キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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漆黒の特急


お望みとあらば


ベルツリー急行乗車当日。
今回はジイちゃんと2人で乗客に化けて乗り込むことにした。


「んじゃあ、ジイちゃんは打ち合わせ通り喋んなくていーから」
「えぇ。それとなく口元を動かせばいいんですね」


今日の俺たちは小蓑夏江75歳とその付き添い住友昼花37歳の2人組だ。
ジイちゃんは足の悪いバァさん役になってもらい、それを介護する人間として俺が同行する。
ちなみに当の本人たちには上手いこと言いくるめ済で今回はキャンセルしてもらったから鉢合わせする心配はゼロだ。
ホームにも人が集まってきたし、サッサと乗り込んでベルツリー急行の中を確認して、


「ん?」


なんて思ってたら、向こうの方にあおいちゃんが見えた。
…の、だけど、やたら荷物デカくね?
えっ?今日日帰りって話しだったよな?
あれ俺んち泊まりに来る時のカバンじゃね?
は?なんでそんな大荷物なの?
目的地不明ってことだけど、運行ルート見たらたぶん終着駅は名古屋だろうし、日帰りでイケるって俺言ったよな?
…さすがだ、あおいちゃん。
乗車前から俺を翻弄させやがる。


ピロン


なんて思ってたらメールが着た。


to: あおいちゃん
sub:緊急連絡
本題:この前話してた女子高生探偵の世良さんもベルツリー急行に乗るって!


世良、って、言ってた新キャラだよな。
名探偵も乗るわけだし、探偵2人、か(眠りの小五郎はノーカウント)
とりあえずあおいちゃんに返信をと、メールした。
直後、


「ぷっ!」


キョロキョロとあおいちゃんが辺りを見渡し始めた。
ま、そんな見渡したくらいでわかったら中森警部も苦労しねーだろうな。
そんなこと思いながらを8号車のD室に向かった。
あおいちゃんたちは確かB室だったか。
…あおいちゃんが俺の変装に気づいたのは「知っていた」からだ。
そして今回の件はあおいちゃんは「知らない」こと。
…なら鉢合わせしても今回は気づかねーだろう。
むしろこれで気づいたら俺への愛を感じちゃうね。


「…」


乗車してからはジイちゃんには本当に必要なこと以外喋らないように言ってある(だって声変えれねーから)
だからアイコンタクトを交わし、車内の下調べに向かった。
そして一通り調べ終わり室内に戻る。
宝石があそこで、通路がこうで、と、事前に調べていたことと脳内で磨り合わせいた時、


「お客様にご連絡致します。先ほど車内で事故が発生したしたため、当列車は予定を変更し、最寄りの駅で停車することを検討中でございます。お客様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、こちらの指示があるまでご自分の部屋で待機し極力外には出られぬようお願い申し上げます」
「マジかよ…」


車内放送が聞こえてから薄く扉を開けたら通路に人だかりが出来ていた殺人事件だなんだと騒いでいたものだから、思わず素の声が漏れてしまった。
さすが俺が唯一認めた名探偵なだけがあるな、死神工藤新一。
オメーが行く先々で、予想外の殺人事件が起こるじゃねーか…。


「どうしますか?」


俺が思わず漏らした声を聞いたジイちゃんもそう聞いてきた。
それに対してシーッと口元に人差し指を立てながら


「しばらく様子を見ます」


住友昼花の声で答えた。
とりあえず他の部屋の人間も外に出てるし、俺らも通路に出るか。
そう思った時、再びメールを受信した(マナーモード中)
メールはあおいちゃんからで、


to:あおいちゃん
sub:緊急連絡その2
本題:夏祭りに一緒だった安室さん、小五郎おじさんの弟子の探偵でベルツリー急行にいます!私それも知らない!


