キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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漆黒の特急


2つが1つに


ミラクルランド爆弾事件も無事終わり、夏休みが終わった。
休み明け、俺が真っ先にやったことと言えば、


「何よこれ?」
「桃にミカンにパインにレッドチェリー、そしてなんと!フルーツミックスまである缶詰セットだ!!」


紅子に貢ぐべく、朝から紅子の'机に缶詰を並べることだった。
あおいちゃん曰く、紅子は執事に料理を任せてるから缶詰とか知らなくて珍しいんだと思う、ってことで。
それは一理あると思った俺は、前回の桃缶も含めて缶詰セットを貢ぐことにした。


「だから何なの?これは」
「俺の誠意」
「…黒羽くん、あなたあの子に似てきたわね」
「マジで?それちょー褒め言葉!」


工藤新一はじめ、園子ちゃんや蘭ちゃん。
俺のおふくろもそうだし、クリス・ヴィンヤードだってそうだ。
何より目の前の紅子ですらそうだろう。
ソイツらを籠絡させるような天然人たらしに似てるとか、褒め言葉だろ。


「それで?これがどうしたの?」
「確保したんだよ、協力者Bを!」


俺の言葉に紅子はハッとした顔をした。


「そう、見つかったのね」
「だから第二段階に入ろうと思ってな」
「第二段階?」
「あぁ!…協力者を得て何をするのか、何よりどうしたら『この世界』に留まらせることが出来るのかを考える必要があるだろ」


メモリーズエッグの事件の数日後、あおいちゃんは紅子に、俺に全てを話したと伝えたそうだ。
だから俺が全てを知っていると、紅子も知っている。


「それで缶詰?」
「そ!協力者Aに知恵出して貰おうと思ってな」
「安易すぎよ」
「前より個数と種類増やしたじゃねーか!」


ジロリと俺を見た後で、あからさまに呆れた顔をした紅子。


「こんなことされても、私が知ってるわけないでしょう」
「んー、でももし今現在、『この世界』に留まらせる手段を思いつける人間がいるとしたら、オメーしか考えられねーんだよ」


俺の言葉に紅子は視線を落とした。
そして息を吸い込み、俺を真っ直ぐ見据え、


「あなたは怪盗キッドを正義だと思う?」


そう聞いてきた。


「は?なに?」
「白き罪人を正義だと思うか聞いてるの」


紅子は至極真剣に聞いてきた。


「…正義なわけねーだろ。犯罪者じゃねーか」


そう答えた俺に、


「そうね、犯罪者よ。だから『辛い道』になる」


紅子はもう一度、視線を落とした。


「パンドラについて」
「あ?」
「あなたはどう聞いているの?」
「どう、って…」


紅子が言わんとすることがわからず、


「不老不死を可能にするもの、だろ?」


自分が認識しているパンドラについて答えた。


「…私が調べた文献には、こう書かれていたわ。『不老不死すら叶えるにはボレー彗星が近づいたときに月にそれをかざす。さすれば涙を流さん』」
「ああ、それは俺も」
「『不老不死を叶える』ではなく『不老不死すら』よ」
「…おい、まさか」


紅子はもう一度俺を見据え、


「未来のあおいさんの言葉、そして文献に書かれていたことを踏まえ、現状可能性があるのはたった1つ。パンドラだけよ」


はっきりと断言した。
…あおいちゃんは全てを知っていた。
俺が2代目なことも。
親父が初代怪盗キッドなことも。
それはつまり、親父がパンドラを狙う組織に殺されたってことも知っているし、つまりは俺が組織に狙われていることも知っている。
…だからか。
だからあの時、俺には辛い道になるから選ばなくてもいいと言ったのか。


「…決めたみたいね」


目まぐるしく頭を働かせていると紅子が口の端を持ち上げ聞いてきた。


「やっぱりオメーは協力者Aだな」
「お断りと言ったはずよ。今回はこれの対価よ」


そう言ってレッドチェリーの缶詰を手に取った紅子。


「全部持ってけよ」
「これだけで結構よ」


そう言って去って行った紅子。
…元々バラバラだったやるべきことが、1つになった分、動きやすさも格段に違う。
ここからが本当の勝負だ。
気をさらに引き締めてかかる必要がある。
気になるビッグジュエルは片っ端から調べていかなければならない。
そう思っていた数日後の次郎吉じーさんからのお誘いに乗った日の夕方、あおいちゃんから電話が着た。


「か、快斗くん、ちょっと直接話したいことあるんだけど、いつ暇?」
「今から行くよ」
「えっ!?今!?」
「え?だめ?」
「あ、いや、今、から来てくれるなら、話早くて助かるけど…」
「んじゃあ、これから行くから待ってて。マンションでい?」
「う、うん、気をつけてね」


あおいちゃんは別れてから俺を家に入れなくなった。
例外として「キッドの話をする時」は家に入れる。
つまり今回の呼びだしはそういうことだ。


「っし!行くか!」


いつもよりも気合いを入れて、あおいちゃんちに向かった。

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bkm

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