キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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天空の難破船


繋がる事件


「お待たせしました。お飲み物とケーキです」


席に座り、園子たちが言っていたケーキを運んできたのはウェイターになった快斗くんだった。


「あ、ありがとう、ございます」


快斗くんて何でもできるって知ってたけど、こういうことも卒なくこなせるってすごいなぁ…って。
思わず見入ってしまった。


「美味しそう!あれ?この生クリームの中に入ってんの何?
「あー…、ブラックベリーじゃない?あおいはどう思う?…あおい?」
「なーにポーッと見つめてんのよ!」
「え…」
「今のウェイターさん見てたの?」
「はぁ?あんな奴があんたの好みだっけ?」


そう言って園子と蘭がウェイターになってる快斗くんを見ていた。


「べ、べべべべべ別にそんなんじゃ!」
「旦那に言いつけちゃおうかなぁ?」
「旦っ、な、とかじゃ、ない、しっ!」
「へー?ふぅん?そーお?」


にやにやしながら園子がケーキに手を伸ばした。


「それよりも、今日よ!今日!!」
「え?」
「あー!待ち遠しい!早く大阪に着いてキッド様に会いたぁい!そして願わくは、その不敵なクチビルに私のクチビルを重ねて」


園子が空中に向けて、んー、ってちゅう顔をした。


「園子さー、さすがにそれはダメだって」
「ダメって何が?」
「京極さん怒るって」
「ハッ!もしかして私を巡って2人の男が!?」
「京極さん、怒るよね…絶対…」
「…バレないといいね…」


蘭と2人でヤレヤレ、って頭を振った。


「うん?なに?コナンくん」


その時なんだか視線を感じて、そっちを見るとコナンくんがジッとこちらを見てた。


「あおい姉ちゃん、何かあったの?」
「………え?」


コナンくんの言葉に、園子と蘭がバッ!とこちらを向いたのがわかった。


「黒羽の兄ちゃんと何かあったの?」
「え?快斗くん?べ、つに、快斗くんとは、」
「じゃあ何があったの?」


ジーーーッと、コナンくんがこちらを見ていて。


「べ、べベベべ別に何も、」
「…この前さぁ、電話したんでしょ?新一兄ちゃんと!」
「え?そうなの?」
「あ、あぁ、うん。この前ちょろっと、」


コナンくんの言葉に、蘭が反応して、それに頷いた。


「新一兄ちゃん言ってたよ?『アイツ絶対、なんか隠してる』って!」


ジーッとコナンくんが私を見てくる。
…いやいやいやいやいや、その新一兄ちゃんあなたじゃんかっ!!!


「べっ!別に隠してるとかそんなそんな」
「じゃあ聞き方変えるね」
「う、うん?」
「あおい姉ちゃんが何か悩んでること、黒羽兄ちゃんは知ってるの?」
「えっ」
「黒羽兄ちゃんが知ってて今なのか、知らなくて今のなのか、どっち?」


目の前でジッと私を見るコナンくん。
それと同じように、園子と蘭からも視線を感じて、逃げ場がない。


「か、快斗くん、は、知らない」
「言わないの?」
「っ、いっ、言わない!」
「………ふぅん」


首を振りながら答えた私に、コナンくんはたった一言そう言った。
園子は頬づえをついたし、蘭はテーブルの上の手を握りしめた。
ただ3人とも、視線を落としていた。
その時、ダイニング内に携帯電話の音が響いた。


「何?何をたわけたことを!」


そう叫んだかと思ったら、電話を切った次郎吉さん。


「どうかしたの?おじ様」
「なんでもない。ただの悪戯電話じゃ」


あ、これ絶対事件の始まりだ。
そう思ったことを裏づけるかのように、次郎吉さんと中森警部たちはどこかに行った。


「あれっ?子どもたちもいないね?」
「食べ終わって、トランプするから部屋に行くって」


子どもたち、って言っても哀ちゃんは残っていて。
哀ちゃんがそう教えてくれた。


「くつろいでいるところ悪いが、こっちに集まってくれんか」


しばらくして中森警部が乗務員を含めた全員をダイニングに集めた。


「間違いないんですか?」
「悪戯なんじゃ…」
「いやぁ、残念ながら今本庁に確認したところだ」


ここで事件が繋がった。
飛行船と殺人バクテリア。
やっぱりこれは、私が見ていない映画のお話。


「とにかく、さっきも言ったようにBデッキの喫煙室は封鎖」
「うわぁぁぁ」
「え?」


突然、ダイニングにうめき声が響いた。
声のするほうに顔を向けると、あれは確か…ルポライターの…………誰?


「た、助けてくれ…」
「ほ、発疹!?」
「まさか感染したのか!?」
「そう言えばあの人、さっき喫煙室に」
「たすけてくれぇ…おねがいだぁ…なんだかぐあいがわるいんだぁ…」
「落ち着け!落ち着きなさい!」
「しにたくないんだぁ…」


近づいてくるルポライターの人に驚いて立ち尽くしていたらグイっと小さい手に右手を引っ張られた。
コナンくんが、私の手を引っ張り、盾になるような形で私の前に出た。


「…蘭!」


その時ちょうど蘭が前に飛び出てルポライターの人に当身を食らわせた。


「す、すまん」
「いえ…」
「蘭くん!すぐに手を消毒した方がいい!」
「こっちに!配膳室に消毒用アルコールがあるわ!」
「はい!」


蘭がバタバタと配膳室に向かった。


「…この船から感染者を出してしまうとはっ!」
「他に喫煙室に入った者は?」
「きゃー!」
「ちょっと!大丈夫!?…ほ、発疹が!!右手と、左腕にっ!」


一瞬の出来事。
本当に一瞬で、この船に、殺人バクテリアがいるんだって恐怖が伝染していった。
…これで感染者2人。
私はこの映画を見てないから、いつ、誰が、どうなるかわからない…。


「蘭!大丈夫?」
「うん。ちゃんと消毒したから」
「蘭が強いの知ってるけど、あんなこと危ないって!」
「ごめん、ごめん。なんか体が勝手に動いちゃって」


困ったように笑う蘭を、園子と2人で見ていた。

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bkm

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