緊急の連絡だった。
…夏祭りの安室さん、て、園子ちゃんが蘭ちゃんにって用意した毛利探偵事務所の下の喫茶店で働いてる金髪の兄ちゃんだよな?
アイツ探偵だったのかよ…。
確かに何か隠してそうと思ったけど、探偵か…。
なんだろうな、俺の直感が言ってる。
絶対ぇそんなオチじゃねーだろ、あの男。
喫茶店員で、探偵で?
まだ何か隠してるだろあの感じ。
探偵のわりに、それこそ工藤新一や白馬なんかとはまた違う空気の奴だ。
警戒するに越したこたぁねーしな。
とりあえずあおいちゃんには了解とだけ返信した。
そして事件解決に乗り出すのは、やっぱりコイツ、江戸川コナン。
眠りの小五郎と、恐らくこの男みてーな格好してる奴があおいちゃんが言っていた新キャラJK探偵、だな。
俺のところに来たから当時の状況説明をしたら、一旦探偵たちは部屋から出ていった。
…なかなかめんどくせぇことになってんな。
まぁ、隙あらば工藤新一に貸し作りにいこうかなくらいな気持ちでいたのは確かだ。
そう思っていたのは確かなんだが…。


「おばあさんたち、怪盗キッドとその手下でしょ?」


事件解決の延長で俺の正体に気づいた名探偵は、通報せずに直接俺のところにやってきた。
そして、


「オメー、俺に恩を売りつけるって言ってたよな?それを今買ってやる。力を貸してくれ!」
「力?」
「この彼女に変装して、悪い奴らの追撃を上手くかわしてほしいんだ!」


とか言う無茶振りをしてきやがった。


「奴らと話す内容は別室から彼女本人がイヤホンを通して伝えるから」


そう言いながら動画を見せてくる。
…コイツは、確かに幼いが工藤新一の面影ははっきりとある。
そしてこの動画の彼女も、面影がある。


「おい名探偵。これは貸し2だぜ?」
「何?」
「この彼女『哀ちゃん』だろ?」
「…」


名探偵の沈黙が肯定を示していた。
…やっぱりな。
カマかけたけど、あの子も小さくなったパターンだったか。
て、ことは、コイツの言う「悪い奴ら」ってのは、この大人の姿の哀ちゃんしかしらねー、ってことで。
そいつらの追撃をかわせって?
そりゃあオメー、高くつくぞ、って話しで。


「殺人事件に関わりたくねーお前らを見逃してやっただろ?」
「んじゃあ、それはオメーの分の貸しな?けど肝心の哀ちゃん分の貸しが残ってるぜ?俺はバレちまおうが関係ねーし?」
「…彼女になれるのかなれねぇのかどっちだ?」
「名探偵のお望みとあらば、完璧に変装してみせましょう?」


俺の言葉、一度深く息を吐いた。


「わかった。それで飲んでやる」
「交渉成立だな」
「時間がない!急いでくれ!」
「オメー、ほんっと清々しいほどの俺様ヤローだな」
「ごちゃごちゃ言ってる暇あったら動けよ!」
「へいへい。…て、ことだから、予定変更な?」


俺たちの会話を一通り聞いていたジイちゃんに言うと、ジイちゃんは無言で頷いた。
そして名探偵から簡単に作戦内容を聞き、部屋から変装道具を持って空いているトイレに立て篭る。


「ハンググライダーを貨物車に隠しておきました」
「サンキュー、ジイちゃん!」
「ですが恐らくこの貨物車、爆弾が仕込まれてます」
「マジで?」
「はい。この量だと、一車両吹き飛ばす分はあるかと…」
「…オーケー、オーケー。んじゃまぁ、ちょっくら人助けしてくっから、ジイちゃんはそのまま変装解いて一般客として下車してくれ」
「かしこまりました。ぼっちゃま、お気をつけて」
「おぅ!ジイちゃんもな!」


変装途中で着たジイちゃんから連絡に答え、名探偵から受け取ったケータイ(Bluetooth付き)をポケットにしまった。

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