キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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天空の難破船


天空の貴婦人


「みんなー!次郎吉オジサマがスカイデッキに案内してくれるって!」
「ビッグジュエルが見られるわよー!」
「「「やったー!!」」」


園子と蘭の号令で、みんなでスカイデッキに行くことになった。


「よーし!お宝が見たいかー!?」
「「「おー!!!」」」
「じゃ行くぜぇ!!」
「「「おー!!」」」


おったから!おったから!と探偵団が、園子に続いてウキウキでスカイデッキに向かう。


「どんな奴だろうね?レディスカイ」
「貴婦人、って言うくらいだし、すっごいこう…マダムが似合いそうな宝石なんじゃない?」
「なによ、マダムが似合いそうな宝石って!」


その後を蘭と2人で続いた。


「皆さん、集まりましたか?」
「「「はーいっ!!」」」
「それでは、私チーフスチュワードの浅野がこれからスカイデッキにご案内いたします」
「すっげぇぇぇ!周りみんなガラスだぞ!」
「飛行船の内部が見られますね!」
「それでは出発します」


みんなでエレベーターに乗ったけど、すごい広いエレベーターでまだ人が乗れそうな、そんな大きさだった。


「このベルツリー1世号は全長246メートル。最大直径42.2メートル。かの、ヒンデンブルク号より、全長・直径ともに1メートル長い、文字通り世界最大の飛行船です」
「…すごーい…」
「ほんとね…。こんな内部まで見せてもらえるなんて思わなかった!園子に感謝だね」


ふわっと蘭が笑う。


「園子だけじゃなく、蘭にも感謝だよ」
「なぁに?いきなり」
「…なんでもない」
「コクピットには最新のコンピューター制御の操縦装置を搭載しております」


チン、と音を立てて、エレベーターがスカイデッキに到着した。


「「「うわぁぁ!!」」」
「明るーい!」
「空が見えますよー!」


見上げる天井はガラス張りで、どこまでも青が続いていて。
あー、もしかしたら天国に、1番近い場所、なのかもしれないなぁ、とか。
だから今日で最期なのかも、とか。
そんなことを思った。


「新一くんて、」
「うん?」


ポツリ、と呟いた言葉に、蘭が反応した。


「青空色の瞳だよね」


私の言葉に、


「あー…、そうかも」


蘭は大きく頷いた。


「でも、」
「うん?」
「青空が本当に似合うのは、快斗くんだと思う」


見上げれば吸い込まれそうな真っ青な空に、快斗くんの姿が浮かぶ。


「知ってるの?黒羽くん」
「え?」
「あおいがすごく何かに悩んでること」


不意に聞いてきた蘭の言葉を、一瞬理解できなかった。


「あ、あー…、悩んでるわけじゃ、ないんだけどさ…。どう、だろう、ね。すごく頭良くて、いろいろ考えちゃう人だから、もしかしたら何か気づいてる、かも?」
「言わないの?黒羽くんにも」
「…快斗くんは、さ。ほ、ほら、もう、彼氏じゃないし、ね?」
「そっか」


蘭はそれだけ言って、口を閉じた。


「お宝見せろよ!」
「子供が見るもんじゃない!」
「えー?」
「いいじゃないですか!」
「ダメ!」


ビッグジュエルを見ようとした探偵団の前に、中森警部たちが立ち塞がった。
でも次郎吉さんはそんなことお構いなしみたいだ。


「紹介しよう」
「あ、ちょっと!」
「あれが今日彼奴をおびき寄せるラピスラズリ。ビッグジュエル・レディスカイじゃ」
「綺麗!」
「この青い色がなんとも言えないわね!」
「金色の粒々が光ってますよ!」
「お星様みたーい!」


金の粒がキラキラとしているラピスラズリが飾られていた。
の、だけど、みんながいて、この位置からだとあんまり見えないなぁ…。


「その金色の粒のうちで一番大きなもの。何かに似ておらんか?」
「え?一番、大きい粒、ですか?」
「あ!女の人の顔に見える!」
「その通り!それがレディスカイという名の由来じゃ」


次郎吉さんが名前の由来を説明してくれるけど、私の場所からだと女の人の顔がよく見えずにいた。


「まさにこのスカイデッキに飾るに相応しいお宝じゃ!」
「ふん!そんなお宝をなんであんななんの変哲もないガラスケースに入れて展示するんだ?」
「おお。警部にはあの機関銃の弾をも跳ね返す防弾ガラスと、わしのこの指紋と暗証番号が一致しない限り開かない鉄壁の装置がわからんか?」
「そんなもんなんの役にも立ちゃしねーよ」


ビービービービー


「え?何?」
「なんかケースから、」
「うわぁぁぁぁぁぁ」
「お、お父さん!!」


展示台の中からびっくり箱によくあるような仕掛けのグローブにパンチされておじさんが悲鳴をあげた。


「なんてことしやがる!このクソガキーーていててててて!!!!」


手をあげた瞬間、おじさんの体に電流が走った。
…この仕掛け、快斗くん大丈夫かな?
一応、あとで連絡した方がいいかも…!


「こうして拳銃を突きつけられればあんたのその指で開けざるを得ないだろう」
「ま、彼奴がそんな真似をするとは思えんが」
「…う、うわぁぁ!!?」


次郎吉さんがパネルを操作した直後、叫び声をあげて中森警部が落ちて行った…。
パンチに電流に落とし穴…。
快斗くん、ケガしないといいな…。


「彼奴が現れるのは夕方。それまでは各々遊覧飛行を楽しもうぞ」


次郎吉さんはそう言ってエレベーターに向かった。


「私たちも一旦下に降りよっか」
「そだね」


そう言って3人で下に降りて、とりあえずトイレ行こうぜ、ってなり、トイレに向かった。


「はぁ、すっきりした!」


ほんとにすっきりしたような顔で園子が個室から出てきた。
今日は温かいとはいえ(蘭に至ってはオフショルだし!)上空に来たらどことなく肌寒いような、そんな感じしたから園子の気持ちがわからなくもなかった。


「そうだ!あの絆創膏見た?」
「え?」
「絆創膏よ!絆創膏。まだ見てないの?」
「まさか!…あ!ふふっ、何これ!」


蘭がカバンから出した絆創膏を覗き込むと「真さんv」っていう文字が書かれていた。


「ちなみに『快斗love』バージョンと『新一…?』バージョンもあるんだけど、それはどうした?」
「あっ!ヤバイよ!飛行船に乗るとき作業員の人にあげちゃったよ!この絆創膏!」
「え、ええー…」


待って、あの作業員て、だって…。
まさかの本人に「快斗love」って書いた絆創膏あげちゃったってこと?
そりゃあ私たち今つきあってないけどさ。
でもそれ絶対私が書いたって思われる奴じゃん!


「でもまぁ、もう会わない人だろうしいいんだけど…」


蘭は呆れた顔でそう言うけど…。
快斗くん…、気づいたかな…?
それ恥ずかしいね?
私恥ずかしい。
快斗くん、気づいたなら、どう思ったかな…。
なんて思ったら、


「私、もう1度あの宝石見て来ようかな?」


そう口にしていた。
なんとなく…。
今この飛行船で1番快斗くんに会う確率が高いのは、そこだと思ったから。


「さっきはみんながいて良く見られなかったから」
「そう?んじゃあ私らは下に戻ってるね!」
「うん。後で下に行けばいいんだよね?」
「待ってるね」


蘭と園子と別れて、もう一度、ビッグジュエルがあるスカイデッキに向かった。

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