キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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キミのおこした奇跡


「家族」との距離


あの後、誰にも邪魔されないようにセーフハウスの1つに篭り、丸2日、世界中のありとあらゆるビッグジュエルを調べ上げた。


「くぁー…ねみぃ…」


さすがに二徹はキツい(しかも大阪行った直後)
でも何日も何日も学校休むとなると、


「快斗!もう大丈夫なの?電話も通じないから心配したんだよ!」


また別の問題が出てくる。


「おー、もうダイジョー」
「拾い食いしてお腹壊して大変だから治るまで知り合いの家に行ってたって紅子ちゃんから聞いたよ?もう小学生じゃないんだから拾い食いとか止めなさいよ」


…確かにな?
オメーに任せるって言ったのは俺だぜ?
けどあの女、俺をなんだと思ってやがる…!


「快斗お腹壊したばっかりだから、今日は消化に良い物にしたよ」


そう言いながら、青子は弁当袋を差し出してきた。


「あー…、あのさぁ、」
「うん?」
「こういうの、今日でもう終わりにしようぜ」
「…え?」


ー今度こそ、快斗くんの本当に大好きな子と幸せになってねー


「言ってなかったけど、俺彼女…っていうか、好きな子いるから」
「…えっ!?快斗に!?ほんと!?」
「うん。中学の頃からずっと、本当に大好きな子」
「…」
「今ちょっと遠く離れてるけど、その子とまた逢えた時、きっとこういうのされてたって知ったら嫌がんだろ?弁当作ってもらって、すっげー助かったけどさ。もう、今日で終わりにしようぜ」


俺の言葉に、驚いた顔をした直後、明らかに沈んだ顔をした青子。


「そっか…。快斗、好きな子いたんだ」
「…オメーの作った奴がマズいとかじゃねぇから、青子は青子で、今度別の奴に作ってやれよ」
「ははっ、なにそれ。お弁当作ってあげなきゃって思う人なんて、他にいないよ」


以前、園子ちゃんが言ってたな…。
青子は俺だから世話を焼いてんじゃねーか、って。
つまりこれは、その答えなんだろう…。


「ごめん。それから、今までありがとな」
「…なんだか青子、フラレたみたいじゃない?」
「なぁに言ってんだよ。オメーは俺にとって『家族』だろ?フるフラないの関係じゃねーよ」


それはあおいちゃんがアイツに対して散々言ってた言葉。
フるとかフラないとかじゃない。
ずっと、そう生きてきた。
本当の家族よりも近いところにいた、俺の幼馴染。


「オメーに男出来た時は俺がお祝いしてやるよ」
「んー…、でも青子そういうのよくわかんないからなぁ…」
「青子ちゃんはおこちゃまですねー」
「うるさいわよバ快斗!」


あおいちゃんはこの会話を聞いて、どう思うだろうか?
やっとはっきりさせたのか、って、呆れるだろうか?
それとも…。
そういうことを望んだわけじゃない、って…、そう言うだろうか…。


「随分良い顔になったわね」
「オメー、ちゃんと目ついてんの?明らかに寝不足でクマできてんだろ?どこが良い顔だよ」


学校に着いたら、紅子からUSBメモリを渡された。
パンドラについて、大してわからなかったらしいが、それでもアイツなりにまとめてくれたようだ。


「オメーがこんなにしてくれるとか、対価払いきれるか心配になってくんな」
「あら大丈夫よ」
「え?」
「だって呼び戻してくれるんでしょう?私の『親友』を」
「………………や、そこは本人の意向を大事にしたげて?」
「なら黒羽くん。あなたが私の下僕になるだけね」
「…それは全部終わってから考えよーぜ」


以前あおいちゃんは言っていた。
紅子は友達がいないんじゃなく、いらないんだ、と。
でも友達は大切だからいつか自分を友達と思ってくれたらいいな、と。
…もう十分、友達みてーだぞ。


「今日も校門のとこに黄色い車止まってるって」
「なんだろうね…。変な人じゃなきゃいいけど」


放課後、帰ろうとしたら青子たちがそう騒いでいた。
…黄色い車?


「あ、あれ?あの子確かキッドキラーってテレビに出てた、」


もしかして、なんて思いながら校門に向かったら、噂の黄色い車から1人の少年が出てきた。


「待ってたよ、黒羽兄ちゃん」


ニッコリ笑う名探偵。
…の、目の下にもクマが見えるから、コイツもコイツでいろいろ調べたりなんだりしてたのが手に取るようにわかった。


「え?え?快斗、キッドキラーのコナンくんと知り合いだったの!?」
「こんにちは。お姉さん、黒羽兄ちゃんの友達?」
「こんにちは、コナンくん。快斗の幼馴染の中森青子です。コナンくんには、いつもうちのお父さんがお世話になってます!」
「中森?って、もしかして中森警部?」
「そう!青子のお父さんだよ」
「…なるほど」


今の会話で何かを悟ったらしい名探偵は、ボソッとそう呟いた。


「それでどーした?コナンくん。1週間後って話じゃなかったか?」


俺の問いに、


「だって僕、待ちきれなくてぇ。早く黒羽兄ちゃんと答え合わせしたかったんだ!」


あー、出た出た、猫被り!って言う仕草を見せた。
…まぁこっちも出揃ったしちょうどいいか。


「んじゃあ来るか?俺んち!」
「いいの?わぁ、嬉しいなぁ!」
「帰りは俺がバイクで送ってやっから、博士には帰ってもらっていーぜ?」
「うん!じゃあそう伝えてくるね!」


そう言って名探偵は一旦車に戻った。
俺と青子、そして再び戻ってきた名探偵の3人で帰路に着いた。
…すげー、微妙なメンバーだな、おい。


「黒羽兄ちゃん、昨日学校休んだでしょ?僕昨日も会い来たんだよ」
「おー、悪ぃな、腹壊しててさー」
「快斗ってば拾い食いしてお腹壊したんだよ!コナンくんは拾い食いなんてしちゃダメだからね?」
「えー、拾い食いなんて、そんなことしたらお母さんに怒られちゃう」
「そうだよねぇ?ほら!小学生でもわかるようなことよ?」
「ヘイヘイ」


青子がいる限り、俺は本題に入らないし、コイツも当然、本題には入らないようだ。
名探偵は青子と別れ青子が自宅に入ったのを確認した途端、


「隣の家の幼馴染、ねぇ…」


ボソッと独り言を言った。


「なんだよ?隣の家じゃ悪ぃのか?」
「いいやー?ちょっと思い出しちまったんだよ」
「何を?」
「前に警視庁に呼ばれた時に、中森警部の部下が『中森警部には高校生の可愛い娘がいて、幼馴染の彼氏がいる』って聞かされたなってさ」
「…それっ、て、」
「その後、誰かさんは肺炎なりかけて救急車乗せられたらしいけど、原因は雨に打たれただけじゃなかったのかって今になってわかったよ」


ヤレヤレ、と、小学生らしからぬ顔をした名探偵。
…コイツが言った、警視庁に呼ばれた日ってのは、俺にも心辺りがあるわけで。
あの日、あおいちゃんが突然口走った言葉の意味が、今ようやくわかった気がした。


「ここに来て俺も答え合わせ出来るとは思わなかったんだけどな」


とりあえず客人だし、コーラを出しながらデカいため息が出た。


「俺コーヒーがいいんだけど」
「あるわけねーだろ」


その言葉に今度は名探偵がデカいため息を吐いた。


「で?話してくれんだろ?月下の奇術師さんよ。今がどういうことか、ってのを」


名探偵のその言葉に、口角が上がった。

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