キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

天空の難破船


タイムオーバー


ダイニングに戻ると、テログループの人たちは警視庁の刑事さんたちに縛り上げられていた。
手すりを上手く使い、脱走できないように…。
これで事件は終わる。
みんながそう思って気を抜いた時、


パァン!


銃声が響いた。


「ソイツらを縛り上げたんなら、今度はあなたたちが縛られる番よ」


撃ったのは確か、テレビスタッフのお兄さん。
もう1人のテレビスタッフのお姉さんは、銃を次郎吉さんの頭に押しつけそうていた。


「うぬらまさか、」
「悪いわねぇ。私たちも欲しくなっちゃったのよ、ビッグジュエルが!」


次郎吉さんにそう言うお姉さんの顔は、お昼に一緒にテログループに震えていたお姉さんとはまるで別人だった。


「貴様っ」


パァン!


「勝手に動いたらこのジジィの頭ぶち抜くわよ?」
「っくそ!」


中森警部が前に出ようとしたら、すかさず威嚇したお姉さん。


「お前らにロープをやるから、全員の手を手すりに固定させて縛りあげろ」


「お前ら」と言われたのは、私、園子、そして蘭。
真っ先に蘭がロープを持とうとしたら


「お前は動くな。話は聞いてるぜ?空手の達人だそうじゃねーか。余計なことされちゃ死体が増えるだけだぜ?そっちの2人で他の奴らの手を縛れ」


お兄さんは蘭に銃を向けてそう言ってきた。


「あんたの『おじ様』の命が惜しけりゃ、サッサと動きな」


お姉さんがゴリッと次郎吉さんの頭に銃をくっつける。
園子と顔を見合わせ頷きあって、2人で順番に縛っていくことにした。

 
「しっかり縛りあげろよ?緩めてたらテメェらの頭に穴が開くぞ」


中森警部とか、刑事さんたちのロープは緩く縛ろうかなんて思っていたのがバレバレだったみたいで、釘を刺された私たちは、次郎吉さんを含む全員のロープをしっかりと結んだ。
そして、


「じゃあ最後にお前たちの番だ」


そう言われて私と園子も手を縛られた。
ところで、テログループとテレビスタッフのお兄さんお姉さんが仲間割れした。
話がよくわからないけど、元々このお兄さんお姉さんはテログループを唆してただけで、仲間じゃなかったらしい。


「な、なんか傾いてない?」
「えっ、えっ!?すごい傾いて、」
「ほんとだ、だんだん垂直になってる!」
「なになになんで!?」
「っ!?」


近くにいた園子や蘭も突然の床の傾きにパニックになった。
あまり動かない手でも、必死に手すりに捕まる。
そんな中でもロープで固定されていたことが幸いし、垂直になり壁が床になった場所に激突せずに済んだ。


「と、とまっ、た…?」


園子の声が聞こえたタイミングで、垂直になった飛行船は、元の位置に戻っていった。


「な、なんだったの…?」
「わっかんないけど、でもお兄さんたち、気絶したっぽいよ…?」


壁に激突したようで、向こうの床で伸びてるお兄さんとお姉さん。
…これで本当に事件は終わった、の、かな?
そう思った時だった。


「いやー、驚きました!いきなり床が傾くんですから!」


快斗くんが悠然と、ダイニングに現れた。


「おのれキッド!」
「おっと!」


キッドに向けて叫んだ中森警部を、軽く躱した。
…やっぱり戻ってきてくれた!
快斗くんも無事そうでほんとに良かった…!


「コナンくんはっ!?」
「あのぼうやなら無事ですよ?もうじき、ここに来るでしょう」


蘭の言葉に、快斗くんはそう答えた。
そうして私の側にやってきて、私のロープを解いた。


「じゃあ、皆さんのロープも解いてやってください」
「あー!キッド様!私もー!!」


園子の言葉を丸っとスルーして快斗くんはダイニングから出ていこうとした。


「待てー!キッドーー!!」
「ぅわっ!…もちろん、警部のロープは最後でよろしく」
「キッドー!こらーー!!」


快斗くんが誰かのカバンをがさがさと漁って、何かを取り出した。


「では皆さん。お約束通りお宝はいただいて参ります」
「待て!逃げるなキッド!!」
「おのれコソ泥めっ!」
「怪盗ですよ!」


そう言ってレディスカイを片手に、優雅に快斗くんは去っていった。


「あおいっ!ロープ解いてっ!!」
「あ、う、うん」


園子に言われて、ロープを解き始めた。
のは、いいんだけど、


「ん…?これ、かたっ、」
「結んだのあんたでしょうがっ!!」


思いの外キツく結んでしまったようで、なかなか解けずにいた。
悪戦苦闘の末、テログループ以外の全員のロープが解けたのは、実に5分後のことだって。
ふぅ、っと、息を吐いた私の目の端に、


「…」


私のタイムリミットを告げたあの人が立っているのがわかった。
どうしてそう思ったのかわからないけど…。
この人はきっと、他の人には見えないんだと思った。
私にだけ見ることのできる、私の最期の願いを叶えてくれた、私だけの天使。
少し離れた場所にいるこの人の口が、ゆっくりと動いた。


時間だ


言葉では聞こえなかったけど、そう言われたのがわかった。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -