キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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夢をみていた


同士発見


「あーあー、これじゃあキッド様現れないじゃない!」


探偵団のみんなが借りた部屋にいた時、8号車が火事だ、って車内が大騒ぎになって。
前の車両に行ってくれって車内放送流れたから慌てて通路に出たら、あっ!という間にパニックになった人の波に飲み込まれて。
当初名古屋まで行く予定だったベルツリー急行は、急遽1番最寄りの駅で停車することになった。
駅に到着して雪崩れのようにホームに人が溢れて。
キョロキョロとするけど、やっぱり快斗くんの姿はなく。
そりゃあキッドとして乗ってたんだから、快斗くんの姿がないのは、当然と言えば当然なんだけど…。
殺人事件に火事とか、快斗くんが大丈夫か心配で園子たちからちょっと距離を置いて、快斗くんにメールした。


「君たちはこれからどうするんだい?」


園子たちのところに戻ったら、世良さんがそう聞いてきた。


「まぁ、元々行き先不明の列車に乗って、到着したら決めよっか、って言ってたのよね」
「そうそう。コナンくんの話だと名古屋って言われたけど途中で降ろされちゃったから…」
「なーんもないわよね、この駅!」


園子と蘭がかわるがわるで世良さんに答えていた。
だからこのまま東京戻ろうかと思う、って。
その時、

ピロン


メールの着信音が響いた。
バッ!と画面を見てみたら、


from:快斗くん
sub:無題
本文:無事無事!ありがとな!ちょっと聞きたいことできたから時間出来たら教えて


快斗くんからそうメールが着ていた。


「ちっ、」
「うん?どした?あおい」
「ちょっ、と、電話してきていい?」
「…ははーん。いいわよー!その間にどーするか考えとくから!」


園子の生温かい目線と、手を振る蘭に見送られ、駅のすみっっっっこの方で蹲って電話をかけた。


「はいはーい、快斗くんですよー」
「無事!?」
「ぶはっ!無事だって言ったじゃん!心配しすぎだって」


耳元からはいつも通りの快斗くんの声が聞こえてきて。
元気そう、ではあるけど、油断できないのが快斗くんだ。


「ケガは!?ない!?」
「ん?んー…、まぁ大丈夫大丈夫」
「ケガしたの!?今どこ!?」


ちょっと濁しながら答えた快斗くんに、私のセンサーが動いた。


「え?今?こ、こはー…、山の中?」
「どこの山っ!?」
「…なんで怒ってるの?」
「怒ってるんじゃないの!ケガしたなら手当てしなきゃでしょ!今どこ!?」
「あー、大丈夫、大丈夫」
「大丈夫じゃないでしょ!?救急箱持ってきてるから、私そっち行く!!だから今どこ!?」
「え?」
「え!?」


私の言葉に、快斗くんが声を裏返した。


「あおいちゃん、もしかしてあの大荷物、救急箱入ってたから?」
「そーだよ!何があってもいいように、包帯や消毒液もあるし、熱冷まシートに胃腸薬もあるから!だから今どこ!?」
「…………」


私の言葉に、快斗くんは急に無言になった。


「快斗くん?」
「あー、ごめんごめん。あおいちゃん今駅でしょ?」
「え?う、うん」
「園子ちゃんたちのところから抜けれそ?」
「それは大丈夫、じゃないかなぁ?」
「じゃあさぁ、俺のツレが今その辺でレンタカー借りてるはずだから、あおいちゃん回収してもらうように言うよ」


だから園子ちゃんたちと別れてちょっと待ってて、と快斗くんは言った。
ものだから、園子と蘭のところに向かい、別行動することを伝えた(世良さんはいつの間にか消えていた)


「なになに、どーしたの?」
「ち、ちょっ、と、知り合い?が、」
「黒羽くん?」
「え!?…ま、まぁ、そんな関係なような、そうでもないような?」


私が言葉を濁したら、園子の目がキラン!て光った気がした。


「後日報告だからね!」
「え?い、いや、別に、」
「んじゃあ、また東京でね!」
「あおいも気をつけてね」


そしてグイグイと背中を押され、追い出されるかのように園子たちの輪から抜けることになった。
…いいのか…悪いのか…。
そして快斗くんに言われた通り駅のすみっこで待つことしばらく、


「芳賀あおい様ですか?」


私に声をかける人ー寺井さんーが現れた。


「は、はい!そうです!」
「快斗ぼっちゃまから話は伺っております。寺井と申します。どうぞ、お乗りください」


そう言われ、レンタカーに(さすがに助手席は躊躇っていたら、後ろにどうぞ、って言われたから助手席の後ろ側に)乗り込んだ。


「あ、あの、」
「はい?」
「快斗くん、今どこに…?」
「ぼっちゃまは現在、」


寺井さんに回収されたはいいけど、寺井さんからは話しかけてこないから、意を決して私から話しかけた。


「快斗くん、大丈夫って言ってたけど、本当にケガしてませんか?」
「多少の擦り傷などはあるかもしれませんが、大きなケガはないようです」
「良かった!」


寺井さんからの言葉は、快斗くん本人から聞くよりも安心感があった。


「心配ですか?」
「そりゃあそうですよ!快斗くん『カッコ悪いから』なんて痩せ我慢しちゃうから心配で」
「…ぼっちゃまはやはり、」
「快斗くんにカッコ悪いとこなんてないんだから、痛いの我慢しないで、って思いません?」
「…」


ちょっと身を乗り出して言った私の言葉に、寺井さんは後ろに座っていてもわかるほど驚いた顔をしていた。


「あの…?」
「…ぼっちゃまのお父様の話はご存知ですか?」


不意に寺井さんは私に聞いてきた。


「黒羽盗一さん、ですよね?マジシャンの」
「はい。もう随分前に亡くなられましたが、とても素晴らしい方でした。誰もが憧れる、そんな男性です」


以前、奇術愛好家の人たちとの話でも出ていた快斗くんのお父さんの話。
どんなに月日が流れても、ずっとみんなの記憶に残っている魔法使い。


「その盗一様の血を引かれるぼっちゃまに格好悪いところがあるはずがないです」


寺井さんがそう言い切った。
ものだから、


「わかります!快斗くんのお父さんのことは知らないけど、快斗くんにカッコ悪いとこなんてないです!」


助手席の背もたれに顔をつけるくらいの勢いで身を乗り出して同意した。


「それなのに快斗ぼっちゃまは直ぐ痩せ我慢を、」
「わかりますぅ!もう痩せ我慢する方がカッコ悪いって前にはっきり言ったんですよ」
「そうですよね?無理する方が良くないのだと、私も常々伝えているんですが、」
「快斗くん、イマイチわかってくれないんですよね。心配かけたくないみたいなこと言ってるけど、黙ってる方が心配だ、って話で、」
「そうなんです、そうなんです。ぼっちゃまは我々に心配をかけまいとしてるのでしょうけど、それがかえって、」
「あ!次の信号で止まったら助手席行っていいですか?」
「ええ、もちろんです」


そして信号で止まってる間に寺井さんの隣に行った。


「それでその時の快斗くんがほんっとうにカッコよくて、王子様ってこの人のことを言うんだって思って」
「そうでしょう、そうでしょう。本当にぼっちゃまは盗一様によく似ておられて」
「やっぱり快斗くんのお父さんもそんな感じだったんですか?」
「えぇ、昔の話になりますが盗一様は、」


こうして快斗くんと合流するまでの間、寺井さんといかに黒羽家の男がカッコいいかについて語り合った。

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