キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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漆黒の特急


乗車


あっという間に9月の終わり、ベルツリー急行が出発する、怪盗キッドが犯行予告を出した日になった。


「あおい、おっそーい!…て、あんたどしたの?その荷物」


ここからは私もどうなるのか本当にわからない。
て、ことは、快斗くんが怪我することもあるかもしれないって思った私は、念のため家にあった救急箱を箱ごと持ってきた。
ものだから、わりと大きいカバンでベルツリー急行に乗ることになった(だってどれ減らしたらいいかわかんないし!)


「な、なんかあった時のためにね、」
「なんかってなに?」
「え!?そ、れはわかんないけど、何かに巻き込まれたりとか?」
「大丈夫よー、そう何度も記憶なくなったりしないって!第一あんたそんなに心配性だったっけ?」
「そーいうことじゃなくてさぁ…」


呆れながら私のカバンをつんつんする園子から、カバンを守るように抱えた。
私のことじゃなくて、快斗くんが怪我するかもしれないじゃん、て話で。
しかもちょっと怪我する、じゃなくて、大怪我かもしれないじゃん。
一応紅子ちゃんに連絡したら、たった一言、大丈夫でしょ、でバッサリ切り捨てられた。
大丈夫じゃなかった時が怖いんじゃん!!
って、思ったゆえの救急箱だ。


「うわぁ!すっごい蒸気機関車って初めて見る!」
「俺も!」
「大迫力です!」


園子からカバンを守りながらみんなのところに来ると、探偵団のみんなが大興奮していた。
…私も蒸気機関車初めて!!


「哀ちゃん、風邪治ってないの?」


歩美ちゃんが心配するだけあり、哀ちゃんは咳き込んでいた。
ガサガサッと、カバンの中に手を突っ込み漁る。
…あった!


「は、はいっ!」
「え?何?」
「咳止め!効くからそれ!」


私が差し出した薬を無言でジーッと見ていた哀ちゃん。
の、腕をドン、と肘で無言のツッコミを入れたコナンくんを私は見逃さなかった…。


「い、要らなかったら、」
「ありがとう」


哀ちゃんは小声でそう言って咳止めを受け取った。
…やっぱり救急箱ごと持ってきて正解じゃん!!(コナンくんに圧かけられたから渋々感あったけど!!)


「ほーら、ガキンチョども!ベルツリー急行のオーナーである鈴木財閥に感謝しなさいよ?特別に席を取ってあげたんだから!」


私たちのやり取りが終わったのを見た園子が、子供たちに話かけた。


「まっ、うちらの席はあんたらと違ってピッカピカの一等車だけどね」
「そういえばその一等車だよね?今度キッドが狙うって予告したの」


そう…。
つまりは快斗くんの犯行現場にうっかり知らずに足を踏み入れちゃう可能性もあるから、なるべく車内で動かないようにしないと…。


「僕はそんな泥棒よりも毎回車内でやってるっていう推理クイズの方が気になるけどな」
「せらさんっ!?」


そんなこと思っていたからか、声がして振り返った先に予想外の人が立っていたから声が裏返ってしまった。


「僕は探偵。乗るのは当然」


…初めて世良さんの私服見たけど、これは確かに痴漢と間違えられてもおかしくない…。
園子悪くない…。
怪しい動きしてて振り返った先にこの見た目の人いたらこの人が痴漢だって思っちゃう…。


「あおいくん、荷物が多くないか?」
「あ、こ、これは、いつ誰がどうなってもいいように、」
「どうなってもってどうなる想定でそんな大荷物で来たのよ、あんたは!」


園子がツン!と私のおでこを突いてきた。


「たっ、例えばキッドに興奮した園子が鼻血出すとか?」
「出さないわよっ!」


失礼しちゃうわね、なんてプリプリしながら園子はベルツリー急行に乗り込んだ。
…一応、快斗くんに世良さんのこと伝えておこう、そうしよう。
そう思った私は、見るかどうかわからないけど(何せ犯行直前だし!)ソッと快斗くんにメールを送った。


ピンポン


直後、メール着信音が響いた。


from:快斗くん
sub:無題
本文:連絡サンキュー!てゆーかあおいちゃん、今日の荷物多くない?


メールを見たらそう書かれていたから、バッ!と後ろを振り返ってりキョロキョロ辺りを見渡すけど…。


「あおいどうかした?」
「あ、いや…、なんでもない?」
「そう?子供たちも乗ったし、私たちも乗ろう?」


蘭にそう言われて、私もベルツリー急行に乗り込んだ。

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bkm

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