キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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奇跡のその先


お礼だよ


「うーん、と、つまり…?」
「つまりね、俺たちの予想だと、あおいちゃんの記憶はみんなから消えたまま、って奴だったの!」


3億騒動が落ち着いて、そもそも今どういう状況なのか、って話を快斗くんがしてくれた。


「なんで?」
「え?なんで、って、」
「だって私が戻れたんだからみんなの記憶も戻るんじゃないの?」


でもそれって、無駄に先々のことを考え込むメンツ(快斗くんと新一くん、プラスで紅子ちゃんまで!)だからそんなこと考えるのであって、私からしたらなんでそんなこと考えてるのか、って話だ。


「いや、うん、そー、なのかもしれねぇけどさ、」


私の言葉に納得いかなそうな声を出す快斗くん。
快斗くんの話だと、本当に綺麗さっぱり、みんなの記憶から私は消えていたらしい。
記憶だけじゃなく、写真とかの記録からも(だからかモンタージュ写真に使われそうな私の絵が部屋に飾られてた…。しかも新一くんからプレゼントされた物だって話で何それ新一くん音楽なんて5段階評価でマイナス5だけど美術こんなに上手かったっけ?ってなった!)
だからみんなが覚えてない、って言う結論になった快斗くんたちの考えはわからなくはない。
でもお母さんが私の心配してくれた、ってことは覚えてるわけだしそれはつまり、


「お礼…」
「え?」


そこまで考えた時だった。
なんで今その事を思い出したのか、自分でもわからないけど、フッと、ここに戻って来る直前のことを思い出した。


「そうだ!お礼だよ!」
「お礼って何が?」


私の言葉に、快斗くんが思いっきり顔が「???」ってなりながら聞いてきた。


「言われたんだよね、これはお礼だ、って!目が覚めたらわかる、って!」
「…誰に?」
「んー…、声しか聞こえなかったけど、たぶん最初にここに連れてきてくれた人!」


そっか、そうだよ、これはお礼だ。
「今度こそ」私のほんとの願いが叶うようにって、


「ちっ、ちょっと待って!」


私が1人で納得してたら、快斗くんが慌てたように声をかけてきた。


「なぁに?」
「え!?いや、何、っていうか、…なんでその人があおいちゃんにお礼するの?」


目をぱちぱちと忙しなく動かしながら、快斗くんが聞いてきた。


「んー…、前も言ったけど、その…天使?は、『最期の願いを叶えること』で出世?する仕組みみたいでさ、」
「うん」
「その人が初めて願いを叶えた人間が私だから、『願いを叶えさせてくれたお礼』って言われたの!目が覚めたらわかるよ、って!だからきっと、快斗くんたちが疑問に思ってることが、その人からのお礼だよ!」
「え、ええー…」


私の言葉に、未だ信じられない!って感じの顔をしてる快斗くん。
でも信じられないも何も、実際起こったわけだし!


「…とりあえず、工藤からの連絡を待とう。あっちではどういう状況になってんのか把握してから米花町に行った方がいい。で、俺たちは俺たちでお袋から聞ける情報聞くけど、あおいちゃんはテキトーに相槌打ってくれるだけでいいから」
「え?でも」
「相槌だけでいいから」
「う、うん…」


快斗くんからの圧に負けて、私はとりあえず相槌女になった。
私たちの打ち合わせ(?)も済んだタイミングでお母さんからご飯できたよー、ってリビングに呼ばれた。
私は相槌女、私は相槌女、私は


「あおいちゃん、美味しい?」
「はい!このうどん、ダシが効いてて美味しいです!これ何使ってるんですか?」
「それはねー」


相槌どころか、普通に話しながら美味しくうどんを食べていた私。
なんだ、心配することなかったじゃん!なんてちょっと気を抜きそうになった時だった。


「あおいちゃん、それで住む場所はどうなったの?」


不意にお母さんが聞いてきた。
これは…!って私が思ったのとほぼ同時に、現在イステーブルに座っている私の右足にトン、と、何かが当たった。
何か、なんて、そんなの私の右側に座ってる快斗くんが自分の足でトン、て合図を送ってきたとしか考えられない。


「それなんだけどさー、」


テーブルの下で秘密の合図って、なんかちょっとドキドキじゃない!?なんて思ってる私を他所に、快斗くんが口を開いた。


「千影さん、何か良い案ない?」


ちゅるん、とうどんを啜って、快斗くんはお母さんの方をチラッと見た。


「良い案、て、あおいちゃんが住む場所の、ってこと?」
「うん」
「そんなのうちに住めばいいじゃない」


お母さんは、ねぇ?と私に優しく笑いかけながら、なかなか大きい爆弾を落としてくれた。


「いやいやいやいやいやいやいや」
「え?嫌なの?」
「えっ!?いっ、嫌って、だってそんな私たちまだ高校生で、」
「高校と言えば確か休学中って話だったわよね?ならいっそそのまま江古田高に転校手続きしたら?」
「大賛成!」


お母さんの言葉に、快斗くんがバッ!!と私の手を取り、私の方に向き直って頷きながら言った。


「このまま一緒に暮らそ」
「いっ、いやいやいやいやいや」


私今うどん啜ってただけなのに、なんで突然快斗くんのお家で快斗くんと暮らす話になってるの!?


「嫌なの?」


そんなものすごく傷ついた顔を快斗くんにされちゃったらさ、


「っ、嫌、って、わけじゃ、なくさ、」


って言っちゃうわけ。
でもそんなこと言ったら、


「んじゃあ決まりね!」


なんてすごいマイナスイオン放ちながら快斗くんが言うのわかってたよっ!!


「ちっ、ちち、ちょっ、と、考えさせて、」


だってそんな私いきなりそんな同棲?同棲なの?それは同棲ってことなの?お母さん公認で同棲しちゃうの?でも待って駄目だってそんなまだ早いってだってそんな私ただの女子高生で、なんて。
ニコニコ笑顔の快斗くんと、あおいちゃんが住むならちょっと片づけしなきゃね、なんて言うお母さんの声に、うぇあーー!?って思いが加速して、うどんの味もわからなくなった。

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bkm

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