藤くんなんて、食えないもの作るんじゃねぇぞ、くらいに言うのにっ!?!?!?


「で、でも、失敗するかも、」
「大丈夫!俺全部食う自信あるから!」


ほんと楽しみにしてるー、って言って快斗くんは電話を切った。
…ヤバい、今自分で自分の首を思いっきり絞めた気する…。
ど、どどどどどどどうしよう!!
そんな快斗くん今からそんな喜んでくれるなんてそんなそんなそんな


「はーい?」
「らーーーーん!!!!」
「えっ!?何、どうしたの!?」


快斗くんの期待に全力で答えたい私は、駆け込み毛利寺の門を勢いよく叩いた(実際は蘭に電話した)
事情を説明した後で蘭はわかったと言ってくれて、


「じゃあいつからに」
「明日からでお願いしますっ!」
「え、えー…」
「明日!からでっ!!お願いしますっ!!!」
「…わかった、わかった」


私の気合いを感じ取ってくれた蘭の了承の元、毛利家特訓会が開かれた。


「おい!あおい!!」
「去年よりは格段にマシでしょ!?」
「…俺はまだ何も言ってねぇじゃねぇか…」
「おじさん今なんか文句言いそうな勢いだったじゃん!!」
「だってお前、こう毎日毎日ガトーショコラ食わせられる身になってみろよ!」
「食べられるんだからいいじゃん!!」
「いや、うん、まぁ食べられるだけ去年より断然いいんだが、そうじゃねぇだろお前、」
「大丈夫だよ!おじさんはダンディだからちょっとくらい太ってもイケオジだよ!!」
「…そ、そうか?まぁ、そうだよな!俺だしな!!」
「そうそう!!」
「ちょっとお父さん!調子に乗らないでよね!?あおいもあんまりお父さん乗せないでよ!!」
「…えー、だってぇ…」
「イケてんだから仕方ねぇだろ」
「ほんとにもー…」


去年は、おじさんのため息が毛利家を包んでいたけど、今年は今年で蘭のため息が毛利家を包んでいた。
そしてガトーショコラもよほどのことがない限り失敗しないな、ってところまで来た頃には明日がスキー合宿!っていう日にちになっていた。


「てか、あおいちゃんスキー出来るの?」


行く前に電話しよー、って快斗くんから電話が来たから準備を終わらせた私はまったり電話していたわけだけど。


「…え?まぁ…?たぶん…?…きっと…?」


ゴニョゴニョと口篭った私に快斗くんは質問を変えた。


「スキー教室ってさー、だいたい上級から順に分けられるだろ?あおいちゃん何クラスなの?」
「…………E?」
「…何クラスあるの?」
「Aから…Eまで…」


私の言葉に本当に全てを察したらしい快斗くんは、少しの沈黙の後、


「怪我しないようにね」


それだけ言ってそれ以上深くは聞いて来なかった。
…私今もしかして快斗くんに、え?コイツもしかしてうんちなの?ヤバくね?スキーも満足に出来ねぇの?有り得なくね?勉強もダメだしうんちだし生きてる意味あるの?なくね?くらい思われたんじゃないの?ねぇ私大丈夫なの?快斗くん優しいから絶対口に出さないけど、ここまできたらいっそ口に出してボロクソ言われた方が清々するのにっ!


「す、少しくらい滑れるようにならなきゃ…!」


ここで出さなくていいヤル気を出してしまったことを後悔するのはスキー合宿に行ってからのこと。



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bkm

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