キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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天空の難破船


友達になれて良かった


「あおいー!らーん!!こっちこっち!!」


「ここ」に残ると決めたものの、特に何かが変わるわけでもなく。
あ、でもなんとなく、今まで関わった人、1人1人と丁寧に接していた気はするけど。
あっという間に1週間が過ぎて飛行船乗船当日。
快斗くんは「途中で飛び移るより、最初から乗ってる方が楽だから」って理由で、最初から飛行船に乗るらしい。
誰に化けるかわからないから、目の前に来た園子をジッと見た。


「ん?どした?」


でもたぶん、園子じゃないな…。
一緒に来た蘭も、当然おじさんも違う。と、思う。


「ふわぁぁ…、おっきい飛行船だねー」
「そりゃそうよ!おじ様がここでも世界一を目指して、世界最大級の飛行船にしたんだから」


乗船のため、飛行船に近づくけど、近づけば近づくほど、てっぺんが見えなくなって、飛行船の巨大さが伝わった。


「私、飛行船初めてで、ち、ちょっと緊張?してる、かも…」
「あおいも?私も初めてだよー」


蘭が柔らかく笑う。


「飛行機も、だけど、こんな大きいのが空に浮かぶなんて、不思議な感じする」
「わかるわかる。きっと浮いてる原理がわかれば不思議じゃないんだろうけどね。私生まれて初めて飛行船を見た時、UFOだと思ったし!」
「な、なんかわかるかも」
「だよね?それを新一に言ったら呆れられたんだけど、」
「あー、新一くんならすっごいバカにしそきゃっ!?」
「っと!…大丈夫ですか?」


話しながら歩いていたら、階段のところで躓いてしまった。
そこを作業員のお兄さんが助けてくれたんだけど。


「すみません、ありがとうございます。あおい、大丈夫?」
「う、うん…。すみませ、」
「いえ…」


お兄さんは咄嗟にサッ、と帽子を深く被り直しけど…。
心が跳ねた気がした。
…ほらね、年季入ってる、筋金入りの快斗くんマニアなんだからわかるよ。
私を助けたことで肘の辺りを擦りむいたらしいお兄さんに、蘭が絆創膏を渡していた。


「ひろーい!飛行船の中って思えない!」


飛行船、て、大っきい風船の下にちょこんとボートみたいなのがついてる、ってイメージしかなくて、中が狭そう、って思ってたんだけど。
園子に連れて行かれて、飛行船内に入ると、どこのホテル?ってくらい広々とした空間が広がっていた。


「ここ!個室休憩所になってるの」


離陸前に探偵団のみんなとは別行動で園子が私と蘭を個室休憩所に引っ張ってきた。


「ほんとにちょっとした休憩スペースだね」


室内にはふかふかのソファに小型冷蔵庫もついてて、ほんとにちょっとした休憩ができる部屋だった。
まぁ座って、なんて園子が言うから頷きながらそのふかふかなソファに座った。


「それで?」
「うん?」
「あおい、なんかあった?」
「………えっ」


園子は身を乗り出して聞いてきた。


「な、なななななんか、って…?」


私の言葉に園子はあからさまに大きなため息を吐くし、蘭はすごく困った顔をした。


「あんたねー、バレてないと思ってんの?」
「痛っ!」


そう言いながらおでこを突いてくる園子。


「私ら、何年のつきあいになると思ってんのよ?あんたの様子がおかしいってことくらいバレバレなのよ!」
「そうだよ。先週のボーリング行った日のちょっと前くらいに何かあったでしょ?」


園子と蘭が交互に言う。


「べ、つに、何もない、よ」
「あんたねぇ、」
「何にもない…けど、」
「けど?」
「2人と友達になれて良かったな、って」
「「…」」


そう言った私の肩を黙って園子が抱いて、私の手を蘭が握りしめた。
それからしばらくして、もうすぐ離陸するって船内放送が流れたから、探偵団のみんなと合流することにした。


「わー!トロピカルランドだ!!」
「お城が小さく見えますね!」
「おもちゃの遊園地みたい!」
「んー!絶景、絶景!」


園子も蘭も、その後何も聞いてこなかった。
…快斗くんに会うために「ここ」来た。
でも、「ここ」に来たからこそ会えた2人に、心からありがとうって思ってるんだ、って。
例えそれを2人が忘れてしまうとしても、今だけは少しでも伝わったらいいなって思った。
その後、一緒に乗ってきたルポライターの人とか、テレビディレクターさんとか簡単に紹介された。
なんでももっとスタッフが来る予定だったけど、例の殺人バクテリアの方に人手を取られてこの飛行船に来たのは3人だけなんだとか。
そのことに次郎吉さんはおこおこしてた。


「それにしても犯人達はあの細菌をどうするつもりなんすかね?」
「そうそう!感染したらほとんど助からないって言うじゃない?」
「なんか、飛沫感染で移るらしいじゃないっすか」


あの殺人バクテリアは、咳くしゃみ、唾液とかで移るんだ、って快斗くんが教えてくれた。
だから咳してる人とか近寄っちゃっダメだよ、って。


「なーに!殺人バクテリアだかなんだか知らねぇが、俺なんか病原菌がウヨウヨしてるところを飛び回って来たがこうしてピンピンしてるぜ!人間様は細菌よりつえぇんだ!もっとも、オメーらみたいなガキはコロッといっちまうがな」
「「「ええー!?」」」
「やめてください!子供達を怖がらせるようなこと言うのは!」
「そうよ!無神経すぎるわ!!」
「なーに!例え日本のどこで細菌がばら撒かれようがこの飛行船に乗っていれば大丈夫じゃ!安心せいっ!」


子供に対しての感染率が高いバクテリア。
…新一くん、今はコナンくんだから危ないんじゃないかな…。
大丈夫かな…。
快斗くんのこと、新一くんのこと、何より自分自身のこと。
心配なこと、気になること、いろんな気持ちを乗せて、飛行船は一路大阪に向かう。

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bkm

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