キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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初めてのバレンタイン


去年からの進歩


「と、いうことがありまして」
「でかした!!彼ママに好かれちゃえばこっちのもんよ!!」


新学期が始まった帝丹中学A棟渡り廊下前のトイレ。
恒例の園子会議が行われている。


「好かれた、かなぁ?」
「だって料理教えてくれるって言ったんでしょ?好かれたんだって!」
「なら良かったけど…」


快斗くんは翌日からまた米花町に毎日来てくれてた。
一緒に初詣に行ったし、初売りセールを冷やかしにも行った。
それが5日まで続いたんだけど、新学期始まるし(工藤くん帰国してくるし)学校準備しようね、ってことで昨日は今年になって初めて快斗くんと会わない日だった。
毎日会ってたから、やっぱりちょっと寂しいとか。
そんなこと思ってたのを察知したかのように、5時間電話してたから最終的に今日も会えば良かったんじゃね?って言って笑ってた。
そして本日始業式の帝丹中学で、とにかく休み中園子にお世話になったからと(また気を遣って極力メール控えてくれてたから)園子を捕まえて話しこもうとして、じゃあ連れション行くわよ、で今に至ります。


「思ってた以上にイイ感じじゃない!」


園子はわりとよく「イイ感じ」って言うから、ほんとに「イイ感じ」なのか微妙なところだと思うけど、悪いと言われるよりはいいから良しにしとく。


「それであおいは今年のバレンタインどーするの?」
「…その話題早くないです?」
「手作りやるならあんたには練習が必要だから言ってんでしょうがっ!」
「いったーい!」


パチン!とおでこを叩いてきた園子。
園子になんでおでこ叩くのか聞いたら、あんたのおでこが1番いい音するから!って言われたけど、絶対園子のおでこの方がいい音すると思う!


「で、でもさー、今年のバレンタインて、うちスキー合宿じゃなかった?」
「そんなの帰ってから渡せばいいじゃない」
「そりゃそうかもだけどさ」
「あんたねー、その彼も絶対期待してるって!どんなチョコ貰えるかなーって!今年は本気で頑張りなさいよ?」
「…まるで去年本気で頑張ってなかったみたいな言い方だけど、」
「歯が折れるんじゃないかってほど硬いクッキーや炭みたいなマフィン作っといてよく言うわね」


園子って案外記憶力がいい。
すごく痛いところを突かれた私は、


「らーーーん!!」
「え?何どうしたの?」


今年も蘭に助けを求めることにした。


「あー…、なるほど。黒羽くんに手作りチョコを…」
「そう!ダメかな…?」
「ダメってわけじゃないんだけど…」
「けど?」
「お父さんが、」
「え?おじさん?」
「うん。去年あおいが作ったの食べてたでしょ?その時に『来年もうちで作る気なら、もっとちゃんと腕上げさせてからうちに呼べ』って…」


あはは、とすっごい困ったように蘭が笑う。
…おじさん酷い!


「じ、じゃあうちで作る?」
「あぁうん。じゃあそれでとりあえず試しに作ってみようか。いつがいい?」
「今週からでお願いしますっ!!」
「ははっ、了解」


快斗くんが食べられるような物を作れるようにならなければいけない私には時間が足りないわけで。
早速今週末から、と蘭にお願いして、週末は珍しく快斗くんじゃなく、蘭と園子とで過ごすことになった。


「じゃあまず、この小麦粉を、」


園子は園子で楽しそうだから参加したい、って言う理由なため特にあげたい子はいないようだけど、蘭はやっぱり工藤くんにあげるのかな、なんて考えてた。


「じゃあ後は焼き上がりを待つだけだけど、」


オーブンに入れてスイッチを押した後で蘭が言った。


「あおい、少し見なかったうちに料理の腕上がったんじゃない?」
「えっ!?」
「あ、それ私も思った。前に見た時より手際が良くなってる気がしたのよね!」


まさかこの分野で褒められる日が来るなんて思いもしなかった…!!


「ほ、ほんと?」
「ほんとほんと!去年はほら…なんて言うか…ねぇ?」


蘭は去年の毛利家の大惨事になっていたキッチンを思い出したのか、苦笑いをしながら言葉を濁した。


「でも今日はどの順番で混ぜた方がいい、とか、洗い物もこれ先洗っておいた方がスペース確保できる、とか?そういう細かいことだけど、スムーズに出来てたから、あ、ちょっと腕上げたなーって思ったんだよね」


隣にいた園子がウンウン、と頷いて聞いていた。


「そ、そう、かな…」
「うん。そう思うよ?」
「いっつも快斗くんに言われた通りにしかやってないんだけどね。これ先混ぜた方がダマにならないよー、とか、今これ洗っておかないと油っこいのと混ざって時間かかっちゃうよー、とか。そういうことなんだけどね。ちゃんと教えてくれるんだ」
「…そっか。黒羽くんが教えてくれてるんだ…」


蘭は1度目を閉じて、何かを考えているようだった。


「あんたサッサとコクりなって!」
「…はっ!?無理無理無理無理!!そんな今やっと友達なのにそんなこと出来るわけないじゃん!!」
「なーにが友達よ!」


私の言葉にヘッ!と園子が言う。
…コクるって、告白するってことでしょ?
快斗くんに私がっ!?
そんなことできるわけないじゃん!!!
せっかく今すごく仲良くさせてもらってるのに、それを自らぶち壊しに行けっていうの!!?
無理に決まってるじゃん!!!!
何かを考えてる蘭。
呆れ顔の園子。
そしてコクるなんて状況想像しただけで動揺してる私たちの間に、焼き上がった音が聞こえるのはもう少し。



